第23話 王女様はお友達ですわ
翌日
「せっかく出来たお友達ですから、早速王宮に遊びに行きましょう。」
「是非来てくれって言ってたもんね。」
そうして二人は王宮へと遊びに出かけた。
アリエンナとギャモーを誘って一緒に行こうとしたが、既にどこかへ出掛けてしまったようだった。
「残念だけど今日は諦めて、私達だけで行こう。」
「そうですわね。」
二人を乗せた馬車は王宮の正門へと辿り着く。
「たのもー! ですわ。」
セリアが門番へ向けて挨拶をする。
フェルミト王国では王宮を尋ねる際の礼儀として、必ずこう言わなければならないのだ。
「ベリオーテ公爵夫人と聖女キャロル様ですね。どうぞお通り下さい。王女殿下がお待ちです。」
門番はセリア達をすんなりと通してくれた。
二人は会話しながら、案内に従って王宮の中を進んでいく。
「門番さんは、何で私達の名前が分かったの?」
キャロルは不思議そうにセリアに尋ねる。
「先触れを出しておきました。」
「そういう事か。」
「貴族王族同士だと必要なプロセスですので。」
「ほんとそういう所はしっかりしてるよ。」
「これでも一応貴族ですわ。」
「普通の貴族は平民と友達になってくれないけどね。」
「私は楽しければ何でも良いのです。」
「その言い方は誤解を招くからやめた方が良いよ?」
「そうでしょうか?」
「それだと悪い事もしちゃいそうに聞こえるもん。」
「悪い事も致しますよ。幼い頃より結構な悪戯をして生きてまいりましたので……。」
「こちらにて王女殿下がお待ちで御座います。」
どうやら目的の場所に辿り着いたようだ。
案内人がノックをし、二人を部屋へと通す。
「失礼致します。」
「失礼しまーす。」
「良く来てくれましたね。こうして来てくれるのを楽しみにしていました。」
そう言って王女が二人を歓迎してくれる。
「昨日は楽しかったね。」
「私も……。今回のパーティでは新しいお友達がたくさん出来て嬉しかったですわ。私はお友達が少ないので……」
王女とキャロルは不思議そうな顔でセリアを見つめる。
「どうかしまして?」
「セリアはてっきり友達がたくさん居るのかと思ってたからさ。」
「私もそう思っていました。」
王女もその発言に追従する。
「私はブッ飛び公爵令嬢と噂され、貴族の方には敬遠されていましたので……お友達になって下さる方は居ませんでしたの。」
「平民の友達作れば良いじゃん。」
「それもなかなか難しいのですわ。どうしても公爵家の肩書があると、皆様気を遣ってしまうようでして。」
「あー……。」
「ですから、私の肩書を気にしない方や平民でも何かしらの肩書がある方でないと、対等なお友達とはいかないのですわ。」
「私もアリエンナも何気に聖女だもんね。」
キャロルは納得したようだ。
「その点は同意します。私も、今まで友達だった方には随分遠慮されるようになりまして……」
「王女様ともなれば貴族より上の王族だもんね。」
「今まで子爵令嬢だった方が急に王女になったんですもの。きっと皆様距離感をはかりかねているのですわ。」
「あれ? だとしたらギャモーは?」
「ギャモー様は例外的に肩書を気にされない方だったのでしょうね。」
「なるほど。言われてみればそういうタイプかも。」
「あの……出来ればルディアと呼んでもらえれば……。」
「よろしいんですの?」
「友達ですから。」
「ではルディア様とお呼び致しますわ。」
「ルディアは友達だもんね!」
「こら。いくらなんでも呼び捨てはいけません。」
「良いの良いの。公の場でなければ、それで構わないわ。言葉遣いだってそのままで良いわよ。」
突然砕けた言葉に変わる王女。
「貴族王族だって人間だもの。セリア様ももっと砕けても良いんですよ?」
「そうですか? とは言いましても……私普段からこのような感じですので。」
「セリアはいつもそんな感じだよね。」
「まぁ、無理してないならそれで大丈夫です。」
三人は和気あいあいと談笑し、話題が次々と移り変わる。
「ルディアは普段何してるの?」
「そうね。基本的には政務と魔法の鍛錬でしょうか。」
「特級魔法が使えるのに、まだ練習するんだ……。」
「ただ単に魔法が好きなのよ。元々は魔法士になりたかったので。」
「魔法士かぁ。私って魔法がそんなに得意じゃないからなぁ。」
キャロルは三級魔法、つまりは中級者程度の魔法士であった。
「もし良かったら教えましょうか?」
「良いの?」
「それなら、キャロルは合成魔法を教えて差し上げたらどうかしら? 勿論私もサポート致しますわ。」
「合成魔法? 聞いた事ないわね。」
ルディアは耳慣れない言葉に目を輝かせる。
「なんかね。違う属性を合成して撃つと、威力が強くなって魔力消費が少なくなるんだよ。」
「もっと詳しく知りたいわ!」
前のめりになりキャロルへと迫る王女。
「は、はい。魔法が好きって言ってたけど、本当に好きなんだね。」
ルディアのあまりの迫力に、キャロルは苦笑いする。
「す、すみませんつい。」
「ルディア様にとっての魔法とは、私にとっての悪戯のようなものなんですのね。」
セリアは一人で勝手に納得していた。
「流石に悪戯と魔法を比較しちゃダメじゃない?」
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