第49話

 朝、ゾーイさんが寝ている部屋へと起こすためにお邪魔すると、未だゾーイさんはスヤスヤと寝ていました。


 物凄く可愛らしい寝顔で、思わず抱きしめて頬をすりすりしてキスしてみたくなりましたけれど、私はぐっと堪えてゾーイさんをゆさゆさと出来るだけ優しくおこします。


 数度揺らすと、ゾーイさんは光が眩しいのか目を細めながら目を細く開けました。


「ゾーイさん、朝ですよぉ。まだ眠いですかぁ?」

「まだ、ちょっと眠いかもです」

「うふふ、ならまだ寝てても良いですよぉ。私もまだ少し眠いのでもう少し寝てしまいましょう。ゾーイさんを抱きしめながら寝ると物凄い安心してぇ、気持ちいんですよぉ。だから抱きしめても良いですかぁ?」


私が耳元で囁くとぴくぴくととても可愛らしく反応してくださるゾーイさんに思わず胸がキュンとしてしまいます。


「は、はい、良いですよ」


 ゾーイさんの事をギューッと傷付けることなく抱きしめると幸福感が体中をめぐり、脳内がビリビリとして体の火照りを感じますが、ゾーイさんにそれを悟られてはしたない女だと思われないため、全力を尽くして何気ない風を装います。


 バックからハグをしているため、顔は見えませんが耳元まで真っ赤で私からのハグを受け入れてくれています。


 あぁ、なんて、本当に愛おしいんでしょう?


 さらに、私はギューッとゾーイさんを抱きしめながらそっと目を閉じて目を閉じます。


 ゾーイさんもきっと私が寝ないと落ち着いて寝られないでしょうとそう思ったからです。


 ゾーイさんの優しい香りと心臓の鼓動音で段々と興奮が収まっていき、眠くなりはじめて何時しか私は浅い眠りにつきました。




 十数分でしょうか?いえ、それよりもっと短いかもしれません。


 ゾーイさんが、私の手を起こさないように気遣いながら離したところで目が覚めました。が、ゾーイさんが何か行動を起こすのではないかと思って目を瞑ったまま事を見守ることに決めました。


 もしゾーイさんがここから出て行こうとした場合は………


 とそう考えていましたが、杞憂だったみたいでゾーイさんは私の顔をジィっと覗き込むように見ているのを感じます。


 何かされるのだろうかと若干ドキドキしながら、ゾーイさんの行動を見守ることにしました。


 ゾーイさんは私の顔をじぃっと見て寝ているなと判断したのか何かしら考え事をするかのようにぼぉーっとし空を見つめているのが、うっすらと開けた片目から見えます。


 もうそろそろ私も起きても良いかとそう思った時、ゾーイさんは私の方へと徐に視線を向けたので、うっすらと開けていた片目をすぐに閉じて寝たフリを続けます。


 すると、数秒後私の頬にゾーイさんの手が触れて、ムニムニと触られているのを感じます。


 ゾーイさんから触れてもらえるのは初めてだったので、とても嬉しくて思わずにやけてしまいますが、必死に抑えます。


 一通りムニムニし終わったのか、ゾーイさんの手は私の頬から離れて行ってしまいました。


 もうそれ以上の事は無いのだろうかと若干期待していると、なんとゾーイさんは私の手を握ってくれたのです。


 手のひらや甲を優しく撫でるように触ってくださるので、思わず声が出てしまいそうになりましたが抑えます。


 手も一通り触った後、次はどこを触ってくれるのだろうかなんて考えていましたが、それ以上はありませんでした。


 ゾーイさんもそれ以上は流石に恥ずかしかったのかもしれません。


 もしかしたら、この胸を揉んでくれるかもしれないと思っていましたが、それはまた


 今は、ゾーイさんが自らの手で私を触ってくれたというのが嬉しくてたまらず、顔がだらしなくなってしまうのを抑えることが出来ませんでした。


 あぁ、本当に私の方を向いていなくて良かった。


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