対 清雅大学付属高等学校


――翌日。

到頭、県大会の出場を賭けた大会――春季東海地区高校野球中部地区大会の会場である草薙球場にチームメイトと共に来ていた。

強豪校ではないので、部活用バスがなく現地集合で電車を駆使して着いた。


「よし、そろったな。顧問が会場で手続きしているので時間まで羽目を外さないように過ごしてくれ」

「「「はい」」」


8時から球場に入ることが可能になったので、一塁側の更衣室へ行きユニフォームに着替える。

8時半になると、それぞれ15分ずつノック練習で身体を温めることが出来る。

ということで、キャプテンである浅野先輩が先行を取って来たので、先に星彩側が内野ノックに外野フライなどの守備練習を行う。

その間、敵側である清雅の女子野球部は私たちの練習を観察していた。


「あれが浅野選手ね」

「背が高けぇし、インナーから見える筋肉すげぇな」

「県内最速投手で強豪校の選手すら苦戦したらしいし、何で強豪校に行かなかったのかな?」

「ほかの選手も去年より格段と上手くなってる。 あの外野の子なんてエラーしなくなってるし」

「ほんとね。これもしかしたら、県でも上位に行ったりして」

「ありえそう……。ただ、静岡4強校には無理だろうな。あいつら化け物スペックだし。 たしか浜松西工業高校だっけ? あそこは男子野球部を練習しているくらいだろ」

「まじ? 全国クラスになるとやばいわね」


15分経過して、三塁側のベンチにいた清雅は星彩を入れ替わる形で守備練習を始めた。









一回の表。


『1番 サード 市森さん』

「よろしくお願いします」


アナウンスが鳴り、審判に挨拶してバッターボックスに入る。

マウンドには清雅の10番、小野投手がいる。


「2年生投手か、まさか私たちにエースを温存?」

『5番の子はたしか毎試合出塁してる選手だったよね。ここはアウトハイに遊び球を投げる!』

「要注意選手じゃないから、どんな球種か分からない粘ろう。甘い球が来たら打つ!」


小野投手が投球する。

凡そ100キロ後半の球速。


「これはアウトコースギリギリ?いや、ボール」


市森は少し迷ったが一球目を見送った。


「ボール!」

「やっぱりゾーンから外れてたのね」


球はゾーンに入らずボール一個分ほど外れていた。


『ありゃ、外れすぎたかな。次はカーブでいく!』

「いきなり外してきたから、不調かな?」


2球目を投げる。


「カーブ?くっ、タイミングがっ!?」

「ストライク!」


二球目は空振りを取る。

投げられた球は上がってから下に変化して落下する。

その球速はストレートより若干遅く100キロくらいだろう。

そして、三球目も続けてカーブでカウントを取り、4球目のストレートをゴロで打ち取る。


市森はベンチに戻っていく。


「どうだった?」

「今のところ、ストレートとパワーカーブの2種類しか投げてこなかったです」

「そうか、2番投手も厄介そうだな」


2打席目の草野もゴロで打ち取り、3打席目の神園がセンター前まで飛ばし一塁へ行く。


『4番 キャッチャー 芝井さん』


芝井は挨拶後、左バッターボックスに入りバットを構える。


「ストレートを狙いと思わせて、初球のカーブを打つ!」

『まずはアウトコースの下アウトローにストレートでカウントを取る!』


一球目を投げる。

少し真ん中よりの下に球が向かう。


「初球、ストレートで来た!?」

『あっ、やばい!?』


芝井の豪快なスイングでストレートを打つ。

打球はレフト頭上に飛び、ツーベースヒットとなった。


『5番 センター 高橋さん』


高橋は挨拶後、左バッターボックスに入りバットを構える。


『2連続左打者。しかも、外国人!?』

「ここはワタシのスイングで点を取りマス!」

『まだ真面に打たれていないカーブを中心に投げる!』


一球目、アウトコースの下寄りにパワーカーブを投げ込む。

高橋は初球のパワーカーブを打ちファールゾーンに飛ばす。


『いきなり打つなんて!?』

「やっぱ途中から落ちてる球を打つの難しいデスね。でも、次は転がしてでも打ちます!」

『今のスイング見たらストレート投げられないじゃん。 まだ一回目だし、を温存したいから次もパワーカーブで』


小野は2回も捕手のサインに対して首を横に振る。

二球目のパワーカーブをインコースに投げ込む。


「二球目もパワーカーブデスね。打つと言ったら打ちマス!」


高橋はバットを短く持ち直し、球をバットに当て左中間前に打球を転がす。

これによりホームに帰った神園をベンチにいる選手達が迎い入れ、喝采する。

カウントは、まだツーアウト一、二塁でまだチャンスがある。


6番 片桐もヒットを打ち、7番 外狩が球を打つもゴロにして打ち取り、この回は2点を取った。


一回の裏。

マウンドには浅野が立つと同時に歓声が上がる。


「すっごい歓声!相手とえらい違いだね」

「浅野先輩だから当然だし。 観戦ベンチの方見て、他校から偵察に来てるし」

「私もマウンドに立ったら、あんな風にファンが付くかな?」

「セイちゃんならこれ以上になるよ。何だったら私が大声でやろうかな?」

「アンタはキャッチャーでしょ。 ホームベースの後ろで騒いでたらダメでしょ」

「むぅ……別にいいじゃない」

「アンタは、何でこの子に関わるとアホになるの……」


