第11話 中山 6
中山の嫁を保証人にしてから一週間が経ち、無事本店の方にも付いた事を本店から知らされた。20万を25万にパワーアップしたと言ってたが、まぁ保証会社にも入ってるからその辺はあまり気にはしていない。ただ本店の話では本店に辿り着く一週間の間にもうすでに3件走ってるという話だった。つまり本店とウチをを含めてすでに5件。なかなかスピーディーな展開だが、歓迎できるものではない。このままだと一ヶ月後には全部入ってそうかな。まともに営業してるんか、少々心配になってきた。
そんな事を心配してた週末に、友人と居酒屋へ飲みに行く事となった。友人が聞いてくれよ!と愚痴を聞く為であったのだが、これに関しては聞くに堪えない自業自得案件であった。乾杯を済ませて何があった?と聞いたのだが、
「聞いてくれよ!嫁がな、離婚離婚ってうるさいのよ。」
「嫁さんが離婚離婚って言ってるのは、それ相応の理由があるんちゃうの?まぁ察するにお金の事か女の事かってトコだろうけど。」
友人はバツが悪そうに、
「なんでわかるんだ?実は一回浮気がバレてな。けど一回だけだぞ。一回くらいでそんな目くじら立てる事ないやろ?」
「アホか。それはオノレの理屈じゃろ。一回くらいと言うが、お前嫁さんがお前と同じく、他所の男に一回抱かれても同じこと言えるか?お前が仮に許せたとしても、嫁さんにはその一回が許せれんのやろ。簡単に言えば、お前はお前の理屈で嫁さんを言いくるめようとしただけや。お前の理屈は嫁さんの理屈とイコールではないんだわな。自業自得としか言えんからまぁ頑張れ。」
けどけどでもでもだってだってと、なかなかしつこく食い下がる友人に対して俺は、
「お前は俺に同意してほしいの?同じ男でも価値観違って当たり前だから、どこまで行ってもお前の考えには賛同出来んわ。お前が今何を言っても俺に刺さる言葉はない。お前は嫁さんが他の男に抱かれるのは嫌なんやろ?自分がやられて嫌な事を人にはしてもいいって理屈がおかしいわ。それがたった一回でもな。子供じゃあるまいし。」
「俺はどうしたらいい?」
半泣きの友人に、
「ただひたすら謝れ。土下座でもなんでもして謝れ。お前が妙なプライド捨てて、ただひたすら謝ればワンチャンあるかもな。お前のプライドなんぞ、屁のツッパリにもならん。離婚したくなければ、嫁さんの条件飲むしかなかろう。」
友人は項垂れてしまった。俺は浮気云々に関しては少々持論があって、そのもの自体は別に悪くないと思っている。実際俺も今まで付き合ってきた女性に浮気はされた事も多々あったが、それ自体を責めた事はない。むしろ浮気をしてしまうほど俺には魅力がなかったという思いの方が強い。だったら浮気を認めるのか?と言われるとそれもちょっと違う。今まで付き合ってきた女性にもずっと言ってきたが、
浮気をしたけりゃすればいい。したいなら相手がした時も文句を言うな。しかしそれが発覚した時、その先一緒に居るかどうかは別問題である。浮気を責める事はしないし怒る事もないが、その人間性に関しては信用できなくなる。もちろん、俺がした時も信用してくれなんて都合のいい事は言わない。
まぁ変な理屈かもしれんが、基本的には自分がやられて嫌な事はしない。自分がやってる事は相手にやるなとは言わない。である。そこに男のくせにとか、女のくせになどという性別がどうのこうのという言い訳は存在しないのである。
しょんぼりしてる友人だったが、離婚はしたくないみたいなのでとりあえず謝ってみると言っていたのだが、
「それがイカンのや。離婚したくなければ、とりあえずではなく全力で謝れ。お前のちっぽけなプライド捨てて、嫁さんの条件を全部飲め。足を舐めろと言われたら舐めろ。それくらいの覚悟を持って謝れ。」
そんな話をしてると友人も腹決まったみたいで、
「わかった。全力で謝ってみる。お前に聞いて貰ってよかったわ。今日はオゴるから飲もうぜ!」
帰って謝ったらいいだろとは思ったのだが、オゴって貰えるという友人の言葉にワイは・・・負けた・・・。
居酒屋を出ると、友人が
「会社の先輩に何度か連れてって貰った店あるから、そこ行こう。騒がしいけど楽しい店だぞ。お客さんに女の子が多い店だから、楽しく飲むにはいいぞ。」
ふーん、そんな店に男が行っておもしろいもんかのぉと思ったが、オゴリという言葉に俺はホイホイと付いていった。なんて簡単な男なんだ、ワイは。
友人と歩く事10分弱、俺は・・・、
中山の店である【ジャスティス】の扉の前に立っていた・・・。
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