第三百二十八話 事前見学

 ブレットさんの特訓が始まって三日目。

 学園にいた頃の感覚を取り戻したらしく、段々と訓練内容もレベルが上がっていっている。

 格闘術訓練は勿論の事、リーフからも効率の良い身体強化の使い方を学んだりしている。

 更に、制御の腕輪も貸し出している。

 お願いだから、やりすぎない程度にやってください。


 そして、格闘術訓練に積極的に参加しているのがエステル。

 あえて参加している理由は言わない。

 皆も、頑張れとしか言っていない。

 色々と効果がある事を期待しよう。


 今日も最初の一時間を格闘術訓練にあてて、休憩をしていた。

 すると、予想をしていない人達がやってきた。


「おはようございます、サトーさん」

「朝から訓練とは関心だな」

「元気でいいね」


 姿を表したのは、緑龍王妃様と飛龍王妃様に水龍王妃様。

 あれ?

 アポイントってあったっけ?

 娘さんを連れてくるのは、次の休みの時だったはず。


「ちゃんと、今度の休みの時に娘を連れてくるのは覚えてきますわ」

「事前にどんな所に住むかを見学に来たんだよ」

「引っ越しは、今の所予定通りですわ」

「そうでしたか、事前見学は歓迎です」


 そのくらいなら問題ない。

 常識のある龍で助かった。

 ルシアの時は、初めて会ったその場でうちに来る事が決まったからな。

 さてさて、その娘さんはっと。

 おお、同じく入園希望者に囲まれているぞ。

 三人が入ることは知っていたから、皆楽しみにしていたからな。


「あらあら、もう人気者ですわね」

「嫌われるよりも、よっぽどいいね」

「でも、皆さんに改めて自己紹介しないといけませんね」


 母親も娘の事を微笑ましく見ていたが、ここで改めて自己紹介する事に。


「イルゼですわ。宜しくお願いします」


 イルゼは緑龍王妃様の娘さん。

 緑色のウェーブのロングヘアで、お母さんに似てポワポワ系って感じ。


「スカイです。宜しくお願いします」


 スカイは飛龍王妃様の娘さん。

 銀髪の姫カットのボブヘアで、人型だけど背中に羽がある。

 龍にならなくても、空を飛べるそうだ。


「アーヤです。宜しくお願いします」

 

 アーヤは水龍王妃様の娘さん。

 青色の長い髪をポニーテールにしている。

 ちょっと活発な感じがする。


「「「宜しく!」」」


 そして、再びもみくちゃになっている三人。

 この分なら、コミュニケーションは問題ないだろう。

 仲良くやってもらいたい。


「子ども達とは別に特訓ですか?」

「はい、そうなんです」


 緑龍王妃様がブレットさんの特訓の事を質問してきたので、簡単に説明した。

 すると、龍王妃様達が興味を示してブレットさんの方に寄っていった。

 そして、ブレットさんと何やら話をしている。

 そのまま格闘術の動きのチェックや、戦術とかを話し始めた。

 一緒にやっていたうちのメンバーも集まってきた。

 何だか、皆の目がキラキラしているぞ。

 俺は皆を止めるのは不可能と判断して、遠くから見守る様にした。


「えっと、これは先遣隊からの報告ですね。お、大きな水源があるのか」

「水質の調査は必要だが、大きな発見だ」

「残念、温泉じゃない」


 未開地の先遣隊から、湖があったと報告が上がってきた。

 そこそこの大きさなので、水源としても利用できる。

 もしかしたら、魚とかも取れるかも。

 レイアは温泉じゃなくて残念がっていたが、そう簡単に温泉は見つからないぞ。


「地元の人間は、簡単な野菜とかを作っているそうですね」

「何も育たない不毛な大地ではなくて良かったな」

「こうなったら、温泉発見機を作る」


 レイアが何かを言っているが、無視しよう。

 少しでも作物を育てている環境なのは大きい。

 試験作付けは必要だが、どんな作物が育つか楽しみだ。

 もうそろそろ先遣隊が帰ってくるので、調査結果を纏めたらいよいようちらの出発だ。


「「ただいま」」

「おかえりなさい、サトー様にレイアちゃん」


 今日も頑張って働いてうちに帰ると、マリリさんが出迎えてくれた。


「そういえば、今日来た龍王妃様達は帰った?」

「皆さん夕方に帰っていきました。三日後にまたくるそうです」

「休みの前日か。そのくらいは全く問題ないだろう」

「私達も部屋の準備とかありますので、大変有り難いです」


 出迎える方の準備もあるから、侍従としても助かるという。

 何事にも、事前連絡は必要だ。

 うちには収穫祭までいて、その後にドラコ達と一緒にシルク様の屋敷に移動するという。

 

「うーん、ご飯が美味しい!」


 着替えて食堂に移動すると、茶碗に盛られた山盛りご飯と今日のおかずである焼肉を食べまくっているエステルがいた。

 いや、いくら運動してもそのご飯の量じゃ意味ないのでは?

 誰も、エステルにツッコミは入れなかった。

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