第10章〜どらドラ!〜④
「今日のステージは、学内の大勢の人たちの協力で、こうして盛り上げることが出来ました! 感謝を込めて、関係するクラブや団体の代表者に、ステージに集まってもらおうと思います! みなさん、準備はイイですか〜?」
舞台中央からの問いかけに、
「オッケ〜」
と、ソーシャルディスタンス程度の距離から、軽く反応した寿副部長をはじめ、パレードを終えたばかりのフロート周辺に集まっているメンバーから、両手で大きくマルのサインが送られた。
「はい、ありがとうございます。それでは、代表者の皆さんに集まってもらいましょう! まずは、素晴らしい演奏でパレードを先導してくれた吹奏楽部を代表して、寿副部長!」
「えっ!? 私から?」
唐突な振りに、戸惑いながらも、吹奏楽部副部長は、
「今日は、久しぶりに、他のクラブの人たちとたくさん絡めて楽しかった〜。次の大会に向けての良い練習にもなったしね〜。あっ、学校見学中の中学生のみんな〜、来年はぜひ吹奏楽部に入ってね〜」
と、笑顔でソツなくコメントする。
「はい、寿先輩ありがとうございました。初っ端に話しを振っても動じない性格、さすがです! 続いては、僕に歌唱指導を行い、パレードの歌を盛り上げてくれたコーラス部から、浦嶋部長!」
フロートの台上で竜司の呼びかけに反応した浦嶋ユリは、おどけた表情を見せたあと、ステージに駆け寄る。
吹奏楽部副部長が手持ちののマイクをユリに向けると、
「ご紹介ありがとう、黒田くん! 屋外でコーラスをする機会は少ないから、今日のパレードは、とっても楽しかったよ!見学に来てくれたみんな、一緒に楽しく歌いたくなったら、ぜひ、コーラス部に遊びに来てね! それから、フロートの下で、私たちの移動を支えてくれた運動部のみんなも、ありがとう!」
縁の下で、パレードのスムーズな進行を支えた体育会系のメンバーへの感謝も添えて、応答した。
「浦嶋先輩、歌のご指導とパレードのご協力ありがとうございました。運動部への労いを忘れないのも流石ですね!体育会系のみんな、このあと、紹介させてもらうからな〜!」
竜司は、移動用フロートの下から這い出してきた各体育会系の面々に声をかけたあと、
「続いては、アクロバティックなパフォーマンスでパレードに彩りを添えてくれた体操部と新体操部から、白井部長と田中部長! ステージにどうぞ!」
と呼びかける。
すると、フロートのそばに集まっていた体操部と新体操部のメンバーの中から、二人の部員が飛び出してきた。
そのまま、ステージに上がってきた二名は、
「いや〜、こんなに盛り上がってくれるとは思わなかったよ」
「ホント、最初は上手く出来るか不安だったけど、楽しんでもらえたみたいで良かった」
と、それぞれ感想を口にする。
そして、
「このあと、体操部と新体操部は、体育館で合同の見学会を行います! オープン・スクールに参加してくれているみんなも、ぜひ、見に来てね!」
と、自己宣伝を忘れずに付け加えた。
「体操部と新体操部の皆さん、慣れない屋外でのパフォーマンスありがとうございました。さて、お次は、パレードの盛り上がりに欠かせない華麗なダンスを披露してくれたダンス部から、伊原部長! よろしく、お願いします」
よどみない進行ぶりを発揮する竜司の言葉に、体操部や新体操部と同じく、移動式フロートのそばで待機していた一群の中から、
「は〜い!」
と声をあげ、ダンスの衣装に身を包んだ女子生徒がステージに駆け上がる。
「いつもは、自分たちだけで踊るんだけど、こうして他の部とコラボするなんて初めてだったから、新鮮でとっても面白かったよ! また、機会があったら、こういうパレードをやってみたいな! ね、みんな?」
舞台に立ったダンス部の伊原部長が、そう言って壇上に立つ各クラブの主要メンバーに問いかけると、
「うん!」
「賛成!」
という声があがった。
ステージ上の声を確認したダンス部部長は、
「というわけで、秋の学園祭も期待してね〜! あと、私たちダンス部も、絶賛、部員を募集中です! 高校ダンス部選手権で輝きたいヒトは、ぜひ、見学に来てみてね!」
と、付け加えた。
伊原部長の言葉を引き継いだ竜司が、
「え〜、知らない間に次回予告をされたわけですが……コレ、秋にもやる感じなんでしょうか?」
広報部部長の花金鳳花に確認を取ると、
「言い出したのは黒田くんなんだから、最後まで責任を取りなさい」
と、彼女は目を細め、穏やかな口調ながらも、キッパリと断言した。
鳳花の言葉に言外の圧力を感じた竜司は、背中に冷や汗が流れるのを感じつつ、
「承知しました……」
そう返答したあと、続けて、重要なメンバーの紹介を行う。
「それでは、パレード部隊、最後のメンバーのご紹介です! 僕たちの乗るフロートの移動を縁の下で支えてくれた面々、野球部・サッカー部・ラグビー部から、佐藤選手・堂安選手・仲村選手にお越しいただきます!」
ステージ前の万雷の拍手のもと、パレードの終了後、フロートの下部の出入り口から外に出ていた体育会系クラブの中から、二年生の佐藤・堂安・仲村の面々がステージに上がってきた。
「え〜、放送席、放送席! ならびに、ステージ前とミンスタライブで中継をご覧の皆さま! 縁の下でパレードの進行を支えてくれた体育会系の各クラブを代表して、三人にヒーローインタビューを行いたいと思います。まずは、佐藤選手、今の気持ちを聞かせてください」
スポーツアナウンサーばりの口調で質問する竜司に、佐藤が応える。
「そうですね、チームの勝利、いやパレードの成功に貢献できて最高です!」
「続いて、堂安選手はいかがですか?」
「そうッスね! 自分たちのサッカー、いや……仕事をしっかりと出来たことが、この結果につながったと思います」
「最後に、仲村選手、お願いします」
「はい、練習でのスクラムが今日の結果に結びつきました。これも、《ワン・チーム》で結束できたからだと思います」
竜司が、三人の代表者それぞれにインタビュー形式の紹介を終えて、
「体育会系の皆さんは、季節外れの気温の中、パレードのために、本当にがんばってくれました。あらためて拍手を!」
再度、観衆に賞賛のリアクションを求めると、
「ありがとう〜運動部!」
という声が、舞台の上からも、ステージ前からも上がる。
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