第54話 派閥
ライテンベルク帝国では各地の領主が広範な自治権を主張した結果、領地を跨いだだけで通行料や関税を徴収される。
自分の領地の産業を守りたいという意図や、街道沿いの領地である為、通行料が大きな収入源になっているという領主もいた。
しかし、その結果として帝国全土に渡る大きなビジネスを興すことが難しくなった。
また、地方領主と結びついた古い商会が優遇を受けているため、その地での新規参入が難しく、自由な市場競争が阻害されていた。
これらの様々な要因が絡み合い、ライテンベルク帝国の経済発展がが隣国の後塵を拝す結果となったのだ。
さらに、近年では海外の新大陸で植民地を取り合って帝国は周辺国と緊張状態にある。
大陸最強と謳われたライテンベルク帝国軍は大昔の話であり、この国の軍隊は装備も戦術も旧式である。
これらの事情に鑑み、ライテンベルク帝国内でも危機感を抱く者たちが現れた。
彼らは中央集権化によって、皇帝の下に挙国一致体制で経済発展や軍備増強を急ぎ、周辺国に対抗しようと考えた。
だが、彼らの動きに対し反発する勢力もあった。
従来の既得権益層である地方貴族達である。
彼らとしては関税や私兵を手放すなどもってのほかであった。
こうして軍備増強を願う貴族や自由競争を望むブルジョワジーの平民が中央集権化を目指して集まって「皇帝派」と呼ばれるようになり、既得権益の保護を狙う地方貴族たちが集まって「貴族派」と呼ばれるようになった。
現在、ライテンベルク帝国議会の参政権は貴族しか持っておらず、議会は「貴族派」議員が優勢であった。
皇帝の書いた法案が否決されることもしばしばあり、両派は激しく対立していた。
「貴族派」の者たちは皇帝を単なる軍事同盟の代表者程度に考えており、ひるむことはない。
そして、両派の対立を決定づける事件が起きた。
帝国議会で皇帝発案による関税撤廃の法案が否決された翌日、皇帝派貴族たちの間で独自の関税協定が結ばれた。
皇帝派貴族たちの領地では関税が全て撤廃され、また、自由な商業活動を奨励する共同宣言まで出された。
さらに、関税協定と同日には軍事協定も結ばれ、有事の際には領軍の指揮権を皇帝に預ける旨が取り決められた。
これらの行いに貴族派の者たちは激怒した。
そして彼らは堂々と非難声明まで出し、両者の対立は新聞にまで載った。
現在、ヴェルナール伯爵家は「皇帝派」、コンラート公爵家は「貴族派」に属しており、対立関係にあった。
これらの事情から皇太子がヴェルナール伯爵家に肩入れするのは当然と言え、また、コンラート公爵家の嫡男が皇太子を恐れないのも当然だった。
そしてこの政治的対立は学園内にも持ち込まれた。
特に学科の性格によってその生徒の属性に偏りがあることが原因だろう。
魔術師を養成する魔法科は生まれ持っての魔力量が成績に大きく影響することから貴族家の出身者が多い。
それに対し魔道具科や政治学科は平民枠の生徒が固まっていた。
グスタフやその取り巻きたちの多くが魔法科であり、彼らと同じ授業を受けなければならないのは恐らく今年くらいだろう。
来年からは校舎も分かれる。
こうして僕とラウラは派閥対立の渦中で学園生活を送ることとなったのだ。
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またまた、多忙につき、ストックが尽きました。
あと、ひと踏ん張り……(フラグかな?)
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