第百九十話 ドワーフ自治領に到着

 ペシペシ、ペシペシ。


「パパ、起きて」

「サトー、起きて」


 うーん、朝か。

 今日は窓の外が湖だから、陽の光が反射していつもよりも眩しいな。

 俺の上にレイアとマチルダが乗っているが、この時間ならまだ寝れる。

 ということで、お休みなさい。


「サトー、朝だよ!」

「グボバ!」

「あ、またやっちゃった」

「お、おま、なんか、い、いえば……」


 おう、まただよ!

 ドラコの膝が、股間直撃だ。

 これで何回目だ?

 痛みで一気に目が覚めた。

 ベットの上でゴロゴロ転がって、何とか痛みをやり過ごす。


「相変わらず騒がしいのう」


 隣で寝ていたビアンカ殿下が、俺の叫び声で起きたようだ。

 部屋のドアを開けて、呆れた目で見ていた。

 俺だって、叫びたくて叫んだわけじゃないんだよ。

 

 昨晩サザンレイク侯爵が是非お屋敷に泊まってくれといってくれたので、ドラコの実家に向かうメンバーだけ泊まることにした。

 人数分の部屋は用意してくれたが、案の定レイアとマチルダとドラコは同じ部屋がいいと言ってきた。

 大きめのベットだったから、寝るのには問題がなかった。


「これからドワーフ自治領に向かうのですか?」

「はい、目的はこのドラコの実家に行くことですけど」

「赤龍の山ですね。ドワーフと共生しているとの噂です」


 朝食時にサザンレイク侯爵と話をしていたが、どうも赤龍はドワーフ自治領のドワーフと色々な仕事をしているらしい。

 一体どんなところなんだろう。

 

「また、是非お寄りください」


 サザンレイク侯爵一家に見送られて、俺達は出発する。

 サザンレイク侯爵領には、ゆっくりできるときに皆でまた来たいな。

 そんな事を思いながら、馬車は爆走していく。

 段々と周りの景色が変わっていき、田んぼが増えてきた。

 ドワーフ自治領では米作りが盛んらしいので、前世は日本人の俺としてはとても楽しみだ。


 二時間ほど走ると、とある子爵の街につく。

 

「おお、おヒゲが一杯」


 ドワーフ自治領に近いのか、ここではドワーフも多く見かける。

 髭ヅラオヤジが一杯いて、珍しくレイアが興奮している。

 市場で売っているものも米を使ったものが多く、餅製品もある。

 これは是非買わねばと、市場の売り物を大人買いした。

 市場のおばちゃん達は品物が大量に売れてホクホク顔だけど、俺も米に餅が買えてホクホクだ。


 おにぎりが売ってあったので勿論買って、馬車に乗り込み皆で食べた。

 今回は醤油味に味噌味、漬物もある。


「ふむ、この酸っぱい果実が入っているおにぎりも、中々いけるのう」

「うん、酸っぱいのがまた良い」


 ビアンカ殿下にレイアは、梅干しもどきの入ったおにぎりを食べていた。

 俺も食べるが、懐かしい味に涙がでそう。

 マチルダは、味噌が塗られた焼きおにぎりが気に入ったようだ。


「パンみたいに手軽に食べられて、それでいて色々なバリエーションがある」

「スラタロウが調理をする所を見たが、調理スペースもとらんから狭い店でも可能。これは一つ出店を検討するか」

  

 どうもレイアとビアンカ殿下は、おにぎりを使った店を出店する気でいるようだ。

 確かに王都にはないし、腹持ちもいいのでヒットする可能性もある。

 こういうのは、スラタロウも食いつきそうだな。

 皆で感想を言っている内に、段々とドワーフ自治領の街が見えてきた。

 何だか街から煙が上がっている様に見えるが、火事ではなさそう。

 もしかして、温泉か?


「おお、湯気が一杯!」

「何か匂うな」


 硫黄の匂いがしてきたから、温泉で間違いないだろう。

 街中に温泉が湧いてるんだ。

 そして街の後方にある大きな山。

 あれがドラコの実家で間違いないだろう。


「ドラコ、この街には何回か来たことあるか?」

「お父さんとお母さんと何回か来たよ。温泉が気持ちいいんだ。あとご飯も美味しいよ」


 サザンレイク侯爵領も良いところだったけど、ドワーフ自治領も良いところの可能性が高い。

 米どころだし、食事もとっても気になる。


 でも、先ずはお仕事をしないと。

 ドワーフ自治領の総督に陛下からの手紙を渡す為に、皆で総督府による。

 アポイントを取ると、直ぐに応対してくれるとのこと。

 ちなみに、受付のお姉さんもドワーフだ。

 待合室で待っていると、これまた髭ヅラのドワーフが入ってきた。


「いやいや、おまたせしました。何せここ数ヶ月トラブルが、……あー、姫様!」

「「「「姫様?」」」」


 ドワーフの総督が入ってくるなり、ドラコを指さして姫様と言ってきた。

 ドラコは指をさされた瞬間、首を横にそらした。

 これは何か波乱の予感?

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