散歩の七百十九話 獣人を強者がロックオン
ということで、訓練場に新人冒険者が集まったのですが、あの獣人は未だに壁に寄りかかって寝ています。
これから荷物講習を始めるので、そろそろ起きてもらいましょう。
アオがすすすと、音もなく獣人の背後に近づきました。
シュッ、ちく。
「いてー! 何だ何だ?」
アオが風魔法の針を作って、爆睡している獣人のお尻にチクリと刺しました。
獣人が文字通り飛び起きて騒いでいる間に、アオは一気に離脱して僕たちのところに戻ってきました。
一斉に新人冒険者の視線がお尻を押さえながら騒いでいる獣人に向けられたけど、当の獣人は自分の座っていたところをキョロキョロと見渡していました。
うん、これで大丈夫だろう。
さっさと荷物講習を始めちゃおう。
「では、荷物講習を始めます。終わり次第、実技講習を行います。実技は初心者向けに武器選びから行いますので、今手元に武器がない人も安心して下さい」
「おい、今何かいたぞ!」
「それでは、冒険時にどんな荷物が必要なのかを前に並べたので、遠慮せずに見に来て下さい」
「おい!」
うるさく騒いでいるのがいるけど、講習を進めるのが優先なので無視して進めます。
新人冒険者も、騒いでいるのを無視して前に来て僕たちの話を聞いていました。
シロたちも説明に加わりながら、手短に話を進めます。
それでも、新人冒険者は真面目に聞いてくれています。
恐らく、あの獣人みたいになりたくないと思っているのでしょうね。
こうして、十分間の荷物講習は終わり、いよいよ実技に入ります。
「それでは、これから実技に移ります。武器を使う人、魔法をメインに使う人なんでも大丈夫です。治癒師でも構いません。初めて武器を触る人は、武器を広げているところに行って下さい」
僕たち全員動き始めて、準備を進めます。
ジョディーさんとノア君は、フランたちと一緒に武器選びのお手伝いですね。
すると、待ちくたびれたといった感じで、あの獣人が動き始めた。
「あーあ、ようやくかよ。へへ、体がなまっちまったぜ」
肩をぐるぐると動かしながら、ニヤニヤとした視線を僕たちに向けながら立ち上がった。
しかし、残念ながら獣人の相手は僕たちではない。
既に、強者がロックオンしているのだよ。
ガシッ。
「ははは、活きが良さそうだな。じゃあ、あっちで私たちとアップでもしようじゃないか」
「えっ、ちょっと、あー!」
獣人は、ラストさんに肩を掴まれながらズルズルと訓練場の端に引っ張られていった。
獣人が逃げようとジタバタともがくが、どうやってもラストさんの筋力にかなうはずがない。
しかも、随行員だけでなくアヤとアイまでもが獣人を引っ張るラストさんの後をついて行った。
うん、アヤとアイもスーにある意味喧嘩を売っていた獣人に怒り心頭なんだ。
あの獣人、生きて訓練場から生還できるかな……
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