浅野が投球練習が終わり、ベンチ側も静まり返る。

清雅側の打順1番の原口選手がバッターボックスに入りバットを構えると、浅野の一球目が放たれる。

その球速は130キロを超え、一番打者は反応できなかった。


「えっ……、速い」

『要注意人物の一人、出塁されると面倒だからここできっちり抑える!』


それからキレのあるカットボールと混ぜて三打席まで三振を取り、完璧に抑えて攻守を入れ替える。

ベンチと観客席から喝采が上がる。


「これが全国クラスの投手……。改めて見ると凄いなぁ。ねぇ、レイちゃん私もあんなカッコイイ投手になりたいな」

「そうね、セイちゃんなら……ううん、私が浅野先輩に負けないくらいの投手にさせてあげる」

「ありがとうね。投手だけじゃなくバッテリーとして観客や敵に轟かせたいな」

「うん」


ブルペンで浅野の投球練習を見ていたが、実際に試合で投げると球の強さに浅野から感じるエースの覇気にベンチから見ていた一年生投手である二人は、浅野の圧倒的な投球により憧れを抱いていた。


2回の表。

打順8、9、1番が打席に立ったが8番9番は三振取られ、1番は投手のパワーカーブの多様によりバットで飛ばすことが出来たがゴロで打ち取られる。

2回の裏。

打順が4番から入った。


『来たな、4番』

「所詮ただ速い球だ。ピッチングマシンと同じ!ストレートが来たら打つ!」


一球目。

アウトコースの下にストレートを投げる。


「アウトコースにストレート。甘いね浅野っ!」


4番は長めに持ったバットをアウトコースに芯で捉えようと振り下ろす。

球はバットに当たったが、打球が真上に飛びキャッチャーの芝井が軽々と捕球する。


「っ!? 捉えたと思ったら、ストレートのスピンか」


4番を打ち取りその後も出塁させることなく攻守を入れ替わる。

3回はお互い得点にならずに終わる。


4回の表。

この回は岩原の打席から始まる。

ストレートや低めにパワーカーブなど使い、打順8,9番を打たせて取る戦法でアウトを稼ぐ。

次からは上位打順。

1番市森が打席に立った。


「外野は前進してる……。ここで長打を狙うかな」

『これが終われば、あと1回で交代。そろそろカーブも目が慣れてきたと思うし、アレを使う!』


一球目。

アウトコース低めにパワーカーブを投げる。

それをバットに当て、打球を飛ばすが芯に捉えられずにファールゾーンに飛ぶ。


「次は打ちます!」

『完全に捉えられてたね。次はアレで行くよ』


二球目。


「二球連続カーブ! 打ち取った!」

『空振れ!』

「くぅっ……、遅い!?」


振り下ろしたバットは空を切り、球はミットに収まった。

これによりツーアウト、ツーストライクのカウントで後がない。


三球目。

インコースの上にパワーカーブが上手くハマり、バットが詰まり打球が内野フライとなる。


これにより、攻守が入れ替わる。

星彩側の守備では清雅が出塁を出たものの高速スライダーを投球することで0点で抑えることができた。お互い得点にならずに終わる。


5回の表。

小野投手がパワーカーブとスローカーブを投げ分け、緩急が付いた攻撃により好投。

5回の裏。

浅野のストレート、ツーシーム、カットボールそして、キレのある高速スライダーを投げ分けて清雅側が捉えることが出来ず、0点で抑える。


6回の表。

この回から清雅側は、投手を交代して3年生エース松下が登板した。

5番打者の高橋が打席に立つ。


「たしか、スライダーとシュートで左右を揺さぶる投手デス。 ワタシなら打てマス!」

『1年生打者でクリーンナップね。 余裕そうな表情……、入学して早々レギュラーになって……、その自信過剰を叩き潰す!』


一球目。

インコースに抉るスライダーを投げるが、高橋は見送った。


「ちょっと想像してたより、変化量が大きいデスね……」


二球目。

アウトコースに逃げるシュートを放つ。

高橋はバットを振り下ろし球を当てるが、バットの先端に引っ掛かりファールとなった。


「くっ、シュートも中々の変化デス……。一打席じゃ、ちょっとキツいデスね」


三球目。

3年生エース松下は、仕留めるよう得意のスライダーを投げる。


『高校野球をなめるな、一年生!』

「低いっ!」


スライダーがインコースの下に決まり、高橋のバットが空振ってバッターアウトになった。


「これが県大会に上がったチームのエース……。全国は一体どんな投手がいるのでショウ。ワタシもまだまだデスね」


それからの打者は右打者にはシュートでインコースを抉る球を放ち、左打者にはスライダーでインコースを攻めて、好投となり、星彩は得点を得られなかった。

清雅は結局浅野の球を攻略できずに、7回の最終回は投手戦となりお互い点とれず試合が終わった。


3対0で星彩女子高等学校が勝利を収めた。

浅野投手の完投により、観客席が大いに盛り上がっていた。


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初めて野球の試合を書きました。

思ったよりも難しく、この描写でいいのか分かりませんでした……(´・ω・`)

アドバイス等あれば、気兼ねなくコメントしてください(;´・ω・)

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