(43)生誕祭の開幕です!
「皆の衆、これより新王国歴百二十七年、デリリア領昏い森における鬼族氾濫の鎮圧記念式典を執り行う!!」
デリリア領都デリラの街中腹に在る噴水広場で、その噴水を背に大通りの民衆を見下ろしながら、領主ライクォラス自らが音頭を取る。
「此度の氾濫は発覚から僅か一月ばかりで守護者が討伐されるという快挙じゃ。その中では今後の氾濫にも生かせよう様々な知見も得られた。そして守護者が斃された後、鬼族の侵攻も収まり、今は氾濫以前の状態へと戻っておる。よって、ここに氾濫が無事鎮圧された事を宣言する!」
得られた知見の身近なところでは、昏い森での樹上の休息、黒い魔力や歪みへの防護。昏い森奥での鬼族の界異点の巣の様子。魔術師共にも検証させた回復薬の延命法。
検証も未だ成らぬ一手として、
その多くが頓着しない気前の良さを見せた、此度の英雄ディジーリアが見出したものであるのがまた面白い。
「氾濫の初めにはここが稼ぎ時と意気を高めた冒険者達も居よう。そんな冒険者を忌々しく思っていた騎士や住人も多く居た事じゃろう。しかし一月ばかりとは言え氾濫を経験したからには分かった筈じゃ。氾濫には良い事など何も無い。皆が一致団結して臨まねばならぬものだという事を」
ライクォラスが見下ろす大通りは、何処も
用意されていた魔道具も使わず、その端までも声を届かせるのは、ライクォラスが昔培った技能が為せる業だ。
「儂が嘗て王国の騎士団長じゃった頃、魔の領域に呑まれた村や町を数多く見てきた。騎士団を引退し各地を行脚してからも、多くの氾濫鎮圧の戦いに加わってきた。そのどれと比べても、この街の以前の氾濫鎮圧と比べても、此度の鎮圧は見事じゃった。前線に立って溢れる鬼族共を討ち払った冒険者達に感謝を。それを支えし街の衆に感謝を。儂の手足となって溢れし鬼族共を討滅した騎士に感謝を」
ライクォラスは嘗て王都にて騎士団長を務めていた。腐敗しきっていた王国に粛清の嵐が吹き荒れて約百年。腐った蜜の甘さばかりを伝え聞いた愚か者達が、権力に群がり始める頃合いである。
ライクォラス自身、当時から愚直に正道を歩まんとする騎士なればこそそれを疎まれ、忙殺する事で身動きが出来ない様にと王都へ押し込められようとしたのだ。尤もそんな動きに国王ガルディアラスが気付かない筈も無く、寧ろライクォラスに監察の委任状を授けた事で、ライクォラスは騎士団を離れ各地を巡る事となった。
引退した元騎士団長。其の実は王命にて逆賊を誅する国王直属の騎士。
オルドロスやフィズィタールは騎士団時代からの仲間であり、世直しの旅を共にした戦友なのである。
そんなライクォラスの一喝は、一軍に『号令』を与えるものであり、その来歴を示すその声が街に響き渡らない筈が無い。
「しかし、何と言っても此度の立役者は、守護者たる
促されて、赤毛の少女が進み出る。
その前に、丸い輪が先端に取り付けられた棒が立てられた。
『拡声』の魔道具である。
しかし、一言をと促された少女は、矯めつ眇めつ『拡声』の魔道具に見入るばかりで、民衆に届けられるのはフンフンというその鼻息ばかりである。ふ~、と息を吹き掛ける音が、ボオーと響いて届いた後に、振り向いた少女がライクォラスに話し掛ける声が届いてくる。
「す、凄いですよ! 凄く面白い魔道具です! これは誰が作ったのですか!?」
「この手の物は王都の学院じゃろうが、ええい、それより今は皆に一言伝えるのが先じゃろう!?」
漏れ聞こえる声に微妙な雰囲気が漂い始めた頃、はっと気を取り直した少女が民衆の方へと向き直った。
そして、『拡声』の魔道具へと向かって言葉を投げる。
「お、おはようございます! 今日は、待ちに待った生誕祭ですよ! 皆さん! 大いに楽しみましょう!!」
そして直ぐに、ライクォラスによって羽交い締めにされる。
