魔法使いは太りません
真美がおかわりを持ってきてくれた。さっきと同じチーズカレ……、あれ?
「とんかつ入れてみたよ!」
「……!」
チーズ入りのカツカレー! すごい! すごくいいもの! 絶対美味しい!
『チーズカツカレーもいいよな』
『カロリーやばそう……』
『チーズとカツってどう考えてもカロリーの暴力w』
『ふと思ったんだけど、リタちゃんわりと暴食するのに、全然太らないな』
『若いっていいなあ……』
『さすがに違うだろw』
んー。そっか、そういえば言ってなかったっけ。師匠の時はそもそもこんなに食べなかっただろうし。
「私たち魔法使いはある程度食べたものをなにこれすごく美味しい」
『リタちゃんwww』
『説明はいいから先に食べなさいw』
『美味しそうに食べてるのを見てるだけで俺たち満足だから』
『ここには変態しかいないのか?』
『お前も含めてな!』
すごい、とろとろチーズがとんかつに絡んで、今までと違う食感になってる。チーズとソース、カレーの味がどれも邪魔にならずに調和していて、これもまた美味しい。
「んふー」
『めっちゃ美味しそうに食べるやん』
『いつものこと』
「えへへー」
『そして真美ちゃんはめちゃくちゃ嬉しそうw』
『ここまで美味しそうに食べてくれたら作るのも楽しいだろうな……』
ん。すごくすごく美味しい。幸せ。
その後、もう一回だけお代わりをもらった。すごく美味しかった。
全部食べ終わった後は、洗浄魔法でさっと食器を綺麗にする。真美が手早く片付けて、一息。
「ところでリタちゃん」
「ん?」
「太らない理由について詳しく」
テーブルから身を乗り出して聞いてきた。圧がすごい。なんか、すごい。怖い。
助けを求めてちいちゃんに視線を投げれば、テーブルの上でお絵かきをしていた。かわいい。
『現実逃避すなw』
『真美ちゃんの圧がやべえw』
『でも実際俺らも気になる』
ん……。別に隠してることじゃないし、私たち魔法使いからすれば当たり前なんだけど……。
「先に言うけど、真美は絶対にできないよ?」
「あ、そうなんだ……。でも、教えてほしいな」
「いいけど……」
これは私だけじゃなくて、魔法使い全員がやってることになる。もともとは精霊様ですら知らなかったことだけど、師匠が何かの本で知って、精霊様が確認してくれた。これについては私どころか師匠のオリジナルでもない。
「魔法使いは必要以上に食べたら、魔力に変換してるんだよ。だから魔法使いに太ってる人はまずいない。ミレーユさんやパールさん、それにミトさんも太ってなかったでしょ?」
「言われてみれば確かに……」
もちろん冒険者になると動くことも多いから、そもそもとしてたくさん食べても足りないことが多いかもしれないけどね。でも、魔法の研究とかしてる人でも太ってないはずだよ。
「理由も分かったし私が使えないのも分かったけど言っていい?」
「ん? どうぞ」
「すっごく羨ましいんだけど!」
真美がおもいっきりテーブルを叩いたせいでちいちゃんがびっくりしてる。でも、そんなにかな? 太りたくないなら、魔法使いじゃないなら動けばいいと思う。冒険者の人に太ってる人がほとんどいないのはそういうことだろうから。
コメントを見てみると、これもまたちょっとすごいことになってた。
『羨ましすぎてはげそう』
『魔法使えるよりも何よりも羨ましいと思ってしまったよ……!』
『リタちゃん、現代人はね、動く機会が少なくなってるんだよ……』
ああ……。ですくわーく、だっけ。そういうのも多いんだよね。それなら、仕方ない、のかな?
私にはよく分からなかったけどね。うん。だからごめんね真美。なでなでしてあげる。なでなで。
「あ! ちいも! ちいもなでなで!」
「ああ、うん。なでなで」
なんだか妹が二人できた気分になってしまったけど、これはこれで楽しかった。
「明日、森の外から一人、連れてくるね」
森に帰った後、精霊様とコーラを飲みながらそう報告した。ぱちぱちがまだ慣れない……。
「珍しいですね。ミレーユという方ですか?」
「んーん。ミトさん。師匠の術式そのままだったから、少し教えてあげようかなって」
「それは……。気になりますね」
ん。多分精霊様が気になってるのは、師匠の教え子ってことだと思う。
「いい人そうだったから大丈夫だよ」
「そこは心配していません。リタを信じていますから」
ん……。そう言われると、ちょっと照れちゃうというか……。うん。
まあ、もし何かあったとしても、その時は私がどうとでもするつもりだ。ミトさんはいい人そうだから大丈夫だと思うけど、どっちが大事かと聞かれたら精霊の森の方が大事だから。
「念のため、一度ここにも連れてきてくださいね」
「ん。わかった」
しばらくは滞在してもらうことになるだろうしね。精霊様にも会ってもらっておこう。
んー……。今からちょっとだけ楽しみだ。ちょっとだけ、ね。
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