散歩の六百十四話 来客第一号
昼食後ももう少し薬草採取や害獣駆除を続け、僕たちは再び馬車に乗って冒険者ギルドに戻りました。
うん、かなりの換金額になったみたいだ。
馬が倒したオオカミの買取金額が良かったので、後で美味しい飼い葉やにんじんをあげよう。
そして、ちょっと気になったことがあるのでジジたちに質問します。
「そういえば、今夜の宿は決まったのか?」
「いや、まだだ。王都に来たばっかりってのもあるがな」
ふむふむ、なるほど。
何となく予想はついていたけど、まだ宿は取っていないんだ。
僕がスーに視線を向けると、スーもニコリと頷きました。
僕の考えている事が、スーにも分かったみたいです。
「アヤ、部屋は空いておりますよね?」
「本日宿泊される方はおりませんので、三名分の客室がご使用頂けます」
「それでは、本日は皆さま私の屋敷に泊まって下さい。お世話になったお礼として、精一杯おもてなしいたします」
「「「はっ?」」」
思いがけない提案に、三人は固まってしまった。
貴族の屋敷に泊まるとは思ってもなかったみたいだ。
とはいえ、シロたちも大歓迎で既に三人の手を引っ張って馬車の方に向かっていった。
ここは、ちょっと強引に連れていった方が良いかもね。
こうして、僕たちを乗せた馬車は屋敷へと向かって行きました。
「「「はあ……」」」
屋敷に着くと、馬車から降りた三人は庭や屋敷の大きさに度肝を抜かれていた。
余計な調度品は置いていないので、庭の緑がとても綺麗です。
僕はというと、庭にとても豪華な馬車が停まっているのが気になりました。
えーっ、コレってもしかして……
ガチャ、ぽすっ。
「おねーちゃん、おかえりー!」
「わあ、ジェフちゃんどうしたの?」
「おばあさまと一緒に遊びに来た!」
やっぱりというか、ジェフちゃんが屋敷に遊びに来ていた。
どこかのタイミングで遊びにくると思ったけど、まさかもう来ているとは。
そして、ジェフちゃんのおばあさまってことは、この人が来ていることに。
「おや、スーよ帰りが早かったのう」
「お、お義母様!」
応接室から姿を現したのは、やっぱり王妃様でした。
ニヤリとしていたのを見ると、王妃様はいきなり来てスーを驚かそうとしていたのでしょう。
僕たちはともかくとして、何が何だか分からない三人を連れて応接室に向かいました。
先に、王妃様のことを紹介しないと。
「えっと、こちらの方はスーの義母のビクトリア王妃殿下です。そして、スーの兄である王太子様の息子のジェフ王子殿下です」
「うむ、よしなに頼む」
「ジェフだよ!」
「「「えーっと……」」」
いきなり目の前にこの国の滅茶苦茶偉い人が現れて、三人は完全にフリーズしています。
僕だって、初めて王妃様と会った時は同じく固まったもんなあ。
今のうちに、三人のことを紹介しちゃおう。
「王妃様、犬獣人の男性がジジで、虎獣人男性がゴル、そして、犬獣人の女性がルンです。南の辺境伯領で僕たちと一緒に活動していた、八人の冒険者のうちの三人になります。バクアク伯爵家の二人の件も知っていて、随分とスーのことを気にかけていました」
「おお、あの馬鹿どもからスーを守ってくれた八人の内の三人なのか。妾からも礼を言う」
「「「きょきょ、恐縮です!」」」
僕が素直に説明したら、王妃様も三人に興味を持ったみたいです。
当の三人は、かなり恐縮して縮こまっているけど。
更に、ジェフちゃんの元気な声が響きました。
「ねーねー、スーおねえちゃんとどんな冒険者したの?」
「色々とやったわ。それこそ、荷物運びからゴブリン討伐まで何でもね」
「おおー! もっと話して!」
小さなジェフちゃんにはすぐ慣れたので、ルンを中心に話が盛り上がりました。
更にシロとアオが実演をしていて、フランたちも興味深そうに聞いていました。
こうして、王妃様とジェフちゃんが帰る時間まで、ワイワイと盛り上がりながらお喋りが続きました。
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