散歩の五百十六話 温泉街の冒険者ギルド

 依頼掲示板を眺めていた僕達の所に、アヤが戻ってきました。

 上手くギルドマスターとの面会ができるのかな?


「皆様、ギルドマスターがお会いになりたいと申しております」

「アヤ、ありがとう。その、いきなり面会を申し込んで問題なかった?」

「その、私達が来たと知って副ギルドマスターが物凄く慌てておりまして……」


 アヤは申し訳なさそうにしているけど、これはいきなり冒険者ギルドに来た僕達の責任です。

 スーもあちゃーって表情をしているので、ここはギルドマスターにあったら素直に謝っておこう。

 という事で、みんなでギルドマスターの執務室に向かいます。


「あああああ、あのあのあの。すすすす、スーザン殿下、おおお迎えできずに、もも申し訳ありません」

「あなた、何をしているの。副ギルドマスターなのだから、びしっとしなさい! でっかい図体で何縮こまっているのよ!」

「「「「……」」」」


 執務室に入ると、とても大柄で筋肉質のスキンヘッドの男性がぺこぺこと僕達に頭を下げていて、その横でとても小柄な赤髪ロングヘアーの女性がぺこぺこしている男性をどついていた。

 この感じだと女性の方がギルドマスターで間違いないだろうが、突然目の前で繰り広げられている光景にシロ達も僕もスーも唖然としちゃいました。

 とりあえず、座って話を聞く事に。


「改めて、スーザンと申します。この度は突然お邪魔し、申し訳ございません」

「スーザン殿下が悪いんじゃないのよ。そもそも直轄領なのだから、王家が冒険者ギルドに来るのは想定出来る事だわ」


 まさに肝っ玉かあさんを体現した様なギルドマスターは、スーにざっくばらんと話していた。

 どっしりとして、豪快な人だ。

 早速本題に入ります。

 ある程度、僕が話すことにします。


「ギルドマスター、もし知っていたら教えて頂きたいのですが、温泉街近くの森から多数の動物や魔物の気配を察知しました。しかし、討伐系の依頼がありません。何か理由をご存じですか?」

「おや、もうその事に気が付いたかい。流石は凄腕の冒険者グループだ。理由は簡単だよ、わざと冒険者に手出しさせない様にしているんだ」


 うん?

 どういうことだ。

 動物や魔物が多いのに、わざと討伐系の依頼を出していないって事なのか。


「正確には調査中だ。どうも森の奥に何かがいて、動物の生息域が変わったみたいだ。動物や魔物も怯えているみたいで、下手に手を出さない様にしているんだよ」


 ギルドマスターは腕を組みながら話をしていたけど、結構深刻な問題だ。

 動物や魔物が怯えている状態では、下手に手を出さない方が良さそうだ。


「実はな、この事が発覚したのは昨日なんだよ。だから、ギルドとしても対応をどうしようかと悩んでいるんだよ」

「そういう事ですか。あっ、さっき代官邸に行った時にこの事をどうするか話しちゃいました。森に調査を出すと言っていました」

「おっと、そういう事か。こればっかりはしょうがないな。あんた、ひとっ走り行ってきな」

「へい!」


 うん、副ギルドマスターを顎で使うギルドマスターですか。

 頭も切れそうだし、凄い人っぽいな。

 そんな時、シロが元気よく手を上げた。


「シュンお兄ちゃん、明日みんなで森を調べよう! シロとアオなら、動物や魔物とお喋りできるよ!」

「フランもお話できるよ!」

「ホルンも」

「パパ、ヴィヴィもだよ!」


 そして、シロに続いてアオやフラン達も手を上げていた。

 僕はスーの方を見たけど、仕方ないねって表情をしていた。


「じゃあ、明日はみんなで森に行こうか。でも、絶対に無理はしちゃ駄目だよ」

「「「「はーい」」」」


 こうして、明日の予定が決まりました。

 とはいえ、温泉街に来て冒険をするとは思わなかったぞ。


「ははは、やる気満々だな。じゃあ、あたしからの指名依頼という事にしよう。頑張ってくれよ」

「「「「はい!」」」」


 やる気満々のシロ達とアオを見て、ギルドマスターも笑っていました。

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