散歩の二十四話 新しい仲間
「シュン、シロ。講習まで少し時間があるから、ちょっと付き合ってくれるかな?」
「はい、大丈夫です」
「大丈夫だよ!」
「俺達もついていくぞ」
「そうだ、余りにも可哀想だ」
宿のメンバーも一緒に話を聞くことになって、個室に移動。
皆が座った所で、ギルドマスターが話を始めた。
「この娘はスーと言ってな、とある男爵家の血を継いでいる」
「皆はじめまして、スーと申します。十二歳になります」
「シュンです」
「シロだよ。この子はアオって言うんだ」
お互いに自己紹介をするが、確か男爵は貴族の中では一番爵位が低いはず。
あの剣士は伯爵家の三男っていっていたから、スーさんの事を召使いの様にしていたんだ。
「ちょっとこの子は訳ありでね、あの馬鹿二人から引き離したいと思っていたんだ。そうしたら、あちらから問題を起こしてきたんだよ」
「誰から見ても、あの二人はやばいですから」
スーさんが訳ありとかそれ以前に、あの二人は人間として出来ていない。
余程甘やかされて育ってきたんだろう。
と、ここで魔法使いの帽子を深くかぶっていたスーさんの顔が見えたのだが、顔にアザがあるぞ。
ぐー。
しかもスーさんのお腹から音がしてきた。
もしかして、何も食べていない?
「ギルドマスター、スーさんの治療をしていいですか?」
「そうだな。女性は顔が命だ。綺麗にしてやってくれ」
「あと、こちらも食べて下さい。お腹が減っているでしょう」
「……有難うございます」
僕よりも先に、スーさんの顔のあざをアオが治し始めた。
アオは念入りにスーさんを治療するので、身体中にアザがあるのかもしれない。
その間、スーさんは涙をポロポロと流しながら差し出したパンとジュースを飲んでいた。
「こちらで分かっているのは、あの二人がスーに対して暴行をした事と所持金を奪った事。更には宿では部屋に入れずに廊下で寝させた事だ」
「酷いな、そんな馬鹿な事があったのかよ」
「それでは、体の疲れも取れなくてフラフラになるのも当然だ」
ギルドマスターの話に、宿のメンバーも憤慨している。
とてもじゃないけど、常軌を逸するぞ。
「私は、とある方の指示により南の辺境伯領にやってきました。そして、引き渡されたのがあの二方でした。私には逃げるという選択肢がありませんでした」
治療を受けて食事をとって少し落ち着いたのか、スーさんの表情はだいぶ良くなってきた。
自分の身内を簡単に話してくれたけど、上からの命令じゃ逃げられないな。
「暫くはシュンが預かってくれ。というのも、奴らは宿の従業員を乱暴にした疑惑があるので、兵に引き渡す必要があるのだ。貴族の特権で金で解決になるだろうがな」
「分かりました。僕もあの二人には思う所があるので、スーさんを仲間に入れます」
「申し訳ありません、宜しくお願いします。あと、私の事はスーと呼んで下さい。貴族とか関係なく、仲間としてみて貰いたいので」
「分かった。宜しくね、スー」
「スーお姉ちゃん、宜しくね!」
勿論断るつもりもないので、スーを仲間に加える。
シロとアオは新しい仲間が増えてとても喜んでいる。
スーは、宿のメンバーとも話をしている。
「しかし、乱暴までしていたとは。僕は、お酒を飲んで暴れてたのかと思いました」
「残念ながら、泥酔に加えて器物損壊もあるんだよ。だから、スーから金を巻き上げたのだろうな。既に店に金が渡されているので、回収するのは難しいかもしれない」
僕の想像以上に、奴らは大馬鹿だった。
ギルドマスターも、呆れながら話をしていた。
まだ、この街に来て数日だというのに、そんな大罪を犯したなんて。
あの二人は、暫くの間は鉄格子の中で過ごして欲しいぞ。
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