二百九十五話 聖女様救出作戦その一

「行けー、ブッチー!」

「分かっていたが、とてもポニーとは思えない速さだな」

「ですよね……」


 普通のポニーもそこそこ足が速いとはいえ、身体強化したポニさん達は馬にも負けず劣らずのスピードで街道を駆け抜けている。

 ジンさんも思わず呆れるスピードだけど、遅いよりは全然問題ない。

 寧ろ聖騎士が着ている鎧の重量があるのだろうか、聖騎士を乗せている馬達が僕達から段々と離れていっている。

 これは初手は、僕達だけで聖女様を助ける対応になる可能性が高いぞ。

 たまに道行く人が、爆走するポニーを見てびっくりしている。


「あ、見えてきた!」


 走り出してから五分程で、沢山の魔物が馬車を襲っている現場にたどり着いた。

 馬車の周りを、沢山のゴブリンが取り囲んでいる。


「くそ、このままでは全滅だ」

「あ、何かが突っ込んできます!」

「このタイミングで新手か!」

「いえ、ポニーに乗った女の子です!」

「はっ?」


 あ、馬車を守っている騎士が僕達が現れた事によって更に混乱させてしまった様だ。

 こればかりは仕方ないけど、とにかく目の前のゴブリンを倒さないと。


「ブッチー、突っ込むよ!」

「ヒヒーン!」


 ドカドカドカ!


「「「ギギャ!」」」


 早速ブッチーが魔法障壁を展開してゴブリンの群れに突っ込んでいく。

 更にサンディの乗ったマロンとアイビー様の乗ったカゲも、同様にしてブッチーの後に続いていった。


「こりゃすげーな。ゴブリンがポニーにはねられて、次々と宙を舞っているぞ」

「分かっていましたけど、とんでもない威力ですね」


 あっという間にゴブリンを殲滅していくブッチー達を、呆れた表情でジンさんとルーカスお兄様が見ていた。

 うん、僕も全く同じ気分です。

 馬車の周りを守っていた騎士もびっくりしていたけど、それ以上にゴブリン達が突然の事で足が止まっている。

 これは陣形を立て直す絶好のチャンスだぞ。


「加勢する!」

「え、あ、協力感謝します。こちらも立て直すぞ!」


 思わず惚けていた騎士も、ジンさんが声をかけて気を引き締めた。

 僕とプリンとルーカスお兄様は、馬上から魔法を放ってゴブリンを倒していきます。

 ジンさんも、馬上から器用に斬撃を繰り出しています。


「とりゃー!」


 そして、リズとスラちゃんはというと、いつの間にかブッチーから降りていて愛刀を手にゴブリンを切り捨てています。

 ブッチーはというと、誰も跨っていないのにサンディとアイビー様と共に普通にゴブリンの群れに突っ込んでいっています。

 

「ふう、何とか片付けましたね」


 僕達が馬車に駆けつけてから五分後、聖騎士も合流して一気にゴブリンを全滅させる事ができた。

 今はスラちゃんとプリンがゴブリンを消化しつつ、僕とリズで馬車の護衛にあたっていた騎士の治療をしています。

 いくら弱いゴブリンとはいえ、七人の騎士に対して五十匹以上いたので騎士もかなりの怪我を負っていた。


「くそ、あの逃げた騎士が変な魔導具を使いやがったんだ」

「ゴブリンが大量に現れたのは、正にその瞬間だったよ」


 やはり教会の前に現れた怪しい騎士が、このゴブリン騒ぎの犯人だったのか。

 しかし、残った騎士達は全く問題はない。

 じゃあ、僕の探索に反応した悪意のある人はどこにいるんだ?


「きゃー!」


 と、その時だった。

 馬車の中から、若い女性の悲鳴が聞こえてきたのだ。

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