千百十二話 僕とリズの演舞と剣術大会の結果

「試合終了、決勝進出はルーシーです!」

「終始安定した戦いでした。まさに、完勝です」


 そして無事に準決勝第一試合が終わり、今までの二試合が何だったのだろうというくらいルーシーお姉様の完勝だった。

 技術力もさることながら、身体能力強化魔法もそこまで全力にしていなかった。

 かなり余裕を持った勝利と言えよう。

 そして、準決勝二試合目は四年生の剣技特待生が盤石の勝利だった。

 これにより、三十分後の決勝戦はルーシーお姉様と四年生剣技特待生の実力者同士の対決となった。


「それでは、これからお兄ちゃんとリズの演舞を始めるからちょっと待っていてね」


 ここで、リズがマイク型魔導具をエレノアにスイッチした。

 サンディも一緒に実況席にいるみたいだけど、エレノアが張り切って準備をしていた。

 そんな中、僕はリズにあることを注意した。


「リズ、スカートのままで演舞をやるつもりか?」

「大丈夫だよ、スパッツ履いているもん!」


 リズがチラリとスパッツを見せてきたけど、人がいる前ではやめなさいね。

 僕は、アイテムボックスから木剣を取り出しながらリズに注意していた。


「それでは、アレクお兄ちゃんとリズちゃんの演舞を始めます。訓練場を破壊するという理由で剣術大会に参加できなかった、お二人の実力を見て下さい」


 エレノアが僕たちの説明をするけど、そろそろちゃん付けで呼ぶのは止めたほうが良い気がします。

 実際に、拍手に混じってクスクスとしている声も聞こえてきました。

 僕は、ちょっとため息をつきながらリズとともに訓練場に向かいました。

 すると、何故かここにいないはずの人から僕たちへ声がかかりました。


「「「アレクおにーちゃーん! リズおねーちゃん!」」」


 そうです、王城で勉強しているはずのミカエルたちが、来賓席の横にちょこんと座っていました。

 スラちゃんに視線を向けたけど、連れてきていないよとふるふるしながら否定していました。

 もしかしてと思ったら、エリちゃんの側にいるネコちゃんの毛並みがモコモコと動いていました。

 エレノアとサンディのマジカルラットはまだ転移系の空間魔法が使えないので、間違いなくあのネコちゃんと一緒にいるマジカルラットですね。

 なにはともあれ、僕はリズと向かい合わせで木剣を構えました。

 今回は、お互いに剣を向き合うタイプの演舞を行います。

 二人の息が合わないと、思いっきり木剣をぶつけることになります。

 僕はふうっと息を整えて、声を掛けました。


「「お願いします!」」


 ブオン、ブオン。


 二人同時に礼をしていきなり演舞が始まったので、観客の生徒からどよめきが起きていました。

 僕はリズと視線を合わせながら、いつも通りの演舞をやっていきます。

 段々と、生徒も真剣な表情で僕とリズの演舞を見ていました。


 ブオン、ブオン、ブオン。

 ピタッ。


 そして、同時に相手の前で木剣を止めて手を止めました。

 来賓席に向き直ると、リズとともに一礼しました。


 パチパチパチ!


「とても素晴らしい演舞でしたね。いま一度大きな拍手を二人に送って下さい」

「「「アレクおにーちゃーん! リズおねーちゃーん!」」」


 サンディのアナウンスで、再び大きな拍手が訓練場を包み込みました。

 ミカエルたちも、僕たちの演舞を見て大喜びです。

 ふう、何とか上手く出来て良かったなあ。


「二人とも、とても素晴らしい演舞だったわ。百点満点よ」

「おばあちゃん、ありがとう!」


 ティナおばあさまも、もちろん軍務卿とジンさんもニッコリとする出来だったみたいです。

 リズも、ティナおばあさまだけでなく色々な人に褒められて上機嫌でした。


「う、うーん。弟くんとリズちゃんの後の試合だから、ちょっとやり辛いわね」


 ルーシーお姉様は、この盛り上がりの後なのでやり辛いと苦笑していました。

 そして、ルーシーお姉様はあっさりと決勝戦も勝ってしまいました。

 やり難いといいつつ、最初から全力で戦ってあっさりでした。

 ルーシーお姉様が優勝したので、ミカエルたちもだけどずっと応援していたエリちゃんが特にニコニコとしていました。

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