第17話(ラウラ視点)金髪 対 銀髪
エルヴィンが2号店の支配人になった。
ふっふ~ん♪ このお店で一番エラい人~♪
ここまで来れば、あのパン屋さんの経営が本当に上向いたんだということを私でも理解できる。
先週の日曜日。
エルヴィンと一緒にこの店の人へ挨拶に来たとき、あの子は危ないと思った。
エルザ。
金髪の女の子。
私と同じ10歳。
綺麗な子だった。
エルヴィンにベタベタしてた…………。
ハインツさんから優秀な子だと聞いて目の色変えるなんて。
今は開店キャンペーンで人が多いのかもしれないけれど、確実にお客さんは増えてます。
特に毎日ポイントカードを出す常連さんが着実に増えています。
「あらぁ、ラウラちゃん。2号店に移ってきたの?」
「はい。2号店の人が足りなくて……」
「そうだったの。私も家の近くでヘンゼル・ベーカリーのパンが買えて便利だわ。前まで遠くて頻繁に行けなくて。ここなら仕事帰りに寄れるの」
「ありがとうございます」
やっぱりエルヴィンの目論見は当たってる。
固定客の獲得は着実に進んでる。
でも、特にここは立地が良いと思います。
通りを歩いている通行人がフラッと軽食を求めて立ち寄ることもよくあります。
雰囲気と、カードの有無で何となく察せます。
まぁ、後はハインツ・パンショップからの引継ぎ客も多少はいる印象ですね。
「あら? 新しい店員さんね?」
「はい」
「エルザちゃんも元気かしら?」
「はい。あの小むすm……、エルザは本店へ修行に行っています」
そう、あの金髪娘は本店で店員をしている。
ポイント制度やら、値札を出すことであったり、置き看板や掃除などなど、ヘンゼル・ベーカリーのノウハウを学びに行っているのだ。
というより、私が行かせた。
「エルヴィン君? お父さんのお店、守ってくれるんだよね?」
「うん。お店の名前は変わるけど、必ずいいお店にするよ」
「ホント? エルザ、楽しみだなぁ。エルヴィン君、頼もしい!」
「ハハハ……」
この店の支配人はエルヴィンになるんだ。
彼をあの子と二人きりにはさせない。
「ねぇ、エルヴィン?」
「んん?」
「私もエルヴィンと2号店をお手伝いしようと思うの」
「そうだね」
「え、えっ? エルザ、このお店のことよく知ってるよ? 多分、大丈夫だよ?」
「今日からこのお店はヘンゼル・ベーカリーの流儀に従ってもらいます。接客から、お店の開け方、商品の並べ方まで、全部変わるんだよ? エルザも本店で勉強しておいた方が良いんじゃない? お父さんのお店を守りたいんでしょ?」
あぶないあぶない。
あの女、エルヴィンの後ろで私を睨んでました。
今まで可愛いからってチヤホヤされてきたんでしょうねぇ?
私からエルヴィンが奪えるとでも?
今晩はいつもより念入りに彼にマーキングしないと。
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