第7話 代表挨拶
「暖かな春の日差しに包まれた.....」
入学式が始まり、順調に進んでいき新入生代表挨拶を今はしている。
僕の名前が呼ばれて立ち上がった時は、驚きの声や歓声や悲鳴など様々な声が上がった。
今も壇上で生徒たちや先生の事を見渡すことが出来るけれど、みんな熱い眼差しで僕の方を見ていて少しだけアイドル気分を味わうことが出来ている。
母様やシュヴィは僕の晴れ姿をみて、涙を流しているのが一目でわかった。
ドロシー先生も熱心に聞いているようで.....って、あの人は何で両手を広げてこちらを見てるんだ。
隣の教師が変な顔をしているじゃないか。
そんなこともありつつ、無事に代表挨拶を終えて僕の役目は終わる。
その後も恙なく入学式は進行していき、無事に何事もなく終わることが出来た。
教室へと一度戻り、少しだけ明日の話をしてから今日は解散となった。
帰ろうとするけれど、教室の外は人だかりが出来ていた。この教室になんでこんなに人がとも思ったけれどまさか.....。
「ゾーイ様のせいでございますね」
「やっぱり」
僕を一目見ようと、どうやら大勢の人がこの教室へと押しかけてきたらしい。男の僕は珍しいからね。
「入学早々、ゾーイ様は人気者ですね」
「あはは、そうだね」
恥ずかしそうに一人が僕の方へと手を振ってきてくれたから手を振り返すと、その子は目じりに涙を浮かべて泣き出してしまった。
「ぼ、僕、何か良くないことしちゃった?」
「ゾーイ様は何も悪いことなどしていません。あれは嬉しくて泣いているだけなので大丈夫ですよ」
「そ、そっか。なら良いんだけれど」
びっくりしたけれど嬉し泣きなら良かった。
さて、外ではシュヴィと母様が待っているから行かなければならない。
きょうから僕は寮に住むのだから、シュヴィと母様とはしばらく会うことが出来なくなってしまうからね。
僕が教室のドアへと進んでいくと海を割るように綺麗に道が出来るので、外に出ることにはまったく苦労しなかった。
外を見渡し、母様とシュヴィを見つける。
二人も僕に気づいたのか急いで寄ってきて僕を抱きしめてくるので、抱きしめ返す。
「代表挨拶、凄く格好良かった。流石、私の息子だわ。愛してる、ちゅーする?ね?しちゃう?」
「お母様だけずるい。私も、兄さまとチューしたいです」
「二人とも、外だからね?僕たち貴族だから礼節は弁えないと」
「そんなものは、今は知りません。愛しの息子の前ですから」
まったく、母様は仕方が無い。
今日でしばらく会えなくなるし、頬にキスくらいはしてもいいだろう。そう思って、母様の頬にキスをしてあげる。
すると、まったく予想していなかったのか呆けた顔をしてペタペタと頬を触っている。
「ね、ねぇ、ゾーイちゃん。今、ほっぺにチューしてくれたの?」
「う、うん。今日でしばらく会えなくなっちゃうから」
「ゾーイちゃん!!!!」
母様は感動したのか、喜びを全力で表現しようとして自分の頬を僕の頬へとすりすりとしてしてくる。
「お母様だけずるいです。シュヴィにも頬にチューしてください」
「うん、いいよ」
母様の拘束から抜け出して、シュヴィの頬にキスをしてあげると嬉しそうに微笑んで抱き着いてきたので抱きしめ返してあげる。
「お兄様、大好きです」
「うん、僕もシュヴィの事大好きだよ」
本当に可愛い妹だよ。
「本当にゾーイ君って変わっているよね。男性なのにこんなに優しくて紳士的で格好いい人なんて見たことない」
「ゾーイ様は最高ですから」
ヴィクトリア様はそんなことを言うけれど、僕にとっては当たり前すぎて良く分からない。女性に対して優しくするのは、前世で生きている男性ならば普通だろうから。
それと、今気づいたが、こんなところで抱きしめ合ったり頬にキスをしたので、他の新入生や保護者様、そして先生方がこっちをものすごく羨ましそうな目で見てきていた。
少し恥ずかしくなりつつも、僕は母さんとシュヴィへと別れを告げて寮へと戻ることにした。
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