散歩の七百二十三話 花見祭りの前日準備

 花見祭りの前日、準備があるので僕たちは朝の訓練の後で花見祭り会場に向かいました。

 スーや随行員だけでなく、帝国事務官のマグカフさんもついてくることに。


「既に急ぎでやる事は済ませていますので。それに、私も辺境伯領に来た際に花見祭りを見学したことがありまして」


 このクマさん、かなり優秀みたいです。

 あの朝の短時間で仕事を済ませてくるとは。

 しかも、見た目に違わず超強いらしいので、自衛もバッチリだという。

 辺境伯家で保護されている子どもたちも一緒に行くので、二台の馬車に分乗します。


「おっ、きたきた」

「何か大きい人がいますね」


 花見祭りの会場に着くとディアナさんとサマンサさんの幼馴染コンビが作業を進めていて、他の面々やマヤさんにセラさんも小屋の中で一緒に作業をしているそうです。

 ということで、実行委員長を呼んでマグカフさんを紹介しました。


「おお、前に花見祭りで会ったな。確か、酔っぱらったナンパ野郎を引きずっていたな。そうかそうか、あんたがスーの担当になったか」

「その節は、色々とご迷惑をおかけしました。今日は、皆さんの仕事風景を見学させて頂ければと」

「おう、全然構わねーぞ。ちびっ子も懐いているし、ある意味護衛だな」


 何と、実行委員長とマグカフさんが顔見知りだったとは。

 確かにこの巨体で引きずられたら、ナンパ野郎は逃げ出せないだろうな。

 ということで、さっそく準備を始めます。


「スー、看板が足りないんだわ。急いで文字を書いてくれないか?」

「分かりましたわ。直ぐにやりますね」


 スーは喜々として作業にとりかかっているけど、王女様扱いされないのが良いみたいです。

 スーのことを知っている人は、王女様を顎で使う商店店主の構図にかなりビックリする光景だと思うけどね。

 そして、ホルンはというと遂に完成したまんまる焼きを焼く鉄板を使っての試作に入りました。


「私も手伝いますわ」

「えーっとね、こんな感じでやるの」


 ホルンも、弟子入りしたジョディーさんにまんまる焼きの焼き方を教えていました。

 屋敷に保護された子どもの中でも、年長者はまんまる焼きを手伝うそうです。

 後はスライム焼きもするんだけど、こちらはシロ、マヤさん、セラさんが手伝ってくれます。

 フランとヴィヴィ、ノア君は声かけ要員なので、他の子どもと一緒に法被のサイズ合わせを行っています。


 ジュージュー。


「シュン、今日は手伝いがいっぱいいるから、たくさん作ってくれよ。朝飯食っていない馬鹿もいるもんでな」


 僕はというと、いつも通りというかみんなのご飯を作っています。

 焼きそばの良い匂いがするので、既に作業員の目が僕のところに向いています。

 うん、よそ見をして怪我をしないようにして下さいね。

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