第81話
「イリア、随分と私のペットと仲良くなったな」
「そ、それは.......はい。そうですね。これから話す機会も多いでしょうから、仲良くなった方がよいかと思いまして」
「ふむ、なるほどなぁ」
グレアはそう言ってイリアの方へとジトっとした目を向けた。イリアは居心地が悪そうな顔をして、視線を逸らした。
今がどんな状況かと言うと、イリア、ゾーイはフリーハグをし終えて戻ったが部屋に行ってからもイリアと抱きしめ合っており、その現場をグレアに見られてこうなっている。
「ゾーイ、お前はイリアとハグ出来て嬉しかったのか?」
「え、えぇーっと.......」
グレアの鋭い視線が今度はゾーイへと向く。
しどろもどろになりながらも、グレアに対して誤魔化しは効かないだろうと思い正直に思っていたことを話した。
「え、っと。嬉しかったです。イリアさんが僕と仲良くしようとしてくれているんだなって思えて」
「そうか。良く分かった」
グレアは厳しい視線を緩めずに、イリアへと視線を向ける。
「イリア、まだ仕事が残っていたな?」
「は、はい。今すぐに」
逃げるようにしてイリアは部屋から退室していき、グレアとゾーイの二人だけになる。グレアは相変わらず厳しい視線をゾーイに向けたまま、口を開いた。
「ゾーイ」
「は、はい」
「ペットはご主人様と一番仲良くすべきだよな?ご主人様の従者や他の女ではなく」
「そ、そうですね」
「じゃあ、するべきことがあるんじゃないか?」
そう言って頬を少しだけ赤く染めてそっぽを向くグレア。
その様子を見てゾーイは、グレアに近づいてハグをする。グレアも嫌がることなく徐々に受け入れて恐る恐るハグをし返すと、ゾーイは嬉しそうに微笑んでより一層ハグを強めるものだから、グレアは先ほど頬を染めていた時よりも顔が赤くなる。
そのまま抱きしめ合い、お互いのぬくもりを感じ合っていると、グレアはゆっくりと口を開いた。
「ゾーイ、お前は本当に不思議な男だな」
「そうですか?僕は普通にしているつもりなんですけれど」
「それが、私達というか、この世界のほとんど全員がお前の事を普通じゃないとそう言うだろう。これほどまでに他の男と違っているのは後にも先にもお前だけかもしれん」
「いや、世界はきっと広いですから。僕のような人もいるかもしれませんよ?」
「いないな。絶対に。お前は他の男とは全くの別物だ」
そう強く断言するようにゾーイへと言葉を放った。
ゾーイはグレアにはきっと過去に何かあるのではないかとそう思い、顔を窺う。すると、グレアはその視線に気づき、何でもないと誤魔化すようにゾーイの頭を自分の胸へと押し当て誤魔化した。
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