3-2 新しい友達
午前八時四十五分の教室に入ると、談笑していた生徒たちが「おはよう」と続々と声を掛けてくれた。私と同じ短期大学からの編入組と、四月から知り合った面々だ。夏らしい涼しげな
リュックから英語の教科書を取り出していると、「澪ちゃん、おはよう!」と今日の太陽みたいに明るい声が降ってきた。すぐ隣を見上げた私は、大学三年生になってから友達になった女の子に微笑んだ。
「
「今日も暑いねえ。あっ、ワンピース可愛いね」
そんな巴菜ちゃんに褒められると、私はいつも照れてしまう。「ありがとう」と伝えると、「澪ちゃんは今日も可愛いなあ」と言われるから、「巴菜ちゃん、今のは少しおじさんっぽいと思う」と言い返すところまでが定番だ。巴菜ちゃんは、私が机に拡げたルーズリーフを見ると、大きな目をさらに見開いた。
「澪ちゃんは、今回も一限の予習が完璧だね」
「完璧かどうかは、分からないけど……英語は、特に頑張りたいから」
「すごいなぁ。英語の講義ってだけでプレッシャーなのに、英会話教室まで通い始めるんだもん。今日はレッスンの曜日だよね? あたしには絶対に真似できないし、偉すぎる。
幼馴染だという男の子の名前を出して、巴菜ちゃんはしみじみと言った。ちょっと私を持ち上げすぎている気がしたので、「
「澪ちゃん、忙しすぎじゃない? あんまり無理しちゃダメだよ?」
「ありがとう。気をつけるね。今日はゼミがないから、そこまで忙しくないよ」
「でも、代わりにバイトがあるんでしょ?」
「うん。でも、今は頑張りたいんだ。目標があるから」
「ああ、彼氏さんのため?」
思わぬ指摘を受けて、私はひっそりと
「海外留学に行く間、待っててって言われたけど……会いにいっちゃだめってわけじゃないし、そのときに堂々と会いにいけるように、言語の壁で彗を困らせたくないの。それに……」
最後まで言う前に、チャイムが鳴った。男性の英語教師が入ってきたので、巴菜ちゃんが「ああー」とつらそうな
「ねえ澪ちゃん、英会話教室って楽しい? あたしもアリス先生に教えてもらったら、苦手意識がマシになるのかなあ」
巴菜ちゃんは小声でひそひそと言ったけれど、地声が大きいので教壇まで響いたようだ。
次に当てられるのは、私だろう。少しだけどきどきした私は、
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