第39話

「ゾーイ、あいつらに何かされてない?大丈夫?」

「なにもされてませんよ。この国の人たちは優しく接してくれましたよ?」

「本当に?本当に、本当に何ともなかったんだよね?」

「大丈夫ですって」


 ものすごい速さで僕を攫ってあの場所から去ったドロシー先生だったけれど、エマさんとシャーロットさんも当然指を咥えて何もしないわけがなく、速攻で追ってきた。


 何とか巻くことが出来きて、今は裏道のようなところで一度休息を取っているところだ。


「これから、どうするんですか?」

「きっとあいつらは今死に物狂いでゾーイをさがしていると思う。私達がゾーイを攫われた時みたいに」

「あ、あはは」


 ドロシー先生にお姫様抱っこをされながら、チラリと追ってくるシャーロットさんとエマさんの顔を見たけれど、鬼気迫る顔ってああいうことを言うんだなって顔をしていた。


「それにあいつらだけじゃなくて他の聖女までもうすぐ来ると思うし、多分もうこの国の全国民にゾーイを攫った犯罪者として私は指名手配されると思う」


 まさか、そんな馬鹿なとは思えないのがこの世界である。


「私一人でも七聖女全員を相手しても倒すことはできると思うけれど、ゾーイを奪われないようにしながら戦うのは少し厳しい。相手は七聖女だけじゃないかもしれないし」


 ドロシー先生が淡々とそう言う。


「だから、私がこの結界と城壁を壊すからそこから逃げて私が今から言う場所まで行って」

「幻惑魔法を使って、変装して正門から出るのは駄目なんですか?」

「ムリだと思う。多分もう正門は閉鎖されてて何者も入れないし出られないようになってると思う」

「なるほど」


 神聖国の王都はぐるりと城を中心に物凄く高い城壁が聳え立っているため、この城壁を登ろうとするのは風邪魔法を使えばできなくはないだろうけれど、そんなもの使えば一瞬でバレるだろう。


 ドロシー先生の作戦はこうだ。


 ドロシー先生と僕で城壁近くまで行き、ドロシー先生最大威力の魔法を放ち結界ごと城壁をぶち抜く。


 当然そんなことをすれば追手が来るからドロシー先生がその追手の相手をしているうちに僕は王都外へと出て、示された場所へと行く。


 その場所には誰にも見つからないドロシー先生の隠れ家と繋がる転移陣が置かれているみたいで、追手を相手し終わった後にドロシー先生もくるみたい。


 ちなむと、どうして転移陣を王都内に作らないのかというと神聖国の結界は万能のようで術者が少ない転移陣すら阻むらしい。結界凄い。


「ゾーイ、先に待ってて。終わったらいっぱいイチャイチャしようね。だぁーいすき」


 ねっとりとした絡みつくような声でそんなことを言われてしまい背筋が凍る。


 ドロシー先生の愛が重い。




 


 





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