第三百八話 決戦前日

 王国から人神教国に示された回答期限の前日になった。

 人神教国からはあのふざけた回答しか送られていないので、王国はやる気満々で準備している。


 うちも着々と準備を進めていく。

 念の為と言うことで、シルク様とアメリア達はブルーノ侯爵領とギース伯爵領に前乗りした。

 従魔達も、ワープが使えるショコラとスラタロウ以外も現地にいる。


「久々に大規模な戦いになりそうだな」

「とはいっても、この間の王都の防衛戦も結構なものでしたよ」

「今回はサトー達の戦力も分散する。だから王都の防衛一つとっても、前回の様にはいかない。だから、念には念を入れおくのだ」


 王城でも準備が進み、いつでも迎撃できる状態になった。

 俺達が王都にいないので、特に防壁の守備には力を入れているという。

 そういう意味でも、今回は龍の戦力が頼りになる。

 今日ドラコとルシアの母親と話すから、色々と相談してみよう。


「「ただいま」」

「お帰りなさいませ。龍の皆様がお見えになっています」

「分かった、着替えてすぐに行く」


 仕事をおえて帰宅すると、フローレンスが出迎えてくれた。

 ドラコとルシアの母親もきているというので、着替えて応接室に向かった。


「お待たせしました」

「大丈夫だ」

「むしろ、久々に娘とゆっくりと話せたからな」


 応接室に向かうとドラコとルシアの母親がいたが、それ以外にも龍人の女性が三人座っている。

 そしてドラコとシラユキの祖父母に、白龍王夫妻もいた。


「白龍王様、ドラコのお祖父様。ここにいていいのですか?」

「問題ない。帝国も人神教国とのことで、明日は不要不急の外出を控えるようにお達しがでている。だから今日明日は山小屋もお休みだ」

「それに、かわいいシラユキちゃんに危害を加えた奴らを叩くのだ。早めに準備というわけじゃ」


 今日明日は、王国も帝国も公国も人神教国が万が一攻めてこないようにと、不要不急の外出は控えるように通達がでている。

 なので、明日は入園希望者の訓練もお休みだ。

 そして、話は初対面の三人に移った。


「はじめまして。緑龍王妃ですわ」

「そして、私が飛龍王妃です」

「最後に、水龍王妃だ」


 何となく予想はしていたけど、三人共に属性龍の王妃様だったのか。

 緑龍王妃は、髪が緑色のロングで、ポワポワした印象。

 飛龍王妃は、銀髪のセミロングで何となくリンに似ている。

 水龍王妃様は青のショートヘアで、フローラ様の雰囲気にそっくりだ。


「私達も、明日は協力しますわ」

「人神教国の奴らは、私達のすみかにもちょっかいをだしているんだ」

「なので、これは私達の為にもなります」

「お忙しい中、ご協力頂き有難う御座います」


 どうも人神教国は、ドワーフ自治領の赤龍の山にちょっかいだした様に、他の龍のすみかにも手をだしているという。

 確かに、他人事ではないだろう。

 そして、三人の龍王妃様は更にお願いがあるらしい。


「人神教国の件が終わってからでいいので、お願いがあります」

「私達にも、来年入園できる娘がいるのだよ」

「やはり閉じこもってばかりてはいけないので、お願いできますか?」

「問題ないと思いますが、もしかしたら人数の関係で、住んでいただくお屋敷は隣になると思います」

「それは全く問題ありませんわ」

「赤龍の娘の様に働かせるので」

「お金を稼ぐ大切さも教えて頂けたらと」


 うん、とっても真面目な考えだ。

 実際にあって判断するけど、多分問題ないだろう。

 滞在先はシルク様の所になりそうだな。

 うちはちょっと定員を超えそうだ。


「さて、皆さんも一緒に食事は如何ですか? 今日は子ども達のリクエストで、水炊き鍋ですけど」

「勿論頂くよ」

「皆で鍋を囲むのも楽しいしな」


 既にうちで鍋を食べているドラコとルシアの母親は、待ってましたと言わんばかりに食堂に動き始めた。

 一緒に、他の龍人も連れて行く。


「「「頂きます!」」」


 そしてお待ちかねの鍋タイム。

 子ども達が一斉に食べ始めると、初めて食べる龍人も食べ始めた。


「凄い美味しい!」

「出汁が良く効いている」

「様々な食材も使われていて、栄養もありそうだ」


 緑龍王妃様に飛龍王妃様と水龍王妃様は、初めての鍋の味に感動している。


「うむ、流石はスラタロウの料理だ」

「これなら、材料さえ揃えば山小屋でも出せそうだな」


 そしてスラタロウの料理を食べたことがある白龍王様とドラコの祖父は、料理人らしく色々と鍋料理の分析を始めていた。

 その内、子ども達が龍王妃様達のテーブルに集まりだした。

 うちの子らは人見知りしないので、ガンガン話をしていく。

 龍王妃様達も、子ども達と仲良く話をしている。

 そんなアットホームな感じで、決戦前日が終わっていった。

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