ライクォラスは地声で声を届けさせられる分、内緒話に潜めているつもりの声も充分に大きく、全て『拡声』の魔道具に拾われていた。
「違うじゃろうが!? 気が早いわ! ここは守護者を下した者としての言葉じゃろう!」
「終わった事なんてどうでもいいですよ!? 今大事なのは、お祭りですよ! 私は未来に生きるのです!!」
「ええい! 大人しくしておれ!」
そうして少女を小脇に抱えたライクォラスが、今度は魔道具に向けて話し始める。
「皆の中には知っている者もおろう。ディジーリアの父親は大の冒険者嫌いでな。冒険者達に暴言を吐いて回った為に、ディジーリア自身も他の冒険者から疎まれていたようじゃ。その父親が儂の部下として小隊長をしていた男じゃ。儂の目が行き届かず、皆には不愉快な思いをさせてしまった。すまなかった。じゃが――ん、何じゃ?」
そこでライクォラスは、くるんと首を回してライクォラスをじっと見ていた少女へと目を向ける。
「それも、終わった話ですよ?」
「…………終わった、話、か?」
「父様が為出かした事なら父様が対処すればいいですし、私の姿を見ても私を見ない人なら何を言っても私を見たりしません」
「………………そうか……そうじゃな。歳を取ると話が長くなっていかんな。――ん、ん、うんん。うむ、祝いの席じゃ。儂が不調法じゃった。だがの、これだけは言わせてくれ。此度ディジーリアが持ち帰ってきたのは、守護者たる
「ごっそーさんでいいですよ?」
「これだけされて、実は碌な褒賞が出せておらん。
魔石の提供では感心した様な溜め息が漏れた程度に対して、滑降路の開放には
「
ライクォラスは一瞬視線を脇へと寄せる。そこでは準備が整ったと、大きく腕で丸を作る作業員の姿があった。
一つ頷いたライクォラスは、民衆へと向き直る。
「では、皆の衆、ご苦労じゃった。ここからは生誕祭じゃ! 春の芽生えは命の息吹、ここに新王国歴百二十七年の生誕祭を開催す――ん、何じゃ? …………うむ? おお! 良いぞ良いぞ。では、開催宣言は此度の英雄に願おうか」
未だ抱えられていた少女は、そこで初めて降ろされて、『拡声』の魔道具へと顔を寄せる。
「それでは、待ちに待った生誕祭の開催です! 皆さん、大いに楽しみましょう!! さぁ! お祭りですよっ!!!」
そこでライクォラスが端に控える者に合図を送ったが、それよりも早く少女から魔力が迸った。
大通りの上空に、巨大な大輪の花々と、幾つもの幻の鐘が描かれる。
大輪の花が弾けると、それは小さな幻の花となって、地上へと舞い落ちる。
幻の鐘が揺れると、打ち上げられた煙玉の炸裂音も掻き消して、辺りに荘厳な音色が響き渡った。
こんなドタバタであれば混乱が大きくなっても良いところだが、ディジーリアの独り舞台で慣れた民衆が先に立って受け入れている為か、混乱は広がっていない。
替わりに足踏みによる轟きと、大歓声が沸き起こっている。
生誕祭が今ここに始まったのだ。
~※~※~※~
生誕祭の朝になって、言われていた通りに冒険者協会に一度集まったら、何の前振りも無く突然街の皆の前に引き出されました。言われなくても当然の事だとか何だとか言われましたけれど、こういう事は事前に教えておいて欲しいものです。
でも、引き出されたそこに設置された魔道具。あれはとてもいい物ですよ? 棒の先端に取り付けられた丸い輪には、小さな魔石が規則的に
それに気を取られてつい興奮してしまいましたけれど、どうやら王都学院で作られた物との事でした。『儀式魔法』を使う為の方策――嵐の日に砦の上で篝火――は目処を付けましたが、王都学院への期待もまだまだ薄れてはいませんので、行きたい理由が増えてしまったのです。
それももしかしたら、領主様に言えば何とかなるかも知れませんけれど。借りが一つと言って貰ってますけれど、これなんて丁度良いのでは無いですかね? まぁ、それも学院が始まるのは冬場の農閑期でしょうから、まだまだ先の話です。
デリラの街でもそうでしたけれど、多くの学園では冬の農閑期に基礎を、それ以外の季節に応用を学ぶとの事です。王都学院となると、秋口から訪れて、予め研究室に顔を出したりする人も居るとも聞きますけれど、やっぱり始まるのは秋の終わりからなのです。
入学試験が何時なのかも、そもそも試験が有るのかもまだ確かめていませんけれど、秋の初めに旅立てば、充分冬の前に王都に辿り着くでしょう。その前に南地区に家を建てるとしても、夏の間に建てられそうです。毛虫殺しだけでなく、打ち直しや作り直しが必要な装備も多く有りますが、毛虫殺しを仕上げてしまえば、一段高みに上った私にとって、
余りのんびりはしてられませんが、そもそも私にのんびりは似合いません。時間が余ればいつでもそこに何かやる事を見付けて詰め込んでいたのですから、探さなくてもやる事が有るのは大歓迎ですよ。それでも時間が余ったならば、きっとまた何かを作りたくなるのでしょう。
そんな事を考えながら、役目が終わった雛壇を辞して、こちらに手を振っていた母様の所へと向かいます。
本当は兄様達も一緒が良かったのですけれど、それが出来るのは二日後です。
今日は屋台を回って、後で警邏に立っている兄様達に差し入れをしに行きましょうか。
……なんて思っていた事も有りました。
「リアぁ~、疲れちゃったよー……」
母様は、人混みが苦手です。
普段の大通りや市場はそうでも無いのですけれど、どんどん人が集まってきて、揉みくちゃにされるのは、どうにもへとへとになるみたいです。
私もそこは同じですけれどね。
何処の屋台でもおまけしてくれるのはいいのですけど、お代はいいよというのは却って気を遣ってしまって休まりません。何処へ行っても揉みくちゃで、中にはバシバシと痣になりそうな勢いで叩いて来る人も居て堪りません。
私一人なら逃げれば良くても、今は母様と一緒にお祭りを楽しんでいるところなのです。
結局どうにもならなくて、『隠蔽』の範囲を広げて母様と二人、大通りに組み立てられた舞台に腰掛け、時間になるのを待つ事にしたのでした。
「リアったら、凄い人気ね」
なんて母様は言いますけれど、最近まで冒険者相手には睨まれる事の方が多かったのですから何とも言えません。
そのまま、屋台で手に入れた早いお昼を食べながら、母様と色々な話をしたのです。
「私も昔は自由になりたいーって、ずーっと思ってたんだよ?」
「でも、母様は旅をしていたと聞きましたよ?」
「んー、旅をしていても、行き先は長老が決めてしまうし、ちょっと戻りたくても戻れないし、友達が出来ても直ぐ別れないといけないし、自由なんて無かったよ? でも、リアがいつか旅先でアセイモスキャラバンの皆と出会ったら、私の娘だって言えば、きっと皆良くしてくれるかな?」
友達がと言われて、ちょっと動揺してしまいます。別れが惜しい友達とか、余り思い浮かびません。もしかしたら母様より私の方が、キャラバンで放浪する一座の生活には合っているのかも知れませんとは思いますけれど。
リアンカリカ=アセイモス。それが母様の昔の名前なのでした。
お昼の時間が近付いて、三々五々舞台の周りにも人が集まってきました。
母様は、一番前の齧り付きの特等席です。
私はオルドさん達と一度打ち合わせてから、雨天用に柱だけ立てられた、天幕用の支柱の上に腰掛けます。
ここが
「待たせたな。冒険者協会支部長のオルドロスだ。
既にディジーリアの独り舞台を見た者も居れば、酒場で真相を聞き出した者も居るだろう。
ここで演じるのは真相の方だ。演じるのは不調法な冒険者共。多少の粗相は大目に見て、是非とも楽しんで貰いたい」
そんなオルドさんの言葉で始まった氾濫の鎮圧譚でしたが、すんなりとは進みませんでした。
始まりは、ドルムさんやゾイさん達が演じる、普段の冒険者の日常です。
舞台の上に幻の森犬を走らせ、薬草を生やして、討伐や採取の様子を見せました。
これには何の問題も有りません。
次は私の日常です。
支柱から降りて、『隠蔽』を緩め、幻の門を潜り抜けます。
門番さんに「いつもの所さ!」と返した時に、やっぱり何故か笑いが起きてしまいましたけれど、これも問題有りません。
その後の、毛虫退治と薬草採取も、何も問題が無かったのです。
裏で起きていたドルムさんの森犬退治と、コルリスの酒場でのどんちゃん。
ガズンさん達の出立と、私による毛虫の魔石集めからの花畑事件。
流石に花畑事件の初級冒険者達は、一番星の冒険者達が代役を務めましたけれど、ここでも問題は有りませんでした。
回復薬の話題から、錬金術屋へ行こうとして、リールアさんのお店へ入った私。その同じ店で、ドルムさんがランク五になったと喜んでいたり。
バーナさんの錬金術屋で訳が分からないと切れた私を見送ったバーナさんが、それをヒントに効率的な回復薬の作り方を見出したり。
その後の鍛冶仕事に到るまで、やっぱり問題は無かったのです。
問題が起こった切っ掛けは、きっとその鍛冶仕事の間の鬼族討伐に有りました。
花畑事件の現場確認で発覚した
それを受けてゴブリン討伐に向かう冒険者達。
その中に居た一人の一番星の冒険者が、
私はドルムさんが気を飛ばすのを知っていれば、自分でも似た様な事が出来るので、不自然とは思いませんでした。
オルドさんも同じくなのか、それとも目を離していたのか、舞台の袖でこそこそ企む一番星達を余所に、そのまま舞台は進んでしまったのです。
問題が起きたのは、私が一度新生毛虫殺しの試し斬りに出て、芋虫を討伐した後の事。再び鍛冶仕事に籠もっていた間の鬼族討伐のシーンで起きたのです。
「
「行くぜぇー!!」
「「「「おおーっ!!」」」」
雄叫びを上げた一番星達が、ばばっと上着を脱ぎ捨てました。
筋肉を見せ付けながら、ばっばっばばっとポーズを取ります。
そんな事をされては、応えない訳には行きません。
棍棒を持った幻の
ニヤリと笑った一番星達。
「「「「ふぉおおおおおお!!」」」」
気合いを入れてから、ばばっばばっと、力の籠もったポーズを取れば、私もこれは格好を付けなければいけないと、ポーズに合わせて彼等の肉体を光らせて、それに合わせて幻の
更に
これ以上無い名演だと思ったのですが、それは真実では無かったのです。
「こらぁああ!!
オルドさんの罵声が飛びます。
「えええっ!? そういうシーンじゃ無いんですかっ!?!?」
「な訳が有るかーーっ!!」
「ドルムさんなら出来ますよ!? ほら、ドルムさん、見本を見せて上げて下さい!」
その言葉にノリノリで舞台に上がったドルムさんが、気合い一閃一番星の連中を浮かせ、観衆達をもぐいっと“気”で押したものですから、後はもう止まりません。
一番星達は雄叫びを上げ、観衆達は大歓声です。
オルドさんに怒られたその後も、
「俺達の力を合わせるんだー!!」
「「「「おおーーっ!!」」」」
出て来た
すると一番星では無い冒険者まで、ぱたぱたと羽撃く様に両手を動かした後に、
「飛翔!」
と叫んで伸び上がった姿勢で片足を上げましたので、魔力で掴んで持ち上げましたら、
「流星脚!」
との言葉に合わせて回転加えた双足蹴りです。
「ええい! 自重しろーっ!!」
度々オルドさんの怒鳴り声が響きますが、それさえも笑いを助長する始末。
そんなこんなの舞台ですから、ライラ姫が出て来た時も自重なんて有りません。
七日間の鍛冶仕事で、幻とは思えない程魔力の業も進化していれば、“気”の業も同様です。
そもそも以前は“気”の業を知らなかったのですから、知った今となってはライラ姫の超反応にも対応する
例えば、私からの“気”の放射を掻き消して、ライラ姫の後ろから瑠璃色狼な剥ぎ取りナイフで“気”を当ててみるとか――
――バガンッ!!
どかんと一閃、背後に双剣を振り切ってしまったライラ姫に、魔力と気の強化込みの一撃です。
「討ち取ったり~!! 雪辱ですよー!!」
「討ち取るなーっ!!」
そんなシーンが終わってみれば、ドルムさんとの絡みの他は大人しい場面ばかりでしたが、最後のガズンさんの
オルドさんはげっそりとしていましたけれど、公演は大成功の
そしてまた、母様達と『隠蔽』込みで屋台を冷やかし、仕事中の兄様達を眺めては噴水広場で休憩して、
そして迎えた夕刻の出番。
サッと舞台の上に
ここからは、私ことディジーリアの独り舞台。
なんて意気込んでみましたが、然うは問屋が卸しません。
初めに現れたのが、おっぱい冒険者のガズンガル改めガガルです。
シーンに合わせて舞台の袖から出て来ては、
「ぐはははは! 何とも笑える
と、場面通りの台詞を吐いて、逆側の袖へと引っ込んでいきます。
次から次へと、それがお定まりの様式美とでも言うかの如く、一方の袖から現れて、また袖へと引っ込んでいく登場人物達。
協力してくれるのは有り難いですが、話を歪めるのは止めて欲しいものです。
花畑の初級冒険者に扮した一番星達。花畑最後のシーンで何で揃って下穿きを脱ごうとするのですか!?
「「「ぐおおおお!! 吾輩、毛虫などには負けぬわぁ!!」」」
……酒場の酔っ払いと同じですかね?
「うむ、よう耐えた! 今こそこの毛虫殺し大槌で打ち砕いてやるからして、大人しく潰されるが良い!!」
幻の大槌振り上げてみれば、ぎょっと目を剥いた一番星ら。慌てて下穿き掴んで逃げ出したのでございます?
……まぁ、そんな修正が利くものならばまだ構いませんが、端から話を壊しに掛かる手合いは困りものです。
「誰がむほほだぁ! 其処に直れ!!」
律儀に自分の出番を待って、乱入してきたライラ姫では有りますが、まだ話に出て来ていない、むほほを口に非難するのは如何なものかと思います。
「むむっ! 突然現れては異な事を申す。態々むほほは誰かと問うからには、其方こそがむほほではござらぬか!?」
「むほほで――」
「矢張りむほほ! むほほと叫びしからにはむほほで間違い有るまい!」
「ええい! 五月蠅い! お仕置きだーっ!!」
本当は昼間もお仕置きをしたかったのかも知れません。先手必勝と短期決戦致しましたが、その前から引き攣った様な
一体この怒りはどうした事で有りましょう?
ライラ姫が台本通りに動いてくれない事から、後ろに流している『むっほ♪ むっほ♪ むっほむほ♪』の音頭がいけないのか、最前列でお腹を抱えて笑い転げる領主様がいけないのか、それとも齧り付いている子供達が「むほほの姫様頑張れ~♪」と声援を投げ掛けるのがいけないのか。
いえ、やっぱり人間、本当の事を突かれるのが一番来るものなのでしょう。
つまり、
やっぱりライラ姫はむほほだったのです。
なんて事を考えていると、どんどんライラ姫の双剣が剣速を増して、離れた場所の小石なんか迄を弾き飛ばす様になってきました。弾かれた石が観衆の元まで飛んで、痛そうにしている人も居ます。あれだけ笑い転げていた領主様の顔が
ライラ姫はランク二です。油断をしているのでは無い限り、とてもでは無いですけれど正面からは敵わないのですよ。
「お、な、何だと!? むわーーっ!!」
まぁ、流石の姫騎士近接戦では敵わないとはしても、遠距離からなら其処は私の
そうして終わった一人ならぬ独り舞台。
これもまた、大盛況の内にその幕を下ろしたのでございました。
それから後は何事も無く、二日目には滑降路を滑り降りては並び直し。滑り降りるその場所よりも、宙を渡って上まで戻る私の前に行列が出来てしまいました。
まぁ、礼儀正しく喜んでくれるなら、序でに運ぶのに否やは有りませんけれど。
三日目になると家族四人で再びの屋台巡り。リールアさんの食堂にもお邪魔して、やっぱりリールアさんの野菜はいい物です。
それから後も数日間は生誕祭も続いていましたけれど、後は行ったり行かなかったり。
主にしていたのは鍛冶仕事の続きでしたけれど、領城に行って具体的に貰う土地の場所を話し合ったり、水の引き方を相談したり。
そんな事をしている内に日々は過ぎて、或る時貰った秘密基地前の土地を検分していた私の所へ、お婆様がやって来たのです。
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