第三百二十一話 過去の告白
「さて、捜索もこんなところだろう。サトー、悪いが国境から追加の部隊を連れてきてくれ。警備と野営の準備をさせる」
「分かりました」
軍務卿からの要請で、国境にワープして追加の部隊をつれてきた。
人神教国の街から少し離れた所に、今日野営する拠点を作っていた。
ここまで出来れば問題ないとの事なので、皆で大会議室に向かう。
「よう、サトー達か。無事に人神教国を制圧できたらしいな」
「はい、色々とありましたが何とか」
「そうか、それは上出来だ」
大会議室に着くと、いつも通りにお菓子を食べている陛下がいた。
今日は何だかホッとするな。
「あら、何だか皆の様子がおかしいわね」
鋭い、流石は王妃様。
皆がよそよそしい態度を取っているのを即座に見破った。
ここにいる人にも、俺のことを説明しないといけないな。
「えーと、教祖との戦いの中で色々とありまして、俺とミケが別世界からの転生者だということがバレました」
「「「は?」」」
おお、王妃様と閣僚がビックリしてフリーズしているぞ。
話をしていなかった軍務卿も、俺のことをみて固まっている。
陛下だけ、アイスがついたスプーンをペロペロ舐めながら話を聞いていた。
「要は別世界で死んだ俺とミケが、シルと共にこの世界に転生したんです」
「ほう、それで?」
「前世の記憶を持ったまま、前世で死んだ時と同じ姿でこの世界にきました。ミケは元々普通の猫だったので、俺と一緒になるために猫獣人になった様です」
「ふむふむ、それで?」
「最初はキャンプとかして、冒険者登録をしようとバルガス領に向かっていました。転生して三日目に、例のビアンカ殿下がゴブリンに襲われている所に遭遇しました。そこからは、皆さんが知っている通りです」
「ふむふむ、成程」
おかわりのアイスを食べながら陛下が色々と聞いてきたので、大体の事を話す。
陛下だけがいつもの態度なので、徐々に他の人も落ち着き始めて俺の話に耳を傾けてきた。
「そうか、大体の事は分かった。人神教国の教祖も転生者だった様に、極稀に転生者というものがこの世界に現れる。その事は、実は一部の人間は知っている」
「え? そんなんですか?」
「大体は名前からしてこの国のものとは違うからな。儂は、結構前からそうではないかとあたりをつけていた」
王妃様が、そうなのって顔で陛下を見ていた。
俺だってびっくりだよ。
「幸いにして、サトーやミケは常識人だ。この世界の理を崩そうとはしていない。しかし人神教国の教祖の様に、有り余る知識を使って混乱させようとするものもいる。現に過去にもあったのだ」
「えっ、本当ですか? 自分は冒険者やりながら、のんびり暮らそうかなって思っていただけなんで」
過去にも、人神教国の教祖の様にやらかした人物がいたのかよ。そりゃ黒歴史しかない。
「それで、サトーは今後どうするのだ?」
「どうもこうも、このまま今の生活を続ける予定です。元の世界では死んでいますし、恋人すらできた事がなかったので」
「「「嘘だ!」」」
ここで突然エステルにリンを始めとした女性陣が反論した。
え? 俺何か言ったのか?
「ナチュラルに女性を口説いているじゃない!」
「サトーさんを好きになった人は多いんですよ」
「えっ、何それ。なんにも覚えがないんですけど」
「成程、サトーは無自覚に女性を口説いていたのじゃな」
「物凄い言われようなんですけど……」
突如として元気になった女性陣に迫られて、俺はタジタジになった。
「本当に彼女はできなかったよ。学生時代もそうだし、仕事場も男性ばかりで全く出会いがなかったし」
「成程な、女性と出会う接点がなかったわけなのか」
「うう、しかも仕事に疲れてやけ酒飲んで、道端にいた犬を撫でていたら事故にあって死んじゃうし……」
ああ、段々と前世の思い出が蘇ってきた。
ちょっと凹んできたぞ。
周りの人も俺の事を気遣って、話題を変えてきた。
「ミケちゃんは、本当に猫だったんだよね」
「そうだよー! 猫カフェという所にいたんだよ!」
「何それ、とっても興味があるんだけど」
「詳しく聞きたい」
ミケが猫カフェの話をしたら、王妃様達とレイアが食いついてきた。
「うーんとね、喫茶店なんだけど猫もいて一緒に遊べるの」
「うんうん、それで?」
「他にも鳥カフェとか、色々な動物のカフェがあるんだって」
「それで?」
「中にいる動物をモフモフしながら、本を読んだりお茶飲んだりご飯食べたりしているんだよ。でも、捨てられたりした保護猫もいて、たまに新しい飼い主さんの所に行くんだよ」
「ふむ、中々に面白い」
「癒しの空間ね」
ミケなりに猫カフェの説明をしているが、大体はあたっている。
あそこは癒やしの空間だったよな。
そして、既に何かを話ししている王妃様達とレイア。
絶対に動物カフェを実現しようとしている。
「とりあえず、サトーとミケは転生者だけど何も変わりはない。という事でいいな?」
「「「はーい!」」」
珍しく陛下が場を締めて、今日は解散になった。
何だか、人神教国に乗り込んだ事よりも疲れたよ。
「サトー、屋敷にいる人にもちゃんと説明しておけよ」
「あ、そうだった。それが待っていた」
陛下からの指摘に、俺は崩れ落ちた。
うちに帰って、また説明しないといけなかった。
俺はうちに帰ると、人を集めて同じ説明をすることになった。
しかし、大半があっさりと受け止めてくれた。
「「「サトーさんは普通じゃなかったから、色々と納得した」」」
何それ、かなり凹むんですけど。
俺は思わず崩れ落ちてしまった。
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