(20)よぉ! じーさん元気そうだな!

 漸くランク五に上がった事を示す、冒険者協会の認識証をニマニマと眺めてから、男はそれを腰のポーチに仕舞い直した。

 そしてまた、暫くしたら取り出してニマニマと見詰める。

 そんな事を、幾度と無く繰り返していた。


 のんびり気楽にを身上にするその男は、森へも単身ふらりと乗り込んで、気が削がれたらフイと帰る。そんな暮らしを日々のものとしていた。

 足が向くまま気の向くままに、興味を覚えれば直ぐに道を外れる勝手気儘な探索は、パーティを組まないからこそのものだ。補う仲間が居ないのでは、小さな失敗が即危地へと繋がるのも事実であるが、そもそも男には探索に命を懸けるつもりも無い。

 冒険者……その内初級の若者ならば、生活の為に依頼を熟すのが常ではあるが、余裕が出てきた中級以上の冒険者であれば、生死の瀬戸際に命の実感を感じてより危険の中へとのめり込んでいく者達も居るかも知れない。

 しかし男は、そんな刹那的な生き方に興味が持てなかった。爺むさいと言われようが、悠々と景色でも眺めながらのんびりと過ごすのを身上としていたのだ。


 しかし、そんな安全パイを大きく取っての探索は、急激な成長を見込めないのもまた事実。それを如実に示すかの様に、ほぼ同期と言ってもいいガズンガルが疾うの昔にランク三になっているのに対して、男はずっと不動のランク六だった。


 別にそれで悔しさを感じるものでも無い。何と言っても、森に入って少しばかり行った湖の周りを、気儘に探索しているだけで、食って飲んで遊んで寝る分には充分に稼ぐ事が出来るのだから、のんびりとした其の日暮しは自分の気性に合っているのだろうと、そう男は考えていた。

 一攫千金というのに興味が無い訳では無いが、何を好き好んで身の丈を超えた危険に身を投じねばならないのかというのが男の持論だ。


 第一本当に大金を手に入れる事が出来たとして、それで遊んで暮らすのだろうか? 探索に出る事もせずに毎日遊んで暮らす?

 そんな暮らしの何処に魅力が有るのかと、考える度に男は首を捻ったものだ。

 遊んで暮らすというなら、今の気儘な探索自体が遊びとそう変わらない。街での遊びとは違って、刺激に慣れるという事も無く、日々何かが違い、何かしらの発見が有る。それだけでは無く、自らの成長すらそこには在るのだ。

 それを捨てて、享楽に身を委ねるのは、無駄なだけでは無く、自身を腐らせる毒としか男には思えなかった。


 ガズンガルに言わせれば、散歩をする様に坂道を登るか、より高みからの景色を眺める為に駆け足で登るかの違いだろうとの事だが、言い得て妙だと男は思っている。

 なるほど、足下の小さな花や、木々を渡るリス達を眺めるのが好きなら、のんびりとした道行きも間違った行動指針では無い訳だ。


 ともあれ、散歩歩きでも前に進む事には違いが無かった様だと、男はまた認識証を取り出しては口元を緩ませる。

 幾ら平穏が一番とうそぶいても、実のところ何時までも同じ湖の畔では、そろそろ飽いてきていたのもまた事実だ。いい加減違う景色を見に行ってもいい頃と思いながらも、切っ掛けを掴めずにいた昨今。そこへ来てのランクの上昇は、謂わば散歩道が広がったという神々からのお墨付きに外ならない。


 ならば祝い事は豪勢に行こうかとも思い、古い仲間に連絡を付けようと男は考えたが、生憎の事ながらガズンガルの野郎は今の仲間と森の奥に入ったばかりらしく、そのお堅い弟のリリンガルは昼間の誘いに乗るとも思えない。ファルアンセスに至っては、今は文官なんぞをしている始末。


