第二百四十五話 戦いの翌日

「え? 聖女サトーは女装した姿だったのか!」

「あ、説明するの忘れていた」


 一旦うちに戻ってゆっくり休んだ後、俺達は再び帝国の城にきていた。

 メンバーは俺とエステルとリンにミケとレイア。

 それと、昨日うちのお屋敷に宿泊していったビアンカ殿下も含まれている。

 昨日は、女装したまんまの姿で活動していた。

 他のメンバーは城への突入時に変装を解いていたが、俺は何故か女装したほうがいいと周りに言われていた。

 その為に、皇帝陛下と閣僚に改めて挨拶をしないとならない事になった。

 やはり、聖女が女装しているのはマズイですよね。


「いや、全く気づかなかった」

「むしろ女性とばかり思っていた」

「もう既に、聖女様が国を助けた事になっている」

「多くの人が聖女を目撃している」

「むしろ実は女装でしたと言う方がマズイだろう」


 嗚呼、やっぱりこういう展開になったか。

 皇帝陛下も閣僚も、男である方が不都合だと言っている。

 今回も色々諦めよう。


「先ずは、改めて今回の件に尽力頂き感謝している」

「過分なお言葉勿体のうございます。父上にもよく伝えておきます」


 皇帝陛下から改めて感謝の言葉を頂き、代表してビアンカ殿下が返答した。

 一晩寝たためか、皇帝陛下の顔色はかなり良くなっている。


「内務大臣が制定した法令は全廃する事になる。全て正しい手順を踏んでおらぬからな」

「それが宜しいのじゃ。国の復興に向けては、差別なんて不要じゃ」

「全くだ。幸いにして国内で対立関係にあった貴族も、復興に向けて一丸となっている」


 めちゃくちゃな内容の法令だったし、基本は全廃だよな。

 皮肉なのか、帝国内の危機で結束が固くなったのは良かった事だ。

 人神教国がとんでもない毒だったから、それに対するアレルギーもあるのだろう。


「人神教国とは断交だな。人神教国に関する全ての物は禁止とする。どこまで効果はあるかわからんがな」

「その心構えはとても大切じゃ。我が国でもモグラ叩きじゃ。奴らはゴキブリよりもしぶとい」


 昨日の内務大臣の成れの果てを見れば、どんだけしぶといかは実感して貰えたはず。

 奴らは姿形を変えて、直ぐに現れるからな。


「サトーを代表とした方々には、改めて報奨を出そう。申し訳ないが、帝国内の情勢が落ち着いてからとなる」

「こちらの事は気にしないで下さい。先ずは国民のために宜しくお願いします」


 こちらは報奨を貰いたくて色々やったわけではないし、結果から言うと殆ど費用もかかっていない。

 巡回業務も今や国から依頼されている仕事だし、その出張扱いになっている。

 更に、昨日取った薬草をその日のうちにギルドで売ったらかなりの高額で取引された。


「内務大臣と外務大臣の屋敷からは、相当な金額を押収した。ワース金融やワース商会の分も含めて、全て復興にあてる予定となる」

「奴らは金儲けに関しては聡いからな。存分に溜め込んでおるじゃろう」


 むしろ俺等に金を使う位だったら、復興の為に使って欲しい。

 それだけの金額は押収できると思う。

 今日の話し合いはこのくらいにして、今後は事務方で色々細かいところを詰めるという。

 俺等が呼ばれるのは、その後という。


「暫く忙しいが、働けるというのは良いことだと思いたいものだ」


 苦笑いをしている皇帝陛下だけど、今まで病床にいた分だけやる気があるのだろう。

 体調には十分に注意してほしい。


「改めて、アルス兄上とルキアの結婚式の招待状じゃ」

「ビアンカ王女殿下、わざわざ届けて頂き有難うございます」


 会談後、昨日皇帝陛下が治療を受けていた部屋に移動すると、ソフィー皇女とオーウェン皇子とベラ皇女が他の家族を見舞っていた。

 治療を兼ねて容態を確認するが、順調に回復している様だ。

 ビアンカ殿下は、改めてルキアさんの結婚式の招待状をソフィー皇女に手渡していた。

 オーウェン皇子やベラ皇女の分も入っている。

 二人とも、結婚式を楽しみにしている様だ。


「ソフィー皇女、現在我が家に置いてあります荷物は如何しますか?」

「申し訳ありませんが結婚式で伺う際に持っていきますので、それまで預かって頂けますか?」

「承りました。大切に保管致します」


 この辺は、専属として付いてくれたフローレンスにお願いしておこう。

 

「しかし本当にサトー様が聖女様なんですね。今でも信じられません」

「化粧もしていないなんて、女性からしたら羨ましいですわ」

「肌もお綺麗で。どの様なケアをされておりますか?」

「あはは、特に気にしたことがないもので……」


 そしてやはりというか、第三皇妃様とお付きの侍従が俺の女装の事を色々聞いてきた。

 何とか誤魔化してやり過ごした。


「はあ、結構疲れた」

「仕方あるまい、女性にとって美は永遠のテーマじゃ」

「そうそう、何もしていないのに綺麗なサトーがおかしい」

「サトーさんは、ある意味女性の敵ですわ」


 何とか質問を切り抜けてお屋敷に戻ってきたが、今度は身内から色々言われている。

 もう、そのくらいでやめてくださいな。

 ちなみにソフィー皇女達は、ルキアさんの結婚式の三日前に我が家に招待する。

 結婚式の前日に獣人部隊へ勲章を授ける式典が予定されていて、そちらにも参加要請がきている。

 獣人部隊は色々と活躍をしたのだから、勲章は貰って当然だろう。

 こちらも軍務卿が直接手渡したりと、中々の式典になる予定だ。

 

「なんだかんだで、結婚式まで二週間切ってますからね」

「暫くは、ブルーノ侯爵領を中心として巡回を強化しないといけないじゃろう」

「どう考えても、人神教国が今回の件で大人しくなるとは考え難いですよね」

「逆に、何をしてくるか全く分からん」

「いっそのこと、人神教国を叩き潰したいです」

「妾も同じ気持ちじゃ」


 人神教国は本当に何をやってくるかわからないので、当分は警戒しないと行けない。

 結婚式まで、平穏無事に済んで欲しいものだ。

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