電車

 その後もまったりとした時間を過ごして、やがて電車は目的地にたどり着いた。ちなみにあの固いアイスはもう一度購入してある。五個ずつアイテムボックスに入れてあるから、真美たちにもあげたい。

 電車を降りて、周囲を見回す。ホームってすごく広いね。電車がすごく長いから当然かもしれないけど。たくさんの人が降りてきてる。それだけ利用者は多いみたい。

 たくさんの人に紛れて、私もエスカレーターで下の階へ。改札に二枚の切符を入れると、一枚だけ出てきた。これはまだ使うのかな?


『大阪駅まではその切符でそのまま行けるよ』

『どこに行くかは決まってるの?』

『今度こそオススメのたこ焼きを!』

『そういえば前回は現地の人に聞いたんだっけ』


 んー……。どうしよう。このまま転移すればいいと思うけど、せっかく切符がまだ使えるなら、普通の電車も乗ってみよう。とりあえず大阪駅に行ってみようかな。

 それにしても。


「人が多い……」


『そりゃなあ』

『なお大阪駅の方が多いです』

『それよりも東京駅の方が多かったと思うんだけどw』

『東京駅はほら……駅弁しか眼中になかったから……』

『納得した』


 納得しないでほしい。否定はちょっとできないけど。

 えっと……。電車、だね。たくさんの番号があるけど、どれに乗ればいいのかな。


「ん。よし。すみません」

「うえ!?」


『流れるように一般人に声をかけてるw』

『リタちゃん本当に物怖じしないなあw』

『コミュ障のワイにはちょっと真似できんわ』

『奇遇だな、俺もだ』


「大阪駅に行きたい。どこから乗ればいい?」

「え、え……。リタちゃん? 本物!?」


 声をかけた男の人はかなり慌ててるみたいだったけど、どうにか落ち着いてくれたみたいで、丁寧に教えてくれた。一緒に写真をとって、手を振って別れて、教えてもらったホームへ向かう。エスカレーターに乗って、さらに下へ。新幹線のホームってかなり上にあったんだね。

 ホームで少し待ってると、すぐに電車が来た。新幹線と違って、お鼻がない。普通の電車はこういうものらしい。新幹線みたいに速くないから、だって。


 ホームで待ってる人と一緒に電車に乗る。おお……。すごくこんでる。テレビで見た満員電車ほどじゃないけど、ちょっと大変。

 そんなたくさんの人が私を二度見してくるのはちょっとおもしろかった。


『普通に電車に乗ってたら、ちっちゃい魔女が乗ってくるとか想像もしてないだろうなw』

『めちゃくちゃレアな体験、というより絶対に二度目はないと思う』

『そもそもリタちゃんがまた電車に乗るかも微妙なところだしなあ』


 んー……。多分、もう乗らないと思う。電車は満足したから、次はバスとか飛行機に乗ってみたい。機会があれば、でいいけど。

 少しだけ電車に揺られて、次の駅が大阪駅だった。一駅だけみたい。

 それで、大阪駅だけど。人がとても多い。なんだかすごく多い。なにこれ。


『まあそういう駅ですし』

『それよりリタちゃん、たこ焼きはやっぱりここだよここ!』

『全体的にとろっとして美味しいって評判のたこ焼きがある』


「んー……」


 コメントをちゃんと見たいところだけど、私は先に移動した方がいいかもしれない。ホームがとても混み合ってるけど、原因の一つは私かもしれないから。

 いや、だって。みんな立ち止まって、私にスマホを向けてるから。移動しないと邪魔だよ? というより私も歩きにくいよ。

 どうしようかなと思いながら一歩踏み出すと、みんなも一歩動いてくれた。んー……。このまま行こう。


『なんだこの集団w』

『何も知らない人が見たらめちゃくちゃ謎な集団だろうなw』

『邪魔なやつらやなあって絶対思ってるw』


 それは間違いなく思うだろうね。私もちょっと思ってる。

 エスカレーターで下りて、近くの改札に向かう。ちらっとコメントを見てみると、たこ焼きのオススメがいっぱい並んでいた。その中で何度も目に入るたこ焼きのお店がある。ここが美味しいってことかな。

 場所は……。大きな商業施設っていうのかな? そういうところの地下みたい。地下でたこ焼きが食べられるんだって。

 あと、同じ場所に美味しいお肉のお店があるんだとか。お肉もついでに食べられそう。


 改札を出ると、さすがに周りの人は減ったみたいだった。でも代わりに、改札の外の人が立ち止まって私を見始めてる。そのせいでまた人が増えてきて……。うん。改札も出たし、転移しよう。駅員さんにも迷惑かかりそうだし。

 転移して、建物の屋上に移動。ここから下に……、あ。


「ここ、来たことある」


『おん? そうなん?』

『初めて大阪に来た時に通った場所だな』

『なんで屋上が通り道なんですかね……』

『普通は目的地なんだけどなあw』


 前はすぐに外に出ちゃったから、今回はちゃんと見ていこう。

 ドアから中に入って、エレベーターで地下へ。地下をちょっと歩くと、すぐに目的地のたこ焼き屋さんがあった。食べられるスペースもちゃんとある。すごい。

 驚いてる店員さんからたこ焼きを購入して、椅子に座って食べる。いただきます。


『めちゃくちゃ見られてるのに全然気にしないなこの子』

『そりゃお前、見知らぬ他人よりたこ焼きに決まってんだろ』


 たこ焼きをつついてみる。今回はぱりっとしてない、外もふわふわのたこ焼きだ。ぱくりと口に入れると、すごく熱い。でも美味しい。かむととろっとしたものが出てきた。

 んー……。ソースも美味しいけど、生地にもしっかり味がついてる。多分これ、ソースがなくても美味しく食べられると思う。すごい。

 そして、タコ。ちゃんとタコも入ってる。やっぱりタコはたこ焼きかもしれない。美味しい。


『えっと……。ちゃんと熱いんだよなあれ?』

『熱い……はず……。ほふほふもしてくれないから分からねえ……』

『耐えられない程度になったら何かしてそうだからな、リタちゃん』


 ちゃんと美味しく食べられるようにしてるよ。美味しい。

 たこ焼きの後は、お肉。焼き肉。楽しみ。

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