「……まぁ、ファルアンはいねーが、おばさん所でいいかね?」


 気儘はいいが、つるむ仲間が居ないというのは、どうにも感傷的になってしまってむず痒くて敵わんなと思いながら、男は商店街の裏路地へと足を向けたのだった。



「おや? ドル坊じゃないかね! あんた、ず~っとご無沙汰にして! 元気にやってるのかい!?」


 扉を開けて入った其処で、忙しく動き回っていた恰幅のいい女店主が、威勢良く男に声を掛ける。

 まぁ、何となくファルアンセスと袂を分かつ様になってから、足が遠退とおのいていたのは確かだと男は苦笑した。


「まー、ぼちぼちだな。それより今日は、お祝い盛りのご馳走で一つ頼むわ」


 気の無い様子を見せながら答えはしても、それをおばさんが放っておかないことも男は良く知っていた。

 案の定、食い付き気味に問い掛けてくるのに、男は緩む口元を引き締める。


「何だい何だい!? どんないい事が有ったんだい!?」


 だが、おばさんの左手は、恋人を示す左手の親指を執拗に立てて示してくる。おばさんにとって「いい事」は「良い人」しか無いのだろうかと男は苦笑した。


「いやいや、やっとランクが五に上がったんだよ!」


 そう言って男が認識証を見せると、おばさんはきょとんとした表情を返した。


「おやま? ……でも、ガルガルの上の方はランク三じゃなかったかね? あんた、まだランク六だったのかい!?」


 あまりと言えばあんまりな言葉に、男はがくりと力が抜けるのを感じたが、身近にランク三が居る知り合いの反応ならこんなものなのかも知れないと思い直す。


「よせやい。おれは無理せず程々にでいいんだよ! ランク五って言えば、独りで大鬼オーガを倒せるって目安なんだから、相当なんだぜ!?」

「おやまあ! ……そう言えば、うちのセスもランクは七とか言っていたねぇ。ん! そんじゃあ、腕に縒りを掛けてご馳走を振る舞うとしようかねぇ! 美味しい野菜に期待しときな!」


 そう言って頷くと、おばさんは男の背中をバンバンと叩いて、厨房へと姿を消した。


 そういう事だと男は思う。

 ランク五というのは、大型の魔物にも対応出来るというお墨付きなのだ。まぁ、大型と言ってもピンからキリまで有るが、大鬼オーガならば問題なく対処出来るだろうし、黒大鬼くろオーガも腕次第で対応出来るだろう。


 パーティを組んだ場合は少し違って、ソロの推奨ランクの二つ落ちでも何とかなるというところだろうか。罠や連携によっては三つ落ちでもいけるかも知れない。つまり、ランク五推奨の大鬼オーガに対して、並の魔物相手のランク六や、魔物ではない動物相手のランク七、旅をするのに問題ない程度のランク八でも対応出来るという事だ。

 仮令たとえ数の力によるものだろうと討伐の経験には変わりない。そんな経験の積み重ねと祝福ギフトの力も相俟って、ソロよりもパーティによる格上殺しの方が、ランクの上がりは早くなる。


 だが、男が為したのは、謂わば技の力による成り上がりだ。これに何度か大物の討伐という経験が加われば、燻っていたランクの上がりも加速するに違い無い。


「ま、俺はのんびり行くがな。…………それにしても、武具次第でランクも変わりそうだが、その辺りはどうなってんのかね?」


 少なくとも使い慣れた武具無しで大鬼オーガとやり合うのは御免だなと男が思った所に、おばさんが大皿を持ってやって来る。


「ほら! ご馳走の前菜だよ! 味わって食べな!」

「何言ってんだ。前菜も何も、最後まで全部野菜じゃねーか」

「あっはっは! そうさね! この後、中菜後菜と続くからね!」


 勝手な言葉を作り出したおばさんに苦笑しながら、男はやって来た大皿を眺めた。

 大皿の上には、くるりと巻いた色取り取りの菜っ葉が二十近く並んでいる。


「これだけで腹が膨れそうだな……」


 二三人前はありそうな前菜を前に、男は少し逡巡を見せたものの、結局はその一つをフォークで刺して口へ運ぶ。

 菜っ葉の中には煮込み野菜が巻かれていた。熱い煮込み野菜と冷たくしゃきしゃきした菜っ葉の食感に、男の表情がほくりと緩む。


「旨い……」


 色の違う菜っ葉を試せば、そちらは中身が豆のサラダで巻いているのは湯通ししてしんなりとした菜っ葉だ。ドレッシングの味が利いていて、これも旨い。

 気が付けば、あれだけ有った菜っ葉が、すっかり皿の上から消えていた。


「あっはっは! もっと落ち着いて食いなしね! 野菜は逃げて行かないよ!」

「いやいや、俺にとってはご馳走なんだから、もう我慢出来ねえ!」

「あっはっはっはっは!」


 次の深皿は、トロリとクリーム状になるまで潰した豆と野菜のスープだ。舌だけでは無く、喉や落ちた腹の中にまで旨味がビンビンに染み渡ってくる。


「五臓六腑に、って奴だな」


 流石に一息で飲み干してしまえば、次の皿が来るまでは間が空いてしまう。

 グッと伸びをして頭を軽く振ると、店の中の声が漸く男の耳に入ってきた。

 その中に、一つ気を惹く声が有り、男はそちらへと目を向ける。


「ディジーちゃん、こんちゃー」

「よっ! 頑張ってるらしいじゃねーか」


 店の客やファルアンセスの弟らに声を掛けられているのは、良く見知った黒いワンピースの少女だった。


「よー、じーさん、奇遇だなぁ!」


 軽く手を上げて声を掛けると、すかさず「じーさん言うな!」といらえがある。

 くつくつと笑っていると、いつの間にか隣に居たおばさんに拳骨で頭を叩かれた。


「あんた、あんな可愛い子にお爺さんは無いんじゃないかい!」

いてっ。言い出しっ屁はガズンガルの野郎だぜ? 街の外の畦道でごそごそやってると思えば、クリウの葉を擂り潰して果実水に溶いていたんだと。で、『ふへへ……この良さが分からんとは、まだまだじゃのう』とか言い出したってんだから、じーさんで間違いねーわな」

