第37話

 エマさんからのアプローチを華麗なんとかに躱しつつ、起きることに成功した。


 食事の時間もエマさん、シャーロットさん、そこにフィールまで加わり僕に一切スプーンの類は持たせてくれず、食べさせてもらい食事を終える。


 食事のあと、フィールと少し会話をしてからシャーロットさん、エマさんとともに城を出て、街へと来ていた。


「お、お二人ともお仕事の方は大丈夫なんですか?僕の警護をするよりも孤児院の子供たちを優先してくれてもいいんですよ?」

「うふふ、大丈夫ですよ。ゾーイ様は優しいですね。今一番大切なことはあなた様の警護です。孤児院の子供たちは他の七聖女やシスターに任せてあるので大丈夫ですよ。それより自分の事より孤児院の子供たちを優先するなんて。やはりあなた様は我々をお導き下さる天使様なのですね。必ずやお守りしますから」

「あ、ありがとうございます。でも張り切りすぎも体に毒ですから適度に気を抜いても良いと思いますよ?」

「孤児院の子供たちだけでなく、私にも優しさを向けてくださるなんて……感激です!!この身全てを賭けてあなた様をお守ります」


 何故か、監視の目を少しでも減らせるようにした発言がエマさんを感激させてしまい、さらに監視の目を強めてしまった。


 どうしてこうなった?


 この人たちにどんなことを言っても、プラスの発言にとらえられそうだからこれ以上この人たちに言うのは控えようと思う。


 それに明らかにさっきよりも僕との距離が近いし……。


「ずるいですよ、エマ。私だってゾーイ様とお近づきになりたいです」

「ふふっ、早い者勝ちですよシャーロット。それともゾーイ様は私たち二人セットが良いですか?」


 と何とも魅惑的な誘いを僕にしてくるけれど、この人たちとしてしまったら僕の計画が、すべきことを果たせなくなるという使命感から鋼鉄の意思で耐えることに成功する


 さて 今日も街にやってきたのは言うまでもなくフリーハグをするためにある。


 僕がフリーハグをしているというのは王都全体に行き渡っているのか、まだ初めてもいないのに学園同様に列が作られ始めていた。


 だけれど、一つだけ違う点はこの国の人たちはハグする前からもう幸せそうな顔をしていて顔が蕩けている所だよな。僕とハグするところを想像してくれているのだろうか?


「それじゃあ、僕とフリーハグしてくれる人」

「はいっ!!」


 列の一番最初の子が元気よく手を挙げたので、その子のことを優しくハグしてあげると、例の如く嬉しすぎて漏らしてしまっていた。

 

 もう凄い勢いで気持ちいいくらい漏らすものだから、別に濡れてもいいかという気持ちになってくる。


 前の反省を生かし、今日は服をたくさん持ってきているから大丈夫。


 さぁ、どんとこい。


 


 この時の僕は甘かった。


 すぐそばまで魔の手が近づいてきていた。


 まだ時間的に余裕があるなんてそんな甘いことを考えるべきではなく、直ぐに脱走すべきだったんだ。


 


 


 



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