第三百七話 人神教国からの回答

「朝の訓練は、これで終わりです」

「「「はい!」」」


 早速マックス達三人は、入園希望者と共に訓練を開始した。

 魔力循環や剣の基礎を、子ども達と共に一からやり直す。

 村で教えてくれる人がいなかったので、意外と勉強がタメになったと言われた。

 これからも、朝の訓練に参加させよう。


 三人は訓練が終わったら、着替えて農商務卿の所に行く予定。

 俺は仕事があるので、エステルとリンが付き添ってくれる。

 リンに一言話してから、俺とレイアは仕事に向かった。


 仕事場に着くと、ため息交じりの陛下が現れた。

 手には何か書類が握られている。


「サトー、これを見てみろ」

「えっと、どう見ても子どもが書いた様な下手くそな文字ですね」

「バカって書いてある」


 陛下から見せられたのは、バカと書いてある書類。

 これが落書きなら良いのだが、書かれている書類に問題があった。


「これって、人神教国からきた回答文ですね。正式にサインもあります」

「これが、人神教国から我が国への回答なのだろう」

「こんな正式な文章、初めて見ました」

「裏にはアホとも書いてある」


 公式回答が、前代未聞過ぎる。

 陛下も宰相も呆れている。

 念の為に、会議が開かれることになったのだが……


「ある意味、感動的だな」

「素晴らしい回答ですね」

「分かりやすくていいな」


 皆、人神教国からの回答内容に頭の処理が振り切ったらしい。

 思わず褒め始めているぞ。


「もう、人神教国からの回答内容としては十分だろう」

「直ぐに、軍の警戒レベルを上げます」

「王都の警戒も上げよう」

「主要都市にも通達をだすか」


 回答内容に対しての問い合わせはするが、厳戒態勢を敷くことには変更はない。

 備蓄倉庫の確認や避難民が発生した時の対応など、色々な事を想定していく。

 

「空振りで終わってくれればいいですね」

「この前の火山噴火もある。災害対応もあるし、こういうのはやっておいておいて損はない」


 やるだけやっておけばいいという事なので、各部局に指示が下った。

 俺達も、出撃する体制を決めないといけない。


「という事で、この体制で動きます」


 うちに帰って、皆をパーティールームに呼んだ。

 人神教国側へは、俺とミケとエステルにリンとオリガとマリリさん。

 ここにビアンカ殿下も参加する予定。

 タラちゃんとポチとサファイアにフランソアがついてくる。


 ランドルフ領側は、シルク様を中心にクロエとドリーとドラコとシラユキとルシアが参加。

 フウにベリルの狼コンビにワープ役でショコラも、こちらに行く。

 

「サトーさん有難う御座います。私にリベンジの機会を与えて下さって」

「今回は思いっきりやり返そう」

「はい!」


 ギース伯爵領へは、アメリアとカミラとノラにスラタロウ達のスライム軍団。

 今回は、ニー達ニードルラットもここにいる。


「「「ねーね頑張って!」」」

「ご迷惑をおかけしたギース伯爵領に、少しでも役に立つように頑張ります」


 残りのメンバーで、王都の防衛にあたる。

 前回空を飛ぶガーゴイルが現れたので、ララとリリとバハムートに乗ったホワイトが鍵となる。

 オリヴィエも空を飛べるようになったが、予備戦力扱いだ。

 ガルフとマルクに加えて、馬もいるから大丈夫だろう。

 それに龍も参加するし、何だか過剰戦力の様な気がする。

 白龍王やドラコとシラユキの祖父母も、人神教国側に参加する。


「レイアとフェアは、万が一に備えて王城で待機だな」

「敵は全部潰す」

「頑張る!」


 万が一の時は、うちを避難所として開放する。

 レイアとシルク様の屋敷も住むことはできるので、最悪の事は想定しておく。


「屋敷の事は、フローレンスに任せっきりになってしまうな」

「こちらはお気になさらないで下さい。マーメイド族の方もいらっしゃいますので」

「「「頑張ります!」」」


 屋敷も問題ないと思うし、万が一避難所になっても侍従がそこそこいる。

 食料もたっぷりあるし、フローレンスは治癒魔法も使える。

 取り敢えず、こんなものかな。

 ワープ役もつけているので、何かあっても直ぐに移動できる。


 次はマックス達だ。


「農商務卿の所に行ってどうだった?」

「はい、御婦人が優しい方で逆に大丈夫かと気遣いをされてしまいました」

「これが貴族の御婦人かと、改めて感激しました」

「スラタロウが作ったお菓子を持っていったら、とても喜んでくれました」


 農商務卿の奥さんは、良い人で有名らしいからな。

 それにスラタロウのお菓子も、効果あったのだろう。

 この件も一区切りだな。


「それでサトーよ、歓迎会本番はまだか?」

「スラタロウが作ったお菓子を、家内やうちのものに全て食べられてしまったのだ。儂も食べてみたいのだ」


 昨日に引き続いて、偉い方がパーティールームの端に待機済み。

 今日は王妃様達に加えて、王太子夫妻とルイ夫妻もいる。

 ウィリアム様は、マシュー君達と小さなテーブルにスタンバイしている。


「終りにして、歓迎会を始めようか」

「「「「ヤッター!」」」」


 という事で、歓迎会がスタート。

 今日は久々のお魚づくし。

 マックス達は、初めての海鮮丼の美味しさにビックリしている。

 子ども達も、スラタロウが作るお魚料理は大好物。

 そしてメインが魚なので、大人向けの飲み物はお酒になっている。

 人神教国の対応が終わったら、また皆でパーティーやりたいな。

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