「…………ったく、あの子はもう!」

「子供扱いされるより嬉しそうにしているから、いいんじゃないのかねぇ?」


 そう言ってくつくつとまた笑うと、おばさんは皿を置いて呆れた様に去って行った。


 さて、運ばれてきた皿の中には、肉の様な食感の瓜と蕪を何枚も重ねて焼いたステーキだ。野菜なのにステーキとはこれ如何にと思いながらも、しっかりと噛み応えのある塊にかぶり付いた時に、口の中に溢れる肉汁野菜汁が堪らない。

 基本的に森の探索での食料は、狩った獲物の肉となることが多いので、肉はもう食い飽きている。そこに来ての旨い野菜の食べ尽くしなのだから、これはもう堪らない。


「くぅ~~、うめえ!」


 男は、大量のお祝い盛りのご馳走を、心行くまで堪能するのだった。



 次の日、適当に屋台で朝飯を買い込みながら、ぶらりと領館への坂を登り、適当な南門を選んで男は街を出る。

 なんぞ面白い物でも無いかと思いながらも、森を左手にけば、何事も無く豊穣の森の入り口に辿り着く。

 木の実を毟りながら通い慣れた森の道を歩けば、昼過ぎには湖の畔だ。

 探索初日の常で、適当な石をひっくり返してざざ虫を集め、糸の付いた針に刺して湖に投げ込めば釣りの時間だ。

 何と言っても初日こそのんびり過ごすに限ると、糸を片手に男は腰を下ろした。


 釣った魚にも言うことは無いが、その魚を餌にして釣る大魚に怪魚、小型の水竜、両生の化け物。そのいずれもが実に旨い。焼いて塩を振るだけでもいけるが、来る途中にいできた木の実や果実を潰して煮詰めたソースで和えれば、これもまたすこぶる旨い。余った魚を適当に焚き火に当てて作る干物も、探索の合間の口寂しさを紛らわせてくれるのがいい。匂いはするが、それが逆に獲物を呼び寄せてくれるため、面倒も無ければ退屈も無い。

 もう大分と釣り上げて、少しは警戒しても良さ気ながら、いつもの如く食い意地の張った湖の魚共で、その日もまた大漁だ。

 干物作りを済ませてしまえば、明日からの探索にも大いに期待が持てそうだと、男は焚き火の周りに串に刺した魚を並べて、口元だけで笑みを浮かべる。


 二日目には干物をぶら下げながら湖の西へと足を伸ばす。

 湖の周りは冒険者の数が多い。とは言っても湖が水場には違い無いから、網の隙間を潜り抜ける様に、魔物は湖へとやって来る。

 森に棲む生き物は、森犬デリガウル森狼ウルマ大森狼クォウルマ大森蜘蛛デリチチュル塊乱蜘蛛チュルキス歪犬ガルク歪豚オーク歪蚯蚓ワーム小鬼ゴブリン大鬼オーガ黒大鬼くろオーガ水魔スライム魔霧フォグ妖精シー……


 数え上げようとして、男は首を振った。昏い森とは違って、豊穣の森に棲む生き物はとても数え切れない。

 出会う生き物の半分近くが魔物でも無い動物であり、さらに話をややこしくしているのが、魔物の中にも人族に友好的な妖精シーなどといった闇族もこの森に棲息していることだ。歪化した生き物の中にも、地狗コボルトの様な安定した珍種が存在するから始末に負えない。

 分かり易く敵対する鬼族を除けば、結局の所、討伐するも放置するも、冒険者それぞれの判断に任される事になる。

 しかし、どうにも最近は森の生き物は全て討伐して問題無いと考えている初級冒険者が増えている様に思えて、男は苦々しく頭を掻いた。


「黄蜂なんかに手を出すのは御法度ってーのは、昏い森でも散々学ぶ筈なんだがなー……」


 黄蜂は花畑の象徴の様にもなっている分、分かり易いが、より生き物の多い豊穣の森での手出し厳禁な生き物は、まさしく命に関わるため、慎重さも警戒心もあだや疎かに出来るものではない。黄蜂の様に可愛らしいものは、この森には少ないのだ。

 集団でたかってくる虫系もやばいが、森狼なんてのは森の王者と言える強さにも拘わらず、森の本の浅い所にも良く出没する。

 それはそうだろう。界異点から離れれば力が削がれる魔物達と違って、あれらは力が有っても動物なのだから。動物たちに森の深みが影響する事は殆ど無い。

 そんな森狼は、黄蜂達と同じで、上手く付き合えさえすれば、森で窮地に陥っていた所を助けられたなんていう話も良く聞く、尊き隣人ではあるのだが。男自身も実際にそんな場面に何度か行き会っている。

