第三百九十四話 幸せ
そして季節は巡ってその年の年末。
人神教国の残党の活動もすっかりなくなり、本当に平和な日々が続いている。
時たま馬鹿な貴族の相手をしているが、そのくらいなら問題はない。
という事で、王城で書類をこなす日々がずっと続いた。
「「「エーちゃん、まだ?」」」
「まだだよ。もう少しじっくり焼いた方が美味しいんだよ」
「「「おー」」」
庭の一角では、エステルがマシュー君達と共に焼き芋を焼いていた。
本当に、食べることに関しては熱の入れようが違うな。
そんなエステルのお腹は、だいぶ大きくなっている。
まあ、やることやっていれば授かるだろうな。
安定期に入ったのだが、食べすぎには気をつけたい。
リンやフローレンスにソフィーとジュリエットも妊娠が発覚したのだが、こちらはまだ安定期に入っていないので屋敷の中で安静にしている。
因みにオリガとマリリさんも妊娠したので、来年はベビーラッシュになりそうだ。
「来年は赤ちゃんが沢山見られるのね」
「ふふふ、本当に楽しみだわ」
「赤ちゃんは、また直ぐにできますわよ」
今日は王妃様達もやってきて、エステルや他の妊娠している妻達の様子を見に来ている。
来年のベビーラッシュに向けて、既に屋敷の一部を改修してベビールームを作った。
沢山赤ちゃんが生まれるので、いっぺんに育てようということだ。
「あちち、うん大丈夫だね」
「「「おいしーい!」」」
どうやら焼き芋が出来上がった様で、エステルとマシュー君達は早速美味しそうに頬張っている。
エステルの側についていた侍従が他の焼き芋をこちらに持ってきてくれた。
焼き芋をもしゃもしゃと食べながら、俺は不思議な感覚に陥っていた。
前世でも付き合う事はなく、異世界にきたら婚約者ができて結婚をして子どもができた。
マシュー君と楽しそうにしているエステルを見ながら、これが幸せなのかなってふと思った。
俺がエステルの事を見ているのに、エステルも気がついた様だ。
「どうしたの、サトー?」
「焼き芋ができたなら、燃えカスを消さないと。そろそろ皆も屋敷の中に入るぞ」
「「「「はーい」」」」
俺は、用意してあったバケツの水を燃えカスにかけて消火した。
エステルはマシュー君達と手を繋ぎながら屋敷の方に向かっていった。
エステル達の後ろ姿を見ながら、これからも頑張らないとと思った。
俺が引き取った子どもは、みんな辛い運命を背負っている。
そんな子ども達にも、今俺が感じている幸せを感じてほしいと思った。
「サトー、置いていくよ」
「「「置いてくよ!」」」
「今行く」
振り返ったエステルを見ながら、俺は屋敷に向かって歩みを進めたのだった。
異世界転生したので、のんびり冒険したい! 藤なごみ @3aa
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