リベルターズ ―ドン底から始まる人生奪回—

大和 たけし

プロローグ 僕は

 どさり、と遠くで何かが床に倒れる音がした。


 その音とともに、とてつもない激痛が体中に走ったことで、今床に倒れこんだ音を発したと思われる物体の正体が自分の体であったのだと自覚する。


 それにより、手放しかけていた自分の意識が急速に戻っていくのを感じていくのに比例し、体が引き裂けてしまうかのような痛みと、身を焼き尽くしてしまうかのような熱すらもよりはっきりと、激しさを増していく。


 あまりの痛みに反射的に体が痛みから逃げるように動いてしまう。


「っっ——!!!」


 体を動かそうと力を入れるだけで激痛が走り、声にならない声が出る。


 これ以上動けばさらなる激痛が襲い来るであろうことに一瞬で想像がついたのやめた。

 いっそあのまま意識を手放しさえできていれば、どれほど楽だったであろうかと思う。


 体は動かせないことを身をもって実感したあとは、せめて自分の周りをの状況を確認しようと、自分の体へと視線を這わせる。


 あたりは暗闇が支配しており、自分の姿すらはっきりとは視認できないが今自分の体がとても大丈夫とはいえない状態であることは見えずともはっきりとわかる。


 少し視線を周りへと彷徨わせてみると、小さな格子窓からわずかに月明かりが差し込んでいるのがわかる。


 そのおかげか、やがて少しずつ目が慣れてきて、徐々に自分のいる空間の内装が見えてくる。


 5メートル四方ほどしかない空間に、先ほどからこの部屋に月明かりをもたらしてくれている小さな格子窓。


 自分がこの部屋に放り込まれるときに使われたであろうあろう鉄製の扉。


 壁にはうっすらと何かのシミのようなものが確認でき、そして夏であるはずの今の時期でもひんやりとしている粗雑なつくりの石の床。


 当たり前ではあるが生活感などあるはずもない、いかにも牢屋でございますといった殺風景な内装だった。


 しかしドクドクと高熱を発している今の自分の体には、この床のひんやりとした感触はむしろ心地よさすら感じる。

 

 ともあれ変わらず体は動かせない上、痛みや高熱も健在なため、思考を巡らそうにもうまく頭が回らない。


 これから先、自分が生き残るためにどうするべきか何度も考えようとするも、すぐさま思考が痛みによって塗りつぶされる。


 精神的に成熟した人間ならば、もしかしたら耐えられたかもしれない。


 だが生まれてから九年程度しか生きていない自分の精神力ではとても耐えられたものではない。


 みるみるうちに焦りや恐怖に思考も感情も支配されていく。


 自分はもしかしたらここから一生出ることは出来ないのではないか、もうどうしようもない、痛い、苦しい、誰か、助けて、なんで自分がこんな目に、取り止めのない負の感情ばかりが渦巻いて行く。


「たすけて」


 ふと、こことは違う部屋から声がいくつも聞こえてくる。


 自分と同い年くらいの子どもの声だ。

 おそらく自分と同じくこの場所に無理やり連れてこられたのだろう。


 当たり前だが、そこには幸せそうな声は一切なく、声の種類はみなバラバラだ。


 しかし内容は自分が心で思った内容と同じく、今の自分たちの状況に対しての嘆きばかりだった。


 まるで自分の心を客観的に聞かされているような感覚に陥り、自然とその言葉に耳が傾く。


「たすけて」「いたい」「なぐらないで」「ここからだして」「おとうさんおかあさん」「こわい」「だれか」「さむい」「いやだ」


「しにたくない」

 

 しにたくない、誰かが言ったその言葉が不思議と頭の奥底まで刻まれるようだった。


 しにたくない、、、、しにたくない、、、しにたくい、、しにたくない、しにたくないしにたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたく、ない、、死にたくないっっっ!!!!


 死にたくない、その言葉が頭の中で幾度も木霊する。


 いつのまにが自分の声で何度も何度も頭の中で繰り返される。



 その後自分の中に湧き上がってくるものは怒りと憎悪だった。


 死にたくない。そうだ。自分は死にたくない。


 痛い?苦しい?ふざけるな、そうやって泣き声をあげ続けたって誰も自分(お前)を助けてくれない。


 考えろ、自分(お前)はここで死にたいのか?いやだ。ならば考えろ、考えに考えぬけ、たとえ死の瞬間が来ようとも、力及ばないとわかっていたとしても、生きることを諦めてなんかやるもんか。


 再び体に力を入れる。

 当然激痛が体を襲うが構うものか。


 先ほどまで自分を絶望へと突き落とそうとしていたはずの体の痛みや絶望も、今は生きるための活力、執念へと変貌していた。


 そのまま右腕を天井へと掲げてグッと握り拳をつくり、決意の言葉を口にする。


「ぼ……くは…………ぉ……れは………………おれは……。」


 ―—生き抜いてやる


 その言葉を言い終きるまえにプツッと糸が切れたかのように、自分の意識は闇へと落ちて行く。


 ここから彼、平凡で平和なはずだった少年、コウの運命は大きく動き出していく。



 ———————————————————————


 ご挨拶


 読んでいただきありがとうございます!!


 初投稿ですが、楽しんでいただけるようこれから頑張っていきたいと思います!


 感想、誤字脱字の指摘、アドバイス等いただければ幸いです!

(毎週木曜日に投稿予定)


 

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