 男が、冒険者でいることの幸運を感じるのはそういう時だ。街男をしていれば、そんな話にはとても出会えない筈なのだから。


 そんな事を思いながら、朝飯代わりの昨日の釣果をおもむろに囓りつつ、湖の見える湖畔を西へと向かってぐるりと歩く。

 半分歩けば今度は少し森に入って、採取もしながら反対回りにぐるりと歩く。

 そしてまた戻って来たなら、もう少し森に入った所をぐるりと回る。


 そんな事をしていると、時折森犬なんかが飛び出してくる。

 デリエイラの森を初めとする魔境を探索する冒険者は、いつの間にか自然と界異点からの歪みを遣り過ごすすべが身に付くものだが、森犬は馬鹿で祝福ギフトも鼻で嗤う程しか無いのに、防護も無いままふらふら森の奥へ入り込んでしまう傍迷惑な獣だ。

 何が迷惑かと言えば、つまりは屡々しばしば歪化しくさるのだ。

 実のところ、歪化する獣の大半は、森犬に代表される犬共では無いかとも言われている。

 昏い森で歪化した森犬は歪豚オークに。豊穣の森で歪化した森犬は歪犬ガルクに。という具合だ。まぁ、実際のところは分からないが、それで行くなら妖精シー共の界異点近くで歪化した森犬が、地狗コボルトにでもなるのだろう。

 尤も、どう見ても犬では無い歪族も多い事から、全ての歪族が森犬の成れの果てとは言わないが、鬼族以外に生き物の殆どいない昏い森の奥に歪豚オーク共が巣食っている事を考えると、それはもう馬鹿な森犬が入り込んだとしか思えないのもまた事実だ。

 このデリエイラの森で、そんな馬鹿な事を為出かしそうな生き物は、森犬を置いて他には居ない。


 つまりは、森犬は疑う可くもない討伐対象であるという事だ。

 犬肉は硬く筋張っているが、幸い豊穣の森の森犬には臭みは無い。暫くタレに漬けてからいぶしてやれば味わい深い摘みになるし、毛皮もそこそこいい値段で売れる。

 喩えるならば目の前に現れた森犬は、金子を背負ったおやつがやって来た様なものだ。全くよだれが垂れて敵わんぜと男は嗤った。


 男の背中にはたすき掛けの様に、大剣と長柄のハンマーが背負われている。大剣にしても、大男に属する男の身の丈と同じ程。特徴と言えば、持ち手の部分が剣の三分の一とかなり長い。ハンマーも同じ程の長さに、先端に付いた鎚の部分は、片側はゴツゴツと凹凸のある無骨な形状に、反対側は鳥の嘴の様なピック状になっていた。


「ギャウ! ワ……」


 そのハンマーを無造作に引き抜いて振り下ろしただけに見えて、しっかりそのピックの部分が飛び掛かってきた森犬の延髄を打ち抜いている。

 僅かな身動ぎや視線の動きで、男が思う場所に誘導を掛けているのだが、はたで見ていると獲物自ら狩られに来る様にしか見えないそうだ。

 それで付いた綽名あだな奇術師マジシャン。他にも色々と言われていたが、一番恥ずかしくない名前でそれとは、中々に儘ならない。

 しかし神々も言い得て妙だと思ったのかは知らないが、この前確かめた技能に『奇術』なんて物が追加されていたのに気が付いた時は、男も暫し呆然と認識証を眺める事しか出来なかった。


「これは、フェイントを利用した技でしか無いんだがなぁ……」


 振り下ろしたハンマーのを逆手に握り直しながら、クルリと捻った体に巻き込む様に引き寄せ、ブンと振り回した先でもう一匹の森犬の頸椎が砕かれる。

 その勢いのままに再び振り上げ振り下ろした今度は凸凹の鎚側が、最後の森犬の頭を砕く。


「ま……確かにやり易くはなったかも知れんがな……」


 犬の胴体に頭を付けたまま、適当に首を切って血抜きをすれば、殆ど傷の無い上物の森犬素材が三匹分だ。


 尤も、数日前に森に来た時に、数十匹の群に連続して行き当たった事を考えれば、何程の事でも無い。あの時には、歪犬ガルクが率いる群が幾つか有った為に偉い目に遭ったと、男は思い出しの呆れた笑いを口元に浮かべた。

 森犬デリガウルは頭が悪いから、歪犬ガルクを上位種だとでも思うのか、群れのリーダーに祭り上げてほいほいと従ってしまうのだからたちが悪い。歪犬ガルク歪犬ガルクで森犬だった時の意識が僅かにでも残っているのか、祭り上げられれば祭り上げられたでしっかりボスに納まってしまうのだから、これもまたたちが悪い。

