第二百九十五話 オリエント公国に到着
公国へ数多くの龍が向かってきたのを遥か彼方で見つけてから、街の人はまさかとざわざわしていたらしい。
そして龍の大群が一斉に下降を始めると、住民は大パニックになった。
「数え切れない程の龍が!」
「一斉に降りてきたぞ!」
「まさか鎖国の腹いせに攻めてきた?」
「逃げろー!」
あ、市街地は阿鼻叫喚だ。
逃げ惑う人もいる。
ジュリエット様、早く早く。
「皆さん、落ち着いて下さい。私はオリエント公国公女ジュリエットです。龍の支援を受けて、悪政を敷くものを裁きにきました」
「え、ジュリエット様?」
「確か、国外逃亡で指名手配になっているはず」
「まさか本物?」
おや、住民は龍とは別の意味でざわざわし始めた。
どうもジュリエット様は、王国に向かった後に外務大臣の企みにより犯罪者にされているようだな。
ジュリエット様が呼びかけていても、住民に対しての効果は薄そうだ。
ここで、王妃様がジュリエット様に代わって住民に呼びかけをするようだ。
「妾はエリザベスである。母国の危機に際し、救国の聖女様と共にエストランド王国より馳せ参じた。公国民よ、安心するが良い。これから悪人に裁きが下されるであろう」
「エリザベス様の声だ!」
「間違いない」
「戦乙女の帰還だ!」
「聖女様もいるのか」
「エリザベス様、万歳!」
スゲー、あっという間に住民の間の空気が変わったぞ。
話す内容、話し方、声の抑揚。
残念だけど、ジュリエット様とはレベルが違う。
いつもの優しい話し方と違うから、俺もビックリした。
ジュリエット様も、流石といった感じで王妃様を見ている。
しかし、一部住民が王妃様の事を戦乙女と言っているぞ。
王国に嫁入りする前に、一体何をしたのだろうか。
まあ、王妃様の実力を見れば、戦乙女と言うのはよく分かる。
そして、ちゃっかりと聖女の事も話をしているぞ。
今日は、出来るだけ目立たない様にしようと思っているのに。
「では、二手に分かれましょう。牽制の龍も、宜しくお願いします」
「「「グオー!」」」
俺が全体に指示を出して、二手に分かれる。
公国邸に向かうのが、ジュリエット様とエステルとリンにミケとララとリリとレイア。
それにドラコとシラユキとルシア。
ポチとバハムートとホワイトにベリルも同行する。
行政府に向かうのは、俺と王妃様とフローラ様とライラック様。
ビアンカ殿下とシルク様に、ドラコとルシアの母親もこちらに来る。
後は、タラちゃんとフランソワもこちらだ。
行政府に向かった龍は、行政府前の道路に着陸して人間の姿に戻った。
大体三十人位の龍人が、体を動かしてウォーミングアップをしている。
そこに騎馬隊が到着した。
先頭の騎士は豪華な装備をしているので、かなり高位の人だろう。
二十人程の騎士を連れている。
豪華な装備をした騎士が、馬上から降りてこちらに向かって来た。
「エリザベス様、お帰りなさいませ」
「ゲーデルか、久しいのう。騎士団長になったか」
「はい。我ら一同、エリザベス様の帰国を心待ちにしておりました」
「本来なら心躍る帰国にしたかったのだが、中々不本意だな」
「我々も、忸怩たる思いでおりました」
「妾もだ。それを終わりにしよう。公国邸にジュリエットが向かった。フォローを頼む」
「はっ、直ぐに騎士を向かわせます」
「それから、龍人が此度の件で協力してくれる。逃走者がいないように、空からも監視をしている」
「噂に名高い救国の聖女様もおりますし、なんと心強い事か」
騎士団長が直ぐに指示を出し、一部を領主邸と街の巡回に向かわせた。
そして、一行は行政府に乗り込む事に。
「エリザベス様だ、間違いない」
「それに、聖女様までいるぞ」
「エリザベス様、万歳! 聖女様、万歳!」
住民も王妃様に気がついて、万歳している。
それに、にこやかに手を振り返す王妃様達。
俺も手を振り返すと、更に声援が大きくなった。
さあ、裁きの時間と参りましょうか。
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