久しぶりの投げ菓子


 起床。家を出て、あくびをして、配信を開始。


「お菓子なくなった。ください」


『おはよう』

『挨拶ぐらいしようぜw』

『お菓子だな、まかせろ!』


 打てば響く、みたいな返答。とても助かる。朝ご飯ができるよ。

 少し待つと、私の目の前にたくさんのお菓子が並び始める。今日は和菓子よりもスナック系が多い。美味しいからこれも好き。


『まってまってこれ何が起きてんの!?』

『これが噂の投げ菓子ってやつ?』

『どうやんの? 俺もやりたい』

『そういえば例の一件からご新規さんが激増してんだよな』

『そろそろまた魔法陣出したら?』


「ん……。そうだね。そうする」


 あちら側で私の配信を見る時にどうやって見るのか、実は私はあまり知らない。ただ投げ菓子用の魔法陣は、私が見せたのを、きゃぷちゃ? なんか、そんなやつ。それで印刷するんだとか。

 ちなみに印刷方法を視聴者さんに教えたのは師匠であって私じゃない。私はむしろ分からないから、分からない時はあちらで相談しあってほしい。

 杖を持って、杖の先に魔法陣を表示させる。それを光球に向ける。


「この魔法陣をどうにかして紙に出して。ちなみに手書きはまず無理だと思うから、印刷ってやつをちゃんとしてね。その上で、私が魔法陣に魔力を流すと、魔法陣の上のお菓子が回収される」


『なるほど理解』

『ただし原理がまったく分からない』

『そんなん言い始めたら魔法が意味不明だ』

『それもそうだな!』


 それで納得するんだね。

 スナック菓子の袋を開けながら待っていると、菓子がまた増え始めて……、


「いやまってまって! 多い多い! 終了! 終了!」


 すごい量になってるんだけど! 一瞬ですごい量になったんだけど! え、え、なにこれ!?

 こんもりと山になってる。数えるだけでも億劫だ。とりあえずアイテムボックスの中に突っ込んでおこうかな……。


「でもなんで急に増えるの?」


『マジで言ってる?』

『視聴者数が激増した上に魔法陣を出して全員に行き渡らせた。じゃあとりあえず試してみよう、と思うのが人情』


「そんな人情捨ててしまえ」


『ひどいwww』


 食べ物用に作った亜空間内は開いてる時以外は停止してるから、とりあえず腐ることはないはずだけど……。それにしても、消費するのが大変だ。


「もう少し何か考えた方がいいかな……」


『まあそれは確かに』

『正直あの量はちょっと引いた』

『リタちゃんのお家の天井に届く量だったからなw』


 気持ちはとても嬉しいんだけどね。本当に。




 今日はこちら側でお出かけするから、精霊様にお菓子を押しつけ……、もとい、挨拶に来た。


「リタ。何か今、変なこと考えていませんでしたか?」

「気のせい。すごく量が増えたお菓子を少し押しつけようとか思ってない」

「リタ!?」


『リタちゃんwww』

『正直なのはいいことだけどw』

『まあまあ、精霊様も食べてくださいよ……へへへ……』

『怪しすぎて草』


 何か毒でも入れてそうな言い方だね。

 実際は毒とか入れていた場合、魔法陣が弾くから私のところには届かないらしいけど。


「冗談は置いといて。ちょっと近くの街に行ってくる」

「分かりました。ミレーユという者に会いに行くのでしょうか?」

「ん。そう。……え? もしかして、関わるのはまずい人?」

「いえ。大丈夫ですよ」


 良かった。安心した。そんなに改めて聞かれると、関わり合いになるなとか言われるかと思ったよ。私が気付かなかったことがあったのかもって。

 問題ないのなら、このまま会いに行こう。もう空を飛ぶ必要もないだろうし、門番の人に気付かれない程度に転移で近づけばいい。

 精霊様に手を振って、一度森の出入り口へ転移。相変わらずとても静かな場所だ。


「それじゃ、街の上空に転移するよ。それとも空の景色を見たい人とかいる?」


『俺見たいかも』

『暇だからなあ、あの時間。それならさっさと行ってほしい』

『どっちでもいいよ。リタちゃんのしたいように』


 んー……。コメントの比率は均等だね。それじゃあ、やっぱり転移かな。私としてはそっちの方が楽だから。

 転移して、街の上空へ。今回は北門から入ろうと思う。こっちは並ぶとかを考えなくていいからね。今も、門はあるけど閉まっていて、兵士さんが見張ってるだけだ。

 ミレーユさんと出た時は、北門から出発した。戻るのもここからで大丈夫なはず。

 ちなみに、北門は精霊の森に向かう人のためにある門で、ここから入るためには北門から出発したという記録が必要なんだとか。ミレーユさんから教えてもらった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る