 歪豚オークの様に理性を無くして食欲に走ればまだましなものを、下手に連携してくるのは、これまた面倒でならなかった。


 一時二時間以上もハンマーを振り続けて、よく体力がったなと男もその時は思ったが、それも冒険者協会で識別して貰って理由が知れた。

 ランク五に上がったと同時に、『奇術』の他にも序でとばかりに手に入れた、百匹連続一撃必殺記念の祝福ギフト技能『殺陣』。あるいはそんな技能を手に入れたから、ランク五に上がったのかも知れないが、これがまた壊れた性能で、一撃必殺が続く限り疲れず寧ろ力が湧いてくる、そんな技能だ。

 別にスリルを求めている訳では無いが、この所為で、何とも探索が生温くなってしまったと、まだ技能を確認してから僅かな接敵の中で、男は小さく溜め息を吐く。


「うーむ……」


 場所を変えながら、主に森犬を狩りながら森を行く。先日に続いて、どうも森犬の数が多い。

 普段とは違う複数匹の群に行き当たり、難儀していた初級者達も序でに救助していく。


「ドルムさん、ありがとうございます!」

「……見たか? あれが『眠れる巨人』だぜ?」

「すげぇ……何であれが当たるんだ」


 付いて回る賞賛がこそばゆいが、色々と誤解が有るのが悩み所だ。

 ゆったりとした動きは別に力を抑えている訳では無いから、力を解放すれば数段強くなるなんてのは只の与太話に過ぎない。にも拘わらず、何度訂正してもいつの間にか現れるのが、恥ずかしい綽名あだなの厄介なところだろうか。


 無論、ふところに入り込まれた時の為に、短剣の類も装備しているが、そちらはそれほど巧くも無い。


「ま、パーティ組んで何とかやってるランク八やそこらから見れば、充分雲の上に見えるのかも知れんがね」


 ソロ探索の常で、誰にとも無く溢しながら、拠点としている湖の畔へ森犬共の亡骸を運び、血抜きがてら木の枝へと吊していく。

 昼は犬肉を少し焼いて、煮詰めた果物の汁と絡めたのを、パムの木の実に挟んで食べる。パムの木の実はパンに似た食感で、湖の近くの食事では最も手頃だ。甘辛い犬肉と一緒に齧り付けば、味は兎も角腹は膨れる。


「う~む…………」


 唸ってから、これではいけないと男は頭を振った。

 散歩の延長でくつろぎながらの探索ならいいだろう。落ち着いて冷静に対応出来る心の余裕は、探索にもいい影響を与えるに違い無い。

 しかし、緊張感を無くしてだれてしまうのは戴けない。余所事に気を取られて考え込んでしまうなんていうのは、余裕では無く愚行でしか無い。


 それもこれも、探索がぬるく成り過ぎた事が原因だ。

 単に技能に目覚めたというだけでは無く、先日あった森犬の群の討伐で、正しく技量を磨いていたところに経験というものが当て嵌ったのかも知れない。今となっては森犬程度は幾ら出て来ても欠伸混じりで対応出来る事が、この半日で身に沁みて理解出来てしまった。

 適度な緊張が無いと、探索はだれる。適当に得物を振り回しても一掃出来るなら、腕も腐る。


「奥を目指すしか、無いという事か……」


 今回は、ランク五の恩寵を確かめるだけのつもりだったから、いつもと同じ森の探索で済ましていたが、それではもう腐るばかりだと理解して、男は口元に困った様な苦笑を浮かべた。

 ランクという物が界異点からの侵略者と戦う為の、神々からの祝福と理解してはいたが、どうにもこれは容赦が無い。

 二日目の午前中に獲物を狩って、午後には解体を済ませて次の日の朝に街へ帰る。森の奥へと進むなら、ここ暫くのそんな生活ペースも革めなければならないだろう。


「面倒な事だな」


 どこか呆れた苦笑いを浮かべながら、男は森犬達の皮を剥ぎ進めるのだった。


 三日目の早朝、持ちきれない森犬の肉を、湖の周りの冒険者達に分け与えていたところで騒ぎがあった。


「うお! コイツ強いぞ!」

「抜かれるなーっ!」

「ジーーークーー!! 避けろーー!!」


 森の中での喧噪は、森狼に手を出した初級冒険者達のものだった。


「おいおい……何とち狂ってんだ? 森狼を相手にするには早過ぎんぞ?」


 大剣の巨大な刃を盾代わりに差し入れたのは、ジークと呼ばれた男の首元に噛み付こうとしていた森狼の鼻の先。刃の腹を壁代わりに飛び離れた森狼を、しっしと手で追い遣ると、不満げな様子を見せながらも森狼はその場を離れていく。


