5章147話 ドキドキクッキング
しばらく楽しんだ俺たちは裏方の調理場にいた。
「司、今戻った。」
「楽しめたか?」
「もちろん!」
「なら良かったな。それじゃ交代するか。さっき追加補充はして来たからそこまで忙しくはならない筈だ。」
今日はもう調理場で追加補充を作るだけの仕事になる。司はと言うとーーーー
「んじゃ行くか。」
「はい!」
意外にも澪と周るらしい。てっきり緋真姉と回りたがると思ったんだけどなぁ。
「澪が一般公開するまでの間回らない?って言って説得したらしいよ。緋真姉とはその後回るつもりらしい。正念場だね!」
なるほどな、頑張れ!
「そんじゃ俺たちも仕事に取り掛かろうか。緋翠には味見を頼みたいんだけど良いかな?」
「味見やる!」
可愛いな、撫でたくなって来た。
すると調理場にクラスメイトが駆け込んできた。
「オムライス3つと肉巻き5本頼む!ん?龍堂は交代したのか。血桜さん、少し多いけど頼めるかな。」
「大丈夫!任せて!」
綾には肉巻きを任せる。肉巻きは既に焼くだけになっていて下手に不味くなることはない筈だ。
「ご飯をフライパンで炒めて水分を飛ばして、ケチャップを開いた隙間で熱して水分を飛ばす。別のフライパンに既に刻まれてる、玉ねぎ、にんじん、ウインナーを入れて炒める。ご飯にケチャップが絡まったら野菜と混ぜ合わせてトマトライスの完成!」
あとはオムライスの要、卵だけだな。
「綾ー!卵持って来てくれない?……綾?」
あれ、返事がないぞ。嫌な予感がする。
俺は綾の元まで行くと壮絶な光景が広がっていた。
「おい、なんで肉巻きが真っ黒なんだ?普通ここまでなる前に止めるよな?ん?」
「そ、そのちゃんと焼かないとなーって少し火球を……ね?」
「アホかーー!!どこに魔法で焼く奴がいるかよ!?大人しく焼いてれば良いんだよ!ったく。」
しょうがない、肉巻きはあとで焼くしかないな。
「私が焼く!」
んー緋翠に任せても良いのかな……揚げ物みたいに火傷する訳でもないしなぁ。
「よし!オムライスを作ったら一緒に作ろうか。」
「うん!」
ならさっさとオムライス作らないとな。
俺は卵を研いでフライパンに油を引く。少し多めにするのがポイントだ。これで卵が離れやすくなる。卵を入れたら菜箸で混ぜながら焼く。これでふわふわになる。
「あとはよっと!丸めてご飯に乗せれば完成だ。」
緋翠が目を輝かせて見ていた。きっと自分でもやって見たいんだろうな。
「今度一緒に作ってみる?」
「やる!」
「それじゃ肉巻きを作って行こうか。そこにある肉巻きを5本持って来てくれる?」
緋翠がちょこちょこと歩いて肉巻きを持って来た。可愛いなぁ。
「それじゃあ油をフライパンに引いて……届かないかぁ。」
「はい、椅子持って来たよ?オムライス持っていくね。」
料理はダメだけどこう言う気遣いは凄いんだよな、綾は。
「ありがとう、緋翠ちょっとだけ油を入れてね。そうそう、そのくらい。あとは下にある出っ張りを回して見て?」
「火が出たよ!」
「うん、あとは色が茶色になるまで焼けば完成だよ。たまに回して他の面も焼くようにすると良いよ。」
緋翠は真面目な様子でフライパンを見つめていた。きっと大丈夫だろう。
そんな感じで補充を作っていると怜たちが帰って来た。
「ほら、怜姉少し遅かったじゃない!甘味に引っ張られるから〜」
「ごめんなさい、雪。ちょっと寄り道しちゃって。」
まぁ、そんなことだろうとは思っていたしそこまで忙しくもなかったから良いけどね。
「緋翠ちゃんが作ってるんだ!んー良い匂い。怜姉と違って料理上手だね。」
「そうかなぁ、えへへ。」
緋翠のほうは千奈ちゃんに任せてよさそうだな。問題は怜だ。本人は真面目にやってるのにダークマターが出来る天災料理の使い手だからな。
「血桜さん!オムライス2つに肉巻き4本お願い!あ、肉巻き出来てる分は持ってくね。」
早速注文が入った。肉巻きに関しては千奈ちゃんとマナス、緋翠に任せれば大丈夫。
「私と怜はオムライスを作ろう。ご飯は私が作るから怜は具材を炒めておいて?」
「分かったわ!」
綾の失敗を生かして俺の隣で作ってもらう。うん、ちゃんと炒められてるな。
ご飯を炒めてトマトライスを作った俺は怜に声をかける。
「どう?炒められた?」
「ええ、大体大丈夫よ。」
なんでウインナーだけ真っ黒なんですかねー。野菜の方が焦げやすいと思うんだけど?
「ま、まあ焦げたやつを除けば大丈夫か。あとは卵を焼けば完成なんだけど……やる?」
「流石に失敗なんてしないわよ……………多分。」
まぁ、俺が後ろで見守っとけばいいか。
怜は卵をフライパンに入れて焼き始めた。作り方は覚えてるみたいでちゃんと菜箸で混ぜたりしてるな