第37話 意地悪な質問

 一般の部では大技を一発当てれば勝てる様なレベルである為大技の撃ち合いのような試合展開が偶にあるのだが、宮廷魔術師ともなると大技の術式を展開している隙を小技で狙われて終わる為、基本的には小技を撃ち合い、先に当たり崩された方が負けるという様な試合の流れが多い為である。

 

 そしてレヴィアは一般と宮廷魔術師の二部門の試合を観て彼女なりに何かを感じ取っているのが、彼女の表情をみて窺えることができる。


 それが正しい事であろうが間違った事であろうが自分の目で見て肌で感じて得た感情は、きっと彼女にとってはプラスに働くであろう。


 最初から答えを教える事は簡単なのだが、それよりも俺は『何故、どうして』と立ち止まり考える事こそ成長につながると思っている。


 と言っても凡人の俺が天才様相手に何を言っているのかと言われれば何も言い返せないのが悲しい所だ。


 そして試合は順調に進んで行き、ダグラスの順番となった。


 彼はその二つ名である【絶色】に相応しい戦いぶりで同じ宮廷魔術師である相手を圧倒し、終始一方的な試合運びで勝利をもぎ取っていく。


 それを見てくやしさよりも『俺はあいつと試合時間ギリギリまで接戦したんだぞ』と誇らしさが勝ってしまうのは、あの頃の俺で勝てなかったのならば仕方ないと言える位には努力も体調も事前準備もそれら試合に挑むには完璧なコンディションだったからこそであろう。


「………良くお師匠様はあのような化け物相手に試合をリードしながら戦い、勝利寸前まで行きましたね。映像を観るのと実際に見るのとではここまで違うとは思いませんでした」

「まぁ、彼も高等部を卒業して数年経っているんだからそれだけ成長しているっていう事でもあるのだろう」

「………そうですね」


 そしてレヴィアはダグラスの戦いを生で観戦して肌で感じた彼の強さに驚いている様であったのだが、彼も成長しているのだと伝えると、納得いってない表情をしていた。


「話は変わるが、レヴィアはあのダグラスと戦うとすればどのように戦う?」


 そんなレヴィアへ、ダグラスとどう戦うか聞いてみるのだが、我ながら実に意地悪な質問であると思う。


 恐らくレヴィアはダグラスを相手にした時の立ち回りすら思いつく事は出来ないであろう。


「…………………………分かりません。どんなにシミュレーションしても先ほどダグラスと対戦した宮廷魔術師の様に、下手すれば彼よりも更にあっけなく負けてしまう事しか想像できません」

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