第三百三十七話 途中経過
大会が始まって二時間。
結局一回戦は、特に波乱も無くあっという間に終了した。
「怪しいと思っていた人物も、あっさりと敗戦してしまいましたね」
「まあ、相手が悪かったというか。何かをやろうとして、何も出来ずに負けましたから」
ルキアさんと一回戦の話をするが、怪しいと目星をつけていた人物は当たった相手が悪かったとしか言いようがない。
それに加えて、怪しい人物が想像以上に弱かったのもあった。
ビューティーさんと当たった相手は、試合開始直後にビューティーさんが繰り出したパンチを顔面にモロに受けて吹っ飛んだ。
ビューティーさんは様子見でパンチをしたらしく、相手に当たった事にかなりびっくりしていた。
というか、俺もルキアさんも相手にパンチが当たってあっといった顔になったし。
吹き飛ばされた人物を治療をする前に会場を警備する騎士が身体検査を行ったら、やはり魔獣化の薬を隠し持っていた。
なので、拘束してから治療してそのまま留置所に運ばれていった。
ビューティーさんが対戦した相手の惨状を見て、シルク様の対戦相手はかなり警戒して試合に入った。
のだが、開始の合図と共にシルク様に背後に回りこまれ、手刀を首筋に叩き込まれてあっという間に気絶してしまった。
案の定身体検査をしたら魔獣化の薬を持っていて、またしても拘束されて留置所に運ばれていった。
二人以外の対戦も全部見たけど、正直な所二人の相手にはならないと感じた。
それはルキアさんも同じみたいで、番狂わせがない限り決勝は二人の対戦になりそうだ。
「大した波乱もなさそうじゃのう」
「決勝まではつまらないかも」
俺とルキアさんの横で、ビアンカ殿下とミケがアイスを舐めながら観戦していた。
時間を見計らって、アイス屋を交代で抜けてきている。
他のアイスを売っているメンバーも、交代で見にきていた。
ビューティーさんとシルク様の観戦が目的だったらしいのだが、相手のレベルが低すぎて溜息をついていた。
本来であればオリガとガルフの試合などをトーナメントの間に入れようとしていたのだが、思ったよりも全体のレベルが低かったので決勝戦の前に行う事になった。
トーナメントに参加する人が、オリガ達の試合を見て萎縮しない様にする配慮も含まれている。
ちなみにルキアさんに服従したケルベロスはルキアさんの側にいたけど、次から次に現れる強者にびっくりしていた。
試合の審判もドラコ達の母親がやっていたし、街道の反対側ではスラタロウとバハムートが試合会場に睨みを効かせている。
このまま大人しくしているのが得策だと判断したらしく、ルキアさんの側にいて床に伏せていた。
「ルキアさん、このケルベロスに名前をつけましたか?」
「元々クロって呼ばれていた様なので、そのままにしてあります。本当はビーフと付けたかったのですが」
うん、このケルベロスは毛の色が真っ黒だからクロって名前は問題ない。
何故犬の名前にビーフとつけようとするのか、はっきり言って謎でしかない。
クロも、ルキアさんが付けようとした名前を聞いてびっくりしている。
まあ、ハミングバードにヤキトリと名付ける位だからな。
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