phase.3
何も見ていない、それなのに全身に鳥肌が立つ。
寒いと感じるのはこの部屋が冷えているのか、それともこの部屋にいる"何か"のせいなのか私には分からなかった。
分かったのは、逃げなきゃ死ぬということだけだ。
本能的にその場から離れる。
するとさっきまで座り込んでいた剥げかけた床は、大きな穴へと変わっていた。
その綺麗な円はたまたま崩れたなんて状態ではなく、まるで強い酸で溶かされて出来たような穴だった。
床が消えた以上入ってきた扉にはもう戻れそうにない。見渡す限り他の扉もない。
とにかく壁や床を調べては抜け道がないか探し回った。
結果、この部屋には何もなかった。扉も鍵も怪物の姿も。
絶対に何かいる気配はあるのだ。しかし床には生ゴミのような物体が散乱しているだけ。そうやって何も出来ずにいるとすぐ隣に穴が空いた。床は穴だらけになっていた。
逃げ場は完全に断たれ死を覚悟した時、穴の奥が微かに光る。気付けばその光を追うように穴の中へと飛び込んでいた。
―
「シロちゃん…」
突然現れた黒い影にシロちゃんが突き飛ばされたかと思うとさっきまで開かなかった扉の奥に閉じ込められていた。
慌てて影の化け物を押しのけて扉を開けようとしたがびくともしない。それならば、と思い切り扉を蹴り破ろうとした瞬間、酷い頭痛に襲われた。
立っていられない程の頭痛に思わず倒れこむ。影の化け物が覆いかぶさると何かを調べるように体中をペタペタと触りだした。
「やめ、ろ…」
そう口にするのが精一杯で振り払うことも出来ずにそのまま気を失った。
いつのまにか影は消えていた。
『 これはちがう 』
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