第百十一話 決戦に向けての話し合い

「ブルーノ卿、並びにルキア嬢。この度はご迷惑をおかけし誠に申し訳無い」

「謝罪は受け取りましょう。庭も何とかなりますしご心配なく」


 執務室で関係者が集まり、今後について話し合うことに。

 ララ達も関わるので、一緒に参加していた。

 話し合いの前に、軍務卿がルキアさんのお父さんに謝罪していた。

 因みに、軍務卿の顔のあざはキレイに消えていた。

 実は軍務卿の奥様が馬車にひまわりの苗を持っていっている間に、あのうさぎ獣人の女の子が回復魔法で軍務卿の顔のあざを治していた。

 女の子から話を聞いたけど、顔のあざが痛々しいのではなく、あざがあって余計に顔が怖いという理由で回復魔法をかけたらしい。

 二人が和解するには、まだまだ時間がかかりそうだ。


「さて、今後の事について話をしよう」


 アルス王子の話出しから、会議が始まった。


「まずランドルフ伯爵領の状況についてだが、相変わらず王都への召喚要請も無視をしている」

「バスク領にいた時から、状況は変わらないですね」

「変わらない。完全にこちらの連絡を無視している」


 ランドルフ伯爵は、もう王国の言うことは聞く気がないんだろうな。

 そう考えると、適当でも反応をしていたブルーノ侯爵領の方がマシだったか。


「王都の屋敷も捜索したが、やはり重要な物はなかった。人員も屋敷の機能を最低限維持するレベルで執事もいなかった。メイドは領地の事など、何も知らされていなかったようだ」

「王都に屋敷がある意味が、まるでないですね」

「屋敷は既に王国で差し押さえている。メイドなども保護している」


 ランドルフ伯爵にとって、王都の屋敷はお飾り当然だったのだろうな。

 メイドさんとかが保護されて良かった。


「あと数日で追加の部隊がバスク領へ到着する。到着次第直ぐに作戦開始となる」

「ブルーノ侯爵にいる部隊は、今すぐにでも動けるぞ」

「軍務卿には申し訳無いが、明後日にでもバスク領へ向かって部隊と合流して頂きたい」

「承知した」


 バスク領に関しては、軍務卿にお任せで大丈夫だろう。


「ルキアに関しては、ブルーノ侯爵領で部隊の指揮だな。今はルキアに死なれると、ブルーノ侯爵領が大変なことになるだろう」

「分かりました。怪我人も出る可能性があるので、後衛もしっかりとしないといけませんね」


 本当に今のブルーノ侯爵領は、ルキアさんが生きていると言うのが一番の重要なポイントだ。

 ルキアさんに死なれるのはかなりマズイので、ここは仕方ないけど後衛に専念して貰わないと。


「そして、作戦のポイントとなるのがサトー達だ」

「俺等ですか?」

「そうだ。サトー達が機能しないと、この作戦は成功しない」


 アルス王子が言うのだから、俺達はどんな無茶振りをされるのだろうか。


「簡単に言うと、ブルーノ侯爵領とバスク領から向かう部隊は囮だ。敵の部隊がそこに引きつけられたタイミングで、飛龍部隊が一気に屋敷と研究所を制圧にいく」

「まさか、その飛龍部隊に俺達もですか?」

「飛龍部隊は私を含めて四騎となる。飛龍には後二人位は乗れるから、サトーも一緒に連れて行く事ができる」


 陽動で兵を動かして、その隙に本丸を攻め落とすのか。

 リスクもあって、大変な作戦だ。

 俺達の少数戦力で、一気に本丸を落とさないといけないか。


「とはいえ、部隊の後衛支援もしてもらいたい」

「戦力を分けないといけないですね」

「ああ。こういう時に回復魔法が使える人材が多いサトーのパーティーは、非常に助かる」


 ということで、俺等のメンバーの戦力を分ける。

 突入部隊は、俺とエステル殿下とビアンカ殿下とリンさんミケにオリガさんとマリリさん。

 従魔はタラちゃんにスラタロウとポチとフランソワに、サファイアとタコヤキで行くことにする。

 ブルーノ侯爵領は、シルとララとリリとレイアがつく。

 バスク領へは、リーフとドラコとベリルにホワイトとショコラを配置する。

 何か緊急時などは、ルキアさんのヤキトリ含めて、鳥達を飛ばす事に。

 そして、予備戦力でブルーノ侯爵領とバスク領にそれぞれ馬を一頭づつ置くことに。

 予備戦力というか過剰戦力の様な気もするけど、念には念を入れておこう。


「ララとリリとレイアも、ルキアさんの言うことをちゃんと聞くんだよ」

「任せて、ララがルキアお姉ちゃんを守るんだよ」

「リリも頑張る」

「レイアも」


 三人は役割を任せられたので、やる気十分になっている。

 この三人だといつの間にかレイアが指揮している事が多いので、意外と問題なく物事が進んでいく。


「リーフとドラコも頼んだよ」

「任せてー。ホワイトもいるから、回復部隊も大丈夫だよ」

「初めての実戦だから、緊張するな」

「ワフー」

「リーフ、すまんがドラコとベリルの面倒も頼んだ」


 いくら軍務卿とヴィル様がいるとはいえ、ドラコとベリルでは心配なのでリーフに色々頼むことにした。

 正直ドラコとベリルだけではかなり不安だ。


 ブルーノ侯爵領では、兵士候補も手伝いに入るという。

 実際の戦闘を行うのかは、当日の状況次第だろう。

 そして他にも手伝いが入る事に。


「私たちも手伝いをさせて下さい」

「僕たちもお手伝いをしたい」


 手伝いを申し出たのは、ブルーノ侯爵領で囚われていた人たち。

 成人女性から違法奴隷の子どもまで、みんなが手を上げた。

 ブルーノ侯爵領だけでなく、バスク領でも手伝うという。

 後方支援として、炊き出しや治療所などを手伝う事になった。


 更に援軍が来ると、執務室に連絡が入った。

 執務室に、マルクさんがルキアさん宛の手紙を届けてきた。


「失礼します。バルガス領よりルキア様へ手紙が届いております」

「ありがとうございます。アルス王子、バルガス様が難民を引き連れてブルーノ侯爵領へ援軍にきてくれるそうです」

「そうか、それは心強いな。バルガス領の兵はよく訓練されていた。貴重な戦力になるだろう」

「既にバスク領を出ているそうで、早ければ明日にもブルーノ侯爵領に到着するとの事です」


 バルガス領から援軍が来るとなれば、こちらとしてもかなり心強い。

 団長さんとかは武芸の達人だし、かなりの戦力になる。

 次々に戦力が整ってきているけど、ランドルフ伯爵の中心地を攻め落とすのは俺達になる。

 明日は一日かけて、戦闘に向けた準備を行わないと。

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