第10話 列ができ始めた

「みなさーん、列に並んでくださーい。抜かしたり転んだりしないようにしてください」


 アリスが声を張り上げて列整理をしてくれている。


 今日もお昼に広場でFREEHUGをし始めたわけだけれども、昨日のしていたことが広がったのか噂が噂を呼んですごい数の人が広場に集合していた。


 これだけの人数だと絶対にお昼休みの間には終わらせることは出来ないけれど、一人一人丁寧に抱きしめてあげる。


 抱きしめられた女子たちは、一瞬だけ恥ずかしそうに身を捩るけれど気持ちよさそうな顔を浮かべてくれるのでやはり嬉しいなって感じる。


 生徒だけでなくここの教師たちもハグをしたいみたいで、列に並んでくれる。


 生徒だから教師だからとかいうことはFREEHUGでは関係なく、全員とハグするのものだから生徒と同じように扱うことにする。


「お、お願いいたします!!」

「ヴィクトリア様。じゃあ早速しますね」

「は、はい」


 なんだかんだ、ヴィクトリア様にハグををすることは初めてかもしれない。


 あれだけいつも積極的なヴィクトリア様がこうしてハグされるとしおらしくなるのはギャップで可愛いなと思う。


「というか、ヴィクトリア様なら言ってくれればいつでもしますよ?」

「そ、それは本当ですか?」

「はい。王女様にこういうことを言ってはいけませんけれど、ヴィクトリア様は大切な友達ですから」

「あ、ありがとうございます。その.............嬉しいです」


 ぎゅっと力を籠めるように抱きしめ返してくれるヴィクトリア様が微笑ましくてつい笑顔になって仕舞う。


 ヴィクトリア様を抱きしめ終わり、他の生徒たちの事も同じように抱きしめていると時間というものはあっという間ですぐにお昼休みが終わってしまう。


「じゃあ今日はここまでです。また明日来てくれると嬉しいな」


 並んでいた人たちからは不満そうな声が上がったけれど、明日もあることを伝えると次こそは一番乗りで来ると意気込んでいた。

 

 そう言えば、一度はぐされた人は後回しにして新しく来てくれた人を優先したほうがよさそうだ。その方が平等だと思うし。


 そんなことを考えていると、誰かに強く見られているなと思いそちらへと振り返ると頭に猫の耳のようなものが付いた生徒がこちらを物欲しそうな目でながめていたけれど、僕と目が合うと逸らして、どこかへと逃げるように去ってしまった。


 初めて見た。


 あれが獣人族なんだ。物凄く可愛かったな。前世でいたら確実にトップアイドルになっていただろうな。


「ゾーイ様、次の授業が始まってしまいますし早く行きましょう」

「うん、そうだね」


 興味は持ってくれていたみたいだからいつか、彼女と話してみたいなって思う。それと出来ることならあの耳を優しく撫でてみたいなって思ったり。

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