第62話
ドロシーを落ち着かせ、その後にヴィクトリアも抱きしめるとドロシーが
「もう一度抱きしめてくれなきゃ、ここから動かない」
とそう対抗心を燃やしてきたため、ハグをするとヴィクトリアも母の威厳がああだ、とかこうだとか理由を並べもう一度ハグをすることに成る。
そうすると、またドロシーが対抗心を燃やし……と無限ループに入りかけたところでゾーイがヴィクトリアに
「ヴィクトリア様は立派なお母さんですから、ドロシー先生にここは譲ってあげませんか?」
とそう言ったところ、体をビクつかせネットリとした口調で
「はぁーい、立派な母親ですからぁ娘に譲っちゃいまぁーす。これから先、娘が生まれたらこういう事もあるでしょうし」
とボソッと呟いたのがゾーイの耳に入ったが聞こえなかったフリをして大樹の外へとでて今戦っているだろう人たちを止めることに急ぐ。
外へと出ると、そこには美しい幻想的なエルフの国の風景は無く、家屋は倒壊しその中で死闘を繰り広げているアリス、それにこの国のエルフの人たちを見てゾーイは先ほどのように深呼吸をして、大きく息を吸い……
「みんなー、もう戦うのは辞めて―!!!僕のために争わないで―!!」
と自分に出せる精一杯の声でそう叫ぶ。
すると先ほど魔法を打ち合い、前世では考えられないほどの速さで格闘をしていた全員が、一斉に肉食獣のような視線をゾーイに向け、誰が一番早いかを競うかのようにして突撃していったが、ゾーイの隣には王国、いや世界でも有数の魔法使いであるドロシー、そしてその生みの親であるヴィクトリアがいるため勿論最速で結界を貼られてしまい、それに激突することとなった。
「ゾーイさんはぁ、私のゾーイさんですぅ。他の人がぁ触れていい人ではありませんからぁ。それにそんなギラギラした目でゾーイさんを見ないでください。ゾーイさんが怖がってしまいますぅ。そんなことをする子にはすこぉーしだけ痛い目にあってもらいますよぉ」
「このくそ女のゾーイは私のゾーイという発言は頭がおかしくなったとしか言えない。だけれど、それ以外の事には同意。ゾーイを怖がらせたものは殺す。あとゾーイは私のゾーイ」
静かにそう告げて、さっきの籠った目線で二人がバチバチと火花を散らす。
ゾーイは、この二人の方がよっぽど怖いような……とも思ったけれど、それを口に出したらどうなるか分かったものでは無いので、口には出さないことにした。
「まぁ、とりあえずみんな。僕のために喧嘩しちゃってるのは分かるしありがたいけれど、一度落ち着いて話し合いましょう」
こうしてやっと武力ではなく、話し合いの場が持たれることとなった。
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