【NGシーン】【閑話】ボツにしたドラゴン討伐の話(本編と関係ないので読まなくても全く影響ありません)

◆お知らせ◆

この【閑話】は元々第四章の第十三話と第十四話の間にあったものを、お知らせしていたと通り第四章のラストに移動しました。


◆このエピソードはもともと第四章 第五話で書いていたものです。商隊とのやり取りに差し替わってボツにしました。なので推敲も一度読み直ししただけです。

『一行の馬車が走り出すとウィリアムズ伯爵家の面々が、使用人まで総出で手を振って見送っていた。』


 ↑の部分から先が置き換わる感じです。


 なお、一部表現はこの先のエピソードで使い回してます。




閑話とかいいから早く本編進めろよ、ですよね。

予定になかった更新なので許して下さい!

ごめんなさいごめんなさいごめんなさい



――以下本文――


 そうしてシンディーが御者台に、ソフィアとポーラ、ニコラの三人がキャビンに乗り込み、最後に優弥が踏み台に足を乗せたところで、突然それは起きた。


 ハリウッド映画にも出演したことがある、有名な"ゴ"がつくあの怪獣のような雄叫びが聞こえたのだ。


「なっ! ま、まさか!?」

「ん? デカっ!」


 声のした方に目を向けると、巨大な鳥のような物体が近づいてくるのが見えた。


 途端に宿場町の悲鳴が聞こえてくる。伯爵家の使用人たちも天を仰ぎ、絶望に打ちひしがれていた。


「なぜドラゴンが……!」

「閣下、あれってやっぱりドラゴンなんですか?」

「そうだ! 終わりだ、何もかも……」


「えっと、あれ、ブレスとか吐きます?」

「ユウヤ殿は何を悠長なことを!?」


「いえ、撃ち落とせると思うんですけど、今落とすと町に被害が出ますよね」

「なっ!? ドラゴンを撃ち落とせるだと!?」


「ええ、多分。ただブレス吐くならその前に落とさないと被害が大きいでしょうし」

「ブレスというのが何かは分からん……」


「あ、口から火とかを吐くのかってことです」

「いや、それはないと思うが……」


「そうですか。ならどこか広いところに誘導した方がいいですね」

「ゆ、誘導!?」


 伯爵邸の裏にちょっとした林があったが、そこに落として問題ないかと尋ねると何でもいいからやれるならやってくれと頼まれた。


 大きさから察するに、あのドラゴンは以前ポーラから聞いた村一つ食い荒らしたという奴と同一の個体だろう。つまり人の味を覚えた魔物ということだ。討伐しない選択肢はない。


「閣下、アイツは俺がやっつけますけど、そのことは箝口令を敷いて頂けませんか?」

「それは構わんが、本当に倒せるのか?」

「ま、見てて下さい」


 優弥は無限クローゼットから野球ボールほどの石を取り出すと、追尾投擲スキルで上空を旋回しているドラゴンに向かって投げつけた。距離は目算だが三百メートルほど。狙いは巨体にはあまりにも似つかわしくない小さな腕の付け根である。


 ひとまずどのくらいの効果があるのか分からなかったので、乗せるSTRは5千ほどに抑えた。


「ゆ、ユウヤ殿?」

「やはりあの程度じゃもげたりはしないか」


 伯爵はもちろんそこにいた者たちは全て、その瞬間を目撃した。彼が放った石は真っ直ぐにドラゴンに向かい、その左腕に見事に命中したのである。さらにドラゴンがバランスを崩したものだから、驚きも倍増だった。


「まさか……まさかあれほど遠くまで……」


「さて、こっちに来ますよ。あ、そうだ。あれ倒したら素材として頂いていいですか?」

「うん? あ、ああ、構わん」


 そんな会話を交わしていたが、ドラゴンの方は優弥に向かって怒りの咆哮を轟かせた。そして数回の羽ばたきの後、猛スピードで向かってきたのである。


「ユウヤさん!」

「ユウヤ!」

「「旦那様!」」


 馬車から飛び出していたソフィアたちが、悲痛な叫びを上げた。先ほどの一発が効かなかったと思ったのだろう。四人の顔からは血の気が引いている。


「心配ないよ。危ないから伏せていてくれ」

「でも……!」

「大丈夫だから」


 そして彼は伯爵に顔を向ける。


「多分平気だと思いますけど、お邸が壊れたらすみません」

「邸などどうなっても構わん! 早くやっつけてくれ!」

「分かりました」


 彼はタイミングを計る。あまり近づかせ過ぎるとドラゴンが邸に突っ込んでしまうからだ。ある程度の高度がある時に撃ち落とせば、そのまま慣性の法則に従って邸を飛び越えていくはずである。


「ここだ!」


 そして再び野球ボールほどの石を、今度はSTR50万に上げて投げつけた。狙いはドラゴンの眉間、脳ミソである。いかにドラゴンが強くても、脳ミソを撃ち抜かれて生きていられるわけがない。


 かといってSTRを乗せ過ぎると、素材としての価値が下がる可能性がある。故になるべく小さな石で、頭に風穴を開けるだけに留めようとしたのだ。


 音速でこの至近距離から飛んでくる小さな石を、ドラゴンが避けることは出来なかった。避けても優弥の視界にいる限り追尾されるので結果は変わらないが、今回は力加減がうまくいったようだ。


 予定通り石はドラゴンの眉間から後頭部へと貫通した。そして制御を失った巨体は、伯爵邸の屋根のわずか数センチ上をかすめ裏の林に墜落したのである。


「ふぃー、やっつけましたよ、閣下」

「ま、まさかあのドラゴンを……」

「ユウヤさん! ユウヤさん!」


 ソフィアが抱きついてきたので、さすがにこの状況でポーラの平手打ちはないだろうとしっかりと抱きしめた。


「なんということだ……」

「ユウヤ様、ありがとうございます!」


 エルシィ夫人がソフィアごと優弥を抱きしめた。ポーラにシンディー、ニコラを始め、伯爵家の令息令嬢や使用人たちまでもが駆け寄ってくる。


「よし。それじゃドラゴンを回収して王都に帰るか」


「ま、待て、待ってくれ。さすがに今帰られると……」

「今帰らないと町の人たちが押し寄せてきますよね」


 ドラゴンの死体を無限クローゼットに収め、優弥たち一行がウィリアムズ伯爵邸から旅立ったのは、それからわずか三十分後のことだった。




スタッフ「はい、カットでーす!」

作者(白田)「監督、どうすか?」

監督「んー、ここでドラゴン展開とかなくね? ボツで」

作者(白田)「ガックシ」


監督って誰よ、というツッコミはナシでおなしゃす!

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