二百九十四話 緊急事態発生
国境の街に聖女様が到着するまで、あと三十分に迫った。
歓迎式典に先立ち聖女様を出迎える為の準備を、教会の前で進めています。
僕達も教会の前にスタンバイしていて、人が集まっているのに気がついたのかポニさん達もこちらにやってきていた。
準備をしている殆どの人が聖女様に会うのは初めてなので、皆どんな人だろうと話をしていた。
そんな中、ちょっと焦っている人が一人。
「うーん、定期連絡がこない。何かあったのかな?」
「サイファ枢機卿様、何かあったのですか?」
「いやね、定期連絡の時間を十分過ぎているのに、聖女様に付いている侍従から何も連絡がないのだ」
困り顔のサイファ枢機卿が、理由を話してくれた。
今までキチンと時間を守って定期報告をしていたらしいのだが、今回に限って何も連絡を寄越さないという。
それから五分後。
相変わらず定期報告がない事に、他の人も動き始めている。
「聖騎士は、いつでも動ける様に準備を進めよ」
「「「はっ」」」
ヤークス枢機卿が聖騎士に指示を出していた。
馬も準備し始めていて、何だか物々しい雰囲気になってきたぞ。
勿論僕達も最悪の事態に備えて、装備を整え始めた。
いつでも僕達がポニさん達に乗れる様に、鞍をつけている。
そんな中、事態は急変する事になる。
パカッパカッ。
街の外れから、一頭の馬がこちらに駆けてきている。
鎧を身に纏った人も鞍上にいるぞ。
その人は、教会の前に到着すると馬から降りてこちらに走ってきた。
あれ?
何だかこの鎧を着た人から、何ともいえない変な感じがするな。
リズもサンディもアイビー様も何かに気がついた様で、無言で僕の側にやってきた。
鎧を着た人にヤークス枢機卿が気がついて、こちらにやってきた。
「お主は聖女様に付いていた聖騎士ではないか。何故ここにいる?」
「はっ、この先の峠にて、聖女様を乗せた馬車が多数のゴブリンにより襲撃を受けております」
「なんと、何と言う事か」
ヤークス枢機卿が、カッと目を開いている。
勿論、教会側の人間は全員動揺した表情をしていた。
しかし、王国側の人間は至って冷静だ。
というか、ティナおばあさまとジンさんなんか無言で剣を抜いていた。
「それで、何故あなたの鎧は何も汚れていないのですか?」
「えっ、そ、それは、急いで報告をする為に……」
ティナおばあさまが、殺気を放ちながら剣先を報告した者に向けている。
あの、視線を外してオロオロしていると、直ぐに何かあったとバレますよ。
僕はティナおばあさまとアイコンタクトしてから、その人を鑑定をして直ぐにプリンに指示を出した。
「あなた、懐古派ですね。プリン、ショートスタン!」
「ぎゃあああ!」
「アマリリス、不届き者の拘束をしなさい」
怪しい騎士は、プリンのショートスタンをまともに食らっていた。
すぐさまアイビー様もアマリリスに指示して怪しい騎士をぐるぐる巻きにしているのだが、何故バレたとびっくりした表情をこちらに見せていた。
「この人悪い人だよ! 悪い人の匂いがする」
「何と、聖騎士が何かをしたと言うのですか?」
リズもスラちゃんも拘束された怪しい騎士を指差していたけど、グレアム司祭は未だに聖騎士が何かをした可能性が高い事を信じられないでいた。
その間に、僕は国境の街の先を探索で調べ始めた。
すると、直ぐにとても良くない状況が分かった。
「この先の峠で、複数人が沢山の魔物に襲われている反応があります。気になるのは、魔物以外に悪意のある人の反応も複数あります」
「「「えっ!」」」
教会側は全員が驚きの表情を隠していなかった。
聖女様が襲われている事に加えて、聖女様の近くに悪意のある人がいる事にだ。
すると、早速何人かが動き始めた。
「ブッチー、聖女様を助けにいくぞ!」
「ヒヒーン!」
「あ、リズ、スラちゃん、ブッチー、ちょっと待って!」
真っ先に動いたのが、いつの間にかブッチーに跨っていたリズだった。
あっという間に駆け出していってしまったぞ。
「私も行きます」
「私もですわ!」
サンディとアイビー様も、マロンとカゲに乗ってリズの後を追いかけて行った。
こうなったら、僕も向かわないと。
聖女様を助けるのとリズ達を暴走させない為の両方の意味で。
「ジン、その馬に乗って直ぐに向かいなさい」
「おう!」
「私もいきます」
「聖騎士も直ぐに向かえ。聖女様をお救いするのだ!」
僕はポニさんでルーカスお兄様はユキに乗り、ジンさんはティナおばあさまの指示で怪しい騎士が乗っていた馬に跨ってそれぞれ駆け出した。
聖騎士も僕達の後をついてきている。
とにかく急いで現地に向かわないと!
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