散歩の七百二十二話 帝国からの事務官が到着

 数日後、帝国から僕たちと調整を行う事務官がやってきました。

 子どもたちとともに応接室で待っていると、スーツをビシッと着こなしたこげ茶色の毛並みの大きいクマ獣人の男性が部屋に入ってきた。


「皆さま初めまして。帝国事務官のマグカフと申します。どうぞ、宜しくお願いします」

「「「おおー!」」」


 大柄な体に似合わず丁寧な所作なので、シロたちは思わず感嘆の声をあげていました。

 良い人っぽそうだし、アオも全然問題ないってふるふると震えています。


「王国王女のスーザンと申します。マグカフ様、どうぞ宜しくお願いしますわ」

「これはご丁寧に、ありがとうございます」


 スーとマグカフさんが握手をしているけど、まるで大人と子どもが対峙しているみたいです。

 僕たちも順に挨拶しながら握手していき、座って話を聞くことになりました。


「我が国の恥を晒す形で申し訳ないのですが、勢力としては一部ですが開戦派という存在がおります。事あるごとに領地拡大などを唱えて過激なことを言っており、皇帝陛下も対応に苦慮しております」

「私も噂を聞いておりますわ。その、裏で操っているような存在はいないのでしょうか」

「あくまでも噂レベルですが、かの闇組織レッドスコーピオンが、我が国を混乱させるために動いているのではとささやかれております」


 また出ました、レッドスコーピオンの名前が。

 人神教が勢力拡大するための武装組織だけど、本当に厄介な存在です。

 帝国は獣人が多いから、奴らにとって目障りな地域なんだろうなあ。


「帝国についてからは、軍が護衛につきますのでご安心を」

「色々とご配慮頂き、ありがとうございます」


 精鋭部隊らしいけど、その中に怪しいものが混じっている可能性もある。

 十分に気をつけないと。

 すると、別の話に移った。


「皇帝陛下から二点お願いがございます。一つは武闘大会チャンピオンのアオ殿と手合わせをすること、もう一つがシュン殿の手料理を食べたいとのことです」

「あの、アオの件は何となく予想ついていたのですけど、何故私の料理を希望されるのでしょうか?」

「王国でも有数の料理人だと伺っております。なんでも、新作カレーをご所望しているとか」


 まさかのリクエスト付きですか!

 それに、僕は冒険者であって料理人じゃないですよ!

 新作料理が食べられるかもというシロたちのキラキラとした視線を浴びながら、僕は思わずガクリとしちゃいました。

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