「俺達の獲物だぞおっさん!?」

「何してくれんだ!!」


 助けたばかりだというのに、随分と威勢がいい。


「いや、お前ら森狼に手を出してどうすんよ?」


 いきり立つ若者ばかもの達から男が聞き出してみれば、森犬退治で自信を付けた勢いで、森狼の討伐もいけると踏んだという事だった。

 しかし、森狼は動物故に、討伐したところで魔石を持っているかは運頼みだ。また、敏捷が並外れていて、パーティの利点が殆ど生きず、個人でのランクが六以上ないと、攻撃を凌ぐ事も儘ならない。そんな状態で討伐出来たとしても、ずたずたに引き裂いた毛皮には買値なんて付くものでは無い。

 ただでさえ、仲良くなれば益が多い獣に対し、迂闊に手を出して怒らせるのは自ら死にに行く様なものだぞという事を滔々と語れば、無謀な若者達も理解したのか、しょんぼりと肩を落として項垂れていく。


「ま、最近も余所から来た馬鹿な傭兵団が、大森狼を相手にして殆ど全滅したってんだから気を付けろよ。三十人以上いたのが生き残りは二人だけ、そんでも何とか仕留めた大森狼も、ばらす時間も無く魔石だけ回収してみれば、無惨に割れてしまっていて二束三文で買い叩かれたってんだから、笑い話の教訓話としても割に合わんわな。序でに言うなら、森狼共は仲間意識も強いから、二人だけでも逃げ帰れたのは上等ってもんだ。お前らも気を付けな」


 背嚢に肉と僅かに取れた魔石を詰め、巻いて束ねた皮を背中に引っ掛ける。そうしてみれば、背中の得物を抜けなくなるので、帰り道では大剣は腕の中だ。鞘に入れた大剣で軽く肩を叩きながら、男は街へと帰る道を行く。

 昏い森の横を歩く頃には、いつもと違い随分と騒がしい様子だったが、この後で面倒な報告が有ると思えば首を突っ込む気にもなれずに男は手近な南門を潜り抜けた。


「うぃ~~、親父ぃ、帰ったぜぇ?」

「こらザック。ここでは支部長と言わぬか」

「親父は親父じゃねーか。ほい。今日の稼ぎな」

「ったく、いつまで経っても糞ガキめ!」


 そんなことを言いながらも手早く今回の稼ぎを検分する冒険者協会の支部長は、孤児院の院長も兼任しているから、男にとっては『俺達の親父さん』で間違いない。


「そんな事より、学園の運営って協会だっけか?」

「ん? いや、学園は国の管理だから領城だな。何か有ったか?」

「はぁ~~……。嘱託の冒険者が、森の生き物は皆討伐してもいいものだとか教えているらしいわ。今日も勘違いして森狼に手を出していた奴らがいて、救助がてらに聞いたけどよ」


 その後は、……ちょっとしたお祭りになった。

 暫く状況を掴めていなかった支部長が、理解したと同時に発した怒声から、台帳を捲っての嘱託を受けた冒険者の特定と、そこからは協会内にいた初級冒険者達への聞き取り含めて偉い騒ぎになった。


「親父ぃ! 俺は文官やってる古馴染にも当たってみるから、そっちはよろしくな!」

「おう! 情報助かった。今は昏い森で小鬼ゴブリン共が大発生しているから、気が向いたら手伝ってくれや!」


 逃げ出す口実通りに、ファルアンセスの家でもあるいつもの店に着いたのがお昼前。

 まずは腹を満たすのが先と、今日は普通に飯を頼む。お祝い盛りで無くても、おばさんの所の飯は充分に旨い。

 そうする内にも、いつかと同じく見知った顔が入ってくる。今日は、いつもとは違って随分な大人数だ。


「おや、ディジーちゃんいらっしゃい! 今日の野菜もいい出来だよ! たんと食べていきな!」

「おお! ディジーちゃん久しぶりだねぇ」


 至る所から掛けられる声に合わせて、男も挨拶を飛ばした。


「じーさん、また合ったな! 森が騒がしい様だが無事みたいだな!」


 透かさず「じーさん言うな!」と返る声に笑い声を立てながら、男は残る野菜を掻き込んだ。

 ディジーリアという少女は、珍しいソロ仲間となりそうで、男はそれなりに注目していた。見た目と実力が懸け離れている様に見える事も、それに本人が気が付いていなさそうなところも面白い。中々先行きの楽しみな初級冒険者だった。


 結局、ファルアンセスとは出会うこと無く、おばさんに伝言を頼んで帰る事となった。

 湖の先の情報を調べながら、のんびりと過ごすつもりだった数日も、親父さんの手伝いに駆り出されて潰れる事となった。

 全く、講師なぞ柄では無いのに、見栄を張って大風呂敷を広げた馬鹿には勘弁して欲しいところだと男が愚痴を溢す姿が、何度か酒場で見受けられた。


 しかし、間違いを正すだけの臨時講師なんていうのは数日ばかりで済む話だ。御役御免となったが直ぐに、男は背中に装備を担いで、森の奥へと逃げ出した。

 いや、逃げ出したというのは風聞が悪い。冒険者の仕事は冒険なのだから、冒険者として冒険に出たから何の問題も無いのだと、男は独り言い訳をしながら湖の奥へと向かった。


 湖の奥には、更なる奥地から流れ込む、幾つかの流れが続いている。その中の一つを適当に遡れば、大型種の棲む僅かばかりの平原が在る。男は予定通り、そこで一日を観察に費やす事とした。

 『奇術』と言われた技術も、元はと言えばフェイントと先読み。つまり、相手の動きが分からなければ、思った様な動きを誘う事は出来ない。

 尤も、技能として『奇術』を得た今となっては、強引に動きを導く事も有るのかも知れないが、それはそれで面白くないと、男は木の陰に身を隠した。


 気配を操る男ならでは、隠形や隠蔽といった技術もそれなりには身に着けている。

 一日観察して飯は予め用意した森犬の乾肉。休む場所は木の枝の上。


「のんびり程々にでいいんだがなぁ……」


 しかし、適度な緊張感は悪くないと、男は諦めた様に苦笑した。


 夜が明けて、目を付けたのはずんぐりとした大熊猪だ。大森狼と同じ様に、熊猪が祝福により大型化した獣であるから、熊猪と行動が変わりない。それでいて、敏捷も飛び抜けて素早い訳では無いから充分に対応出来る。四つ足の肩の高さが男の頭と同じというところが心配ではあるが、それは言っても始まらない。

 しかし、何と言っても一番の理由としては、大熊猪は王宮からも買い付けに人が来る、高級食材という事だ。一日乾肉で過ごした成果としては、充分にお釣りが来る。


 他の獣や魔物が近くに居ない事を確かめたならば、握り拳程の石をその鼻面に思い切り投げ付ける。

 パーティで来ていたなら、獣の側からしてももしかしたらこの時点で逃げ出す選択も有ったのかも知れないが、男を独りと見て甘く見たのか、激昂した大熊猪は男へと向かって突進を開始する。

 男は長柄のハンマーを、円を描く様に揺らめかせ、しかし大熊猪に体当たりされる直前でひょいと避ける。


 ところで、熊猪というものは、獲物に避けられたとしても、そのまま突進して壁や木に突撃する様な生き物なのだろうか?

 いや、世の中に吹聴されている事とは違い、実際の熊猪は、避けられれば強靱な前脚で急制動を行い、直角に近い方向転換で何処までも追い掛けてくる獰猛な獣なのだ。

 だからこそ、猟師からはその挙動から、雷獣とも呼ばれ恐れられるのである。


 そんな熊猪と等しい大熊猪も、咄嗟にその両の前脚で、その巨体を押し留めた。

 しかし、そんな事は先刻お見通しだとすればどうであろう。

 ゆらゆら揺らしていただけに見えたハンマーのピックに、ひょいと避けた勢いが加われば、突っ張った左前脚の関節を見計らった角度で勢い良く突き砕き、大熊猪はそのまま斜め前へと翻筋斗もんどり打って転がっていく。

 ブモウと叫び声を上げながら、起き上がろうとして力が込められた右後脚を同じくピックで破壊すれば、大熊猪に出来ることはもう有りはしない。

 得物を大剣に持ち替えた男がその首元を切り裂くと、やがて大熊猪はゆっくりとその動きを止めた。


「……案外、何とかなりそうだな」


 寧ろ、素早い小型の生き物よりも相性が良さそうだと思いながら、男は垂れそうになった涎を啜り上げた。


 そんなこんなで男が湖まで戻ってくると、直ぐ様周りに冒険者達が集まってきた。

 斃した大熊猪は、即行で組んだ筏でもって、川に流して運んできた。男が川岸で手綱代わりのロープを手繰り、大熊猪は血抜きがてら頭を川に晒しながら。


「おいおい、湖が騒がしいと思ったら、あんたの仕業か!」

「でけぇな。独りでか?」

「眠れる巨人が起きる時が来たってか!?」


 囃す言葉に手を振りつつ、見知ったポーターに男は声を掛ける。

 ポーターとは、自ら討伐や採取は行わず、荷運びの駄賃で生活している冒険者達だ。尤も、湖での依頼待ちの間に或る程度は討伐や採取をする事もあれば、逆にその日の成果が少なかった冒険者がポーターをする事もある。

 当然、中には獲物をちょろまかす輩も居るだろうが、そういう奴らが大物の運搬を任される事は無いだろう。

 声を掛けたのは、ガズンガル達が良く使っている『スカラタ運送』。スカーチル、ラターチャの兄弟が営む、信用の置けるポーターだ。


「おおう! 旦那! こりゃすげぇ。首を一突きたぁ、恐れ入るね!」

「相性が良かったな。他ではこうはいかんよ」


 スカラタ兄弟と談笑しながら大熊猪を捌き、所有権を示す為にも握り拳大の魔石は男が確保する。更に肝臓の半分と、背中と腰の肉をごっそり確保すると、スカラタ兄弟から情けなそうに懇願された。


「旦那ぁ、そこが一番高く売れるんでやんすよ!?」

「ええい、旨い肉を前にけち臭いことを言うな。お前らも出るのは朝なんだろうから一緒に食っていけや」


 熟成させた方が肉は旨いとも言うが、失敗する事や、それなりの歯応えを求めれば、やはり新鮮な肉をその場で食うのが旨いと男は考える。

 初の大物祝いだと、大熊猪の肉の一塊は湖にいた冒険者達に放出し、その日は焼肉パーティとなった。

 渋っていたスカラタ兄弟も、残った内臓全てと、それ以外は二割をスカラタ兄弟の取り分とすると、ほくほく顔で肉をつついているのだから現金なものだと男は笑う。

 香草と一緒に炙った肉は、実に旨かった。


 次の日、男はもう一働きする予定だとスカラタ兄弟を見送り、今度は昏い森方面の森の奥を目指した。

 狙うは大鬼オーガ。褐色の硬質な肌を持つ、男の倍は背丈がある化け物だ。

 もしも、木々の高さに迫る黒大鬼が出たならば逃げる。そう決めて、森を行く内にいるわいるわ小鬼も大鬼もうじゃうじゃいる。

 昏い森から出ようとしないだけに湖に危険が迫る事は無いだろうが、なるほど大発生とはこういうものかと男は思った。


 行き成りソロで群れを相手にするのは危険が過ぎる。

 大熊猪と同じく、投石で釣り出したら、巧いこと一匹だけが身を隠した茂みへと近寄ってきた。

 振り回したハンマーで足首を砕く。

 倒れ込んだ首元を大剣で薙ぐ。

 胸元に大剣を突き入れ、腕を突っ込み魔石を引き摺り出せば退散だ。

 何というか、今回は運が良かったと思っておこうと男は考える。運良く差し一対一で事に当たれたのは非常に大きい。


「まぁ、のんびり程々に、だなぁ」


 大物の荷物はスカラタ兄弟に運ばせたから、何とも落ち着かない背中ではあるが、今回はもう引き上げようと、男は湖へ、そして街へと向かって足を進めた。


「ん? 何だありゃ?」


 丁度湖と豊穣の森の入り口までの半分程が過ぎた辺りでの事だ。

 昼を取らずに帰路に就いた為、残った森犬の乾肉を囓りながらではあるが、日は既に大分と傾いている。直に夕闇が訪れるだろう時間だ。

 そんな中、踏み均された道の向こうで視界の隅をちらちら過ぎるのは、既に見慣れた黒いワンピースの少女の姿だ。透明感のある赤髪はしっかり被った帽子に隠されているが、あんななりをした冒険者は他には居ない。

 道の右の木の幹から顔を覗かせて辺りを見渡しふるふると震えたかと思うと、次は道の左の木の枝から首を出す。そしてまた右の木から……。そんな風にして、少しずつ道を進んでくる。


 道を渡っている様子が見えないのは、『隠蔽』の仕業だろう。おそらく男の他に気が付いた素振りを見せる者が居ないのは、顔を覗かせている時にも或る程度の『隠蔽』が掛かっているに違い無い。

 そんな少女が目と鼻の先まで来て、男は右手を挙げて声を掛けた。


「よぉ! じーさん元気そうだな!」


 目の前の景色を滲ませる様にして、いつの間にか目の前にいた少女が、うずうずした気持ちが溢れて堪らないという様にふるふると体を揺すってから、


「じーさん言うな!」


 と、返事をする。


「悪い悪い。じーさん森では気を付けろよ!」


 そう笑って別れるつもりの男だったが、少女が胸の前で構えた、両手の袖から覗く色を見て顔色を変えた。


「おいおい、じーさん! こりゃ何だ!?」


 袖から覗いた肌の色は、青黒く斑に変色していて、実に労しい有様だった。

 しかし、咄嗟に腕を掴んでしまったが、少女は特に痛がる様子も見せずにきょとんとし、自ら変色した袖口の中を覗いてから、にまにまと表情を緩ませる。


「ふっふっふ、これは名誉の負傷なのですよ! 脳筋との戦いを凌いだ証なのですよ!」

「は? 脳筋? 何の事だ?」

「ふはははは! 今こそ脳筋の魔の手を振り切って、冒険の旅へ出る時なのです!!」

「いや! こら! そんな怪我で探索なんてすんじゃねぇよ! 大人しく休まねぇか!」

「駄目ですほとぼりが冷めるまで街へは帰れないのです! 冒険なのです冒険なのですよ!」

「おいこら待て! もう日も沈むぞ! 待て! 待ちやがれ!!」


 何だろう。

 今回の探索は、まだ終わりそうに無い。

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