異世界転生したので、のんびり冒険したい！

第二百五十九話 ルキアさんの結婚式

　結婚式会場は、お屋敷の庭で執り行う。

　簡易的な祭壇が出来ていて、この街の神父さんもスタンバイ済み。

　祭壇から赤い絨毯が伸びていて、絨毯の両サイドに来賓が並んでいる。

　ちなみに俺達はルキアさんの方に並んでいて、何故かルキアさんのお父さんの隣にいる。

　ルキアさんのお父さんはまだ足が悪いので車いすに座っているが、少しずつ歩く訓練を始めたという。

　アルス王子の方には、陛下や王妃様に王太子様などの王族の他に、学園の同級生が並んでいる。

　初めてエステルとビアンカ殿下以外の女性の兄妹を見たけど、確かに女性ばっかりだな。

　陛下の肩身が狭くなっている。

　そして同級生もワイワイやっている。

　うーん、ビューティーさんのインパクトが半端ない。

　ガチムチの体でドレスを着ているから、パツンパツンになっている。

　思いっきり体のラインが出ているのにエロさは全く無く、むしろ腹筋の逞しさに驚愕すら感じる。

　それでも男女関係なく話している辺り、コミュニケーション能力は高そうだ。

　ちなみにジェマの事は、同級生の間ではなかった事になったという。

　そんな奴いたっけなという感じだった。

「お待たせしました、それでは新郎の入場です」

　司会の人の案内で、皆が沸き立った。

　ちなみに司会はアルス王子のお姉さんで、プロのオペラ歌手だという。物凄い美声だ。

　皆がはやし立てる中、アルス王子が入場してきた。

　アルス王子が着ているのは、結婚する王族が着る伝統的な衣装だという。

　青を基調に金や銀の刺繍が入っていて、とても豪華な物だ。

　珍しく緊張しながら入ってきたアルス王子を、同級生が冷やかしている。

　中には、緊張しているアルス王子の背中をバシバシ叩いている人がいる。

　流石に不敬罪にはならないけど、後でアルス王子から何か言われるな。

　と、ここでルキアさんのお父さんが、車いすに乗せられたまま侍従に連れて行かれた。

　ということは、そろそろルキアさんの入場か。

　皆もアルス王子も、屋敷の入り口を注目している。

「お待たせしました。それでは新婦の入場です。大きな拍手で迎えてください」

「「「うわあ、綺麗」」」

「「「うおー！」」」

　女性陣の歓声を掻き消す、アルス王子の同級生による野太い声が上がったが、野郎どもの気持ちは良く分かる。

　先頭にシルに乗ったカーター君がいて、ミケ達が後に続きながらカゴに入れた花びらをまいている。

　ララとリリは空を飛びながら花びらをまいているので、さながら本物の天使の様に見える。

　その後ろには、結婚指輪が入っているかごを持っているウィリアム様とルーナちゃんの二人が続いていく。

　その後をベールを被ったルキアさんが続いていくが、美しさのあまりに感嘆の声が上がっている。

　ルキアさんの後ろを保護されている子ども達がベールを持っている。

　若干人数が多い気がするが、それが気にならないくらい可愛らしくできている。

　男女共に、「綺麗」「美しい」「胸がおっきい」が主な感想で、男性の野太い歓声の理由でもある。

　そしてバージンロードの真ん中位で、ルキアさんのお父さんが杖を付きながら待っていた。

　ルキアさんはお父さんの腕を取り、ゆっくりゆっくり進んでいく。

　ルキアさんのお父さんは、既に感無量なのか涙が止まらない。

　その様子を見ている王妃様達も、目尻をハンカチで押さえている。

　そしてアルス王子の元にたどり着き、ルキアさんのお父さんはアルス王子に何かを話してからルキアさんをアルス王子に預けた。

　子ども達も役割を終えて、それぞれの場所に散っている。

　ルキアさんのお父さんは再び車いすに乗って俺の隣に戻ってきたが、その腕の中には小さな肖像画があった。

　恐らく、ルキアさんのお母さんの肖像画だろう。

「さて、これから神に結婚の旨の報告をする」

　そして、神父さんによる宣誓の儀式が始まった。

「汝、アルス・テラ・エストランドは、ルキア・フォン・ブルーノを妻とし、終生愛することを誓いますか？」

「誓います」

「続いて、汝、ルキア・フォン・ブルーノは、アルス・テラ・エストランドを夫とし、終生愛することを誓いますか？」

「はい、誓います」

　席からは、大人を中心として感涙を流している人が多い。

　特にルキアさんはここまでくる間に、様々な苦労をしてきたからな。

「それでは、指輪の交換を」

　続いて、オーウェン様とルーナちゃんが持ってきた結婚指輪を、お互いの指に付ける。

　ちなみにこの指輪はドワーフの親方の逸品で、ミスリルを精錬して作ったものだ。

　アルス王子が、わざわざ親方の所まで行って注文したという。

「それでは誓いの口づけを」

　アルス王子はルキアさんのベールをゆっくりと上げて、お互い見合った。

　そして、アルス王子とルキアさんは、誓いの口づけを行った。

「おお、ここに新しい夫婦が誕生しました。皆様、盛大な拍手を」

　口づけが終わったタイミングで、神父さんが皆に拍手を促した。

　周りからは、割れんばかりの拍手がされている。

　中には口笛を吹いている人もいるな。

　ルキアさんのお父さんと王妃様達は、さっきから涙が止まらない。

　子ども達も、一生懸命に拍手をしていた。

　これで結婚式は無事に終わり、次はお待ちかねのブーケトスに移ります。