第4話 クラウドバレーの街
町に到着し、しばらく町の中を歩いていた。
家はほぼ洋風な木造建築で、外は普通に人が歩いている。だが、人がいると言っても、目は人間とは違う綺麗な色で澄んだ目をしていて、しっぽが生えている。
サッカーをしている子供たちもいる。
「行くぞオアアア」
「こっちこっちオアアア」
スリーグ「皆楽しそうだな。」
スリーグは半ばぼんやりした様子で当たりを見回して呟いた。
スワン「うん、でも特になにかあるような街ではないね。」
スワンは何か奇妙な違和感を感じていた。と言っても、人が普通じゃないのも知っているし、ここが地上とかけ離れた所なのも重々承知している。
ツーリン「と言うか、おじいさん探さないとね。」
スワン「あ、そうだね。」
スワンは通りかかって来る普通の青年に話しかけた。
スワン「あ、すみませ……」
その青年はこちらを遮って話してきた。
マイケル「どうした。どうしたも何もお前は恐らくおじいちゃんを探しているだろう。あそこの家だ。」
マイケルは一回り大きい家を指さした。
スワン「え、あ、ありがとうございます。」
マイケル「長生きしろよ。」
マイケルは微笑むと、スワンたちの横を颯爽と歩き去って行ってしまった。
スリーグ「ここの人間は皆癖強いのかな……??」
ツーリン「だね、アメリカでもこんなノリじゃあないわよ。」
3人はここの洗礼みたいなのを早速受け、おじいさんの部屋の前に3人で並んだ。
スワン「おじいって書いてあるな。ここでいいのかな。」
スワンはドアをコンコンとノックした。
中で物音がすると、おじいさんがドアから出てきた。
そう、あそこで出会ったおじいさんだ。
「なんじゃ?」
おじいさんは寝ぼけた目をしてスワンたちを一瞥した。
「あぁ、あんたらか。中入る?エアコン効いてるよ」
おじいさんはまるで友達でも来たような感じで家に案内した。
地上ほどでは無いが天界も一応暑い。
スワン「あぁ、じゃあ、おじゃまします。」
ツーリン「お邪魔します!」
スリーグ「お邪魔します……」
中は雑貨だったり植物が飾ってあって、オシャレで掃除も隅々までしてある居心地の良い家だ。
おじいさんに案内されるまま奥の部屋へ入った。
そこはリビングみたいで、少し広い。大きめの木のテーブルに少し年季の入った4つの椅子。そのうち2つら少し色褪せていた。
「そこ座ってて」
おじいちゃんはそれだけ言い残すと、そそくさとキッチンの方へ向かって行った。
スワン「(冷蔵庫がある……結構文明は発展してるのかな。)」
スリーグ「(電球……LEDか。天界ではどうエネルギーを作るのかな。)」
ツーリン「(ドラクエしたい……)」
おじいちゃんはカップに注がれたお茶を持ってきた。
「熱いのは見りゃわかると思うから気をつけて飲め。」
おじいちゃんは洋風なカップを3人の前に置いた。
スワン「ありがとうございます」
ツーリン「ドラキー……あ、ありがとうございます」
スリーグ「ありがとうございます。いただきます」
スワン「(うん……美味い。上品で立体的な香りだ。)」
ツーリン「あっつ!!!!!!」
スワン「ツーリン、大丈夫?気をつけて飲みな。」
ツーリン「あ、大丈夫だよ!ありがとうね!」
スリーグ「(ケッ。)」
スリーグ「ところで、この茶葉は何を使っているんですか?」
おじいちゃんが飲んでいたカップを置き、深いため息をした後に答えた。
「この茶葉は、隣の森から取ってきた良さげな葉っぱじゃ。ワシの摘んできたものだから絶対体にいいし美味しいはずじゃ。」
スリーグ「なるほど、地上と天界で植物は違うんですか?」
「まあ、だいたい同じじゃ。ほうれん草とか、麦とかあるぞ。でも天界オリジナルの植物はある感じぢゃ。」
スリーグ「なるほど……。」
スリーグは視線をお茶に落とし、再びお茶を飲んだ。
ツーリン「熱い!!!!」
スワン「お、おちつけぇ!!!!ツーリンのお茶誰も取らないから!しっかり冷ましな!」
ツーリン「えへへ。」
ツーリンは照れた様子でスワンに笑顔を見せた。
こんなこと普通あざとい系女子しかしないけどツーリンは純粋な女の子だからね。
スワン「(お茶飲むの下手だな……可愛いけど。)」
スリーグは怒りと哀しみが混じりあった感情を胸に2人を呆れたように見ていた。
3人ともリラックスしたところで、おじいちゃんは椅子に座り直した。
「えっと、本題に入るぞ。まあそなたらには王を倒すための旅に出ないといけない。そこでじゃ。そなたらに身につけて欲しい不思議な力がある。呪文、戦技、母力じゃ。3人でこのうちどれかを身につけられる。それは最近隣の森の集落に出来た所で身につければよかろう。どんな力かは忘れてしもうた。」
「あと、道中敵に絡まれることもあるはずじゃ。なので、えーと、スワン、か。ソナタにはこの家にあった木刀をさずける。」
スワンは木刀を受け取った。少し古くて、持ち手の所には包帯が新しく巻かれていた。
「ツーリンは……うーん。そなたはきっと素手で戦うタイプだよね。」
ツーリン「もちろん!大抵の男子だったら拳1発で戦意喪失させるくらい訳ないわよ!」
スワン「(こわ…。)」
スリーグ「(吉田沙○里…。)」
「そうか。なら拳へのダメージを軽減するためにどっかでグローブやこてを買った方が良いな。」
「スリーグは…うーんと。特に武器は無いが素手で戦えって訳では無い。きっと不思議な力で戦う必要があるな。」
スリーグ「じゃあ、次の街まで僕はやる事ないって事ですか。」
「そういう事じゃ。」
スリーグ「嘘やん…」
スワン「スリーグは、石でも投げてれば……?」
スリーグ「そ、そうだな。そうするわ。」
「あ、あと、スワンにこれを渡しておく。ミサンガとスマホ。」
スワンは水色と黄色で作られたミサンガを受け取った。何の変哲もないスマホも受け取った。
スワン「あ、ありがとう!」
「ミサンガはまあ付けておけ。スマホじゃが、ただのスマホじゃなくて、必要な道具や物、食材などを取り出したり、貰ったものを圧縮して中に入れておく事ができるぞ。」
スワン「す、すごいなぁ!!!」
「あ、あとお金。この世界の通貨は$じゃ。うちもそんな金持ちじゃないから、50$渡しておくぞ。ただ、この世界では1$は、日本だと……100円って事になっておるぞ。」
スワン「わかりました!!」
「それじゃ、気をつけてな。」
スリーグ「お世話になりました!さようなら!!!」
「じゃあな。」
3人は家を出た。
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