散歩の五百二十話 ドラゴンを治療します

 回復魔法が使えるのは、僕、スー、アオ、ホルン、ヴィヴィなので、四人と一匹で大きなドラゴンに近づきます。


「スー、ドラゴンって王国に存在するんだね」

「ええ、守護の山と言われる大きな山脈に住んでいるそうです」


 ドラゴン自体は実在していて、滅多に人前には姿を現さないそうだ。

 因みに、その山脈は別荘から見えるそうなので、別荘に帰ったら見てみよう。

 でも、まずは目の前で大怪我を負っているドラゴンの治療を行なわないと。


「じゃあ、治療をするよ」

「「はーい」」


 フランとアオを抱いたヴィヴィも元気よく声を上げたので、みんなで一斉に治療を開始します。


 シュイン、シュイン、シュイン、シュイン。


 全力での治療を行なうので、ドラゴンの周囲に複数の魔法陣が展開し周囲を明るく照らします。


「じゃあ、始めようか」

「はい、私もいつでも大丈夫です」

「「大丈夫!」」


 全員準備完了なので、一気に回復魔法を展開します。


 ぴかー。


 回復系だったり聖魔法系だったり回復魔法も別れているので、青色や黄色の光が辺りを照らしています。

 僕がドラゴンの治療を行なっていると、どうも切り傷だけでなく毒も使われている感触があった。

 それでも、全員の力を合わせていくと、何とかドラゴンの怪我を回復させる事が出来た。


「おお、羽も綺麗に戻っているよ!」

「凄い! カッコいい!」


 ドラゴンが負っていた怪我は何とか回復し、ボロボロだった羽も綺麗に治せた。

 シロもそうだけど、ドラゴニュートのフランはドラゴンが本来の姿を取り戻して大興奮しています。

 かくいう僕も、全快したドラゴンの姿に圧倒されていた。

 と、ここで不思議な渋い男性の声が響いてきた。


「人の子よ、怪我を治療して貰い感謝する」

「えっ、この声はまさか目の前のドラゴンが出しているのか?」

「そうだ、我が直接お主らに語りかけているのだ」


 一種のテレパシーみたいな話し方なのか、とても不思議な感覚だった。

 この場にいる全員に、ドラゴンのテレパシーみたいな声が届いている様で、アヤとアイだけでなく馬も驚愕の表情をしていた。


「我らの里が、謎の人物の襲撃を受けた。恐らく、我らドラゴンを素材に使った何かをしようとしたのだろう」

「確かに、ドラゴンのうろこなどを加工すれば強力な武器を作れるかもしれませんね」

「うむ、その通りだ。我らは、団結して襲撃者を撃退した。死体には、サソリの刺青があったぞ」

「「レッドスコーピオン!」」


 目の前のドラゴンが話した内容に、僕とスーは同時に叫んでしまった。

 忌々しき闇組織レッドスコーピオン、まさかこの名前をこの場で聞くとは思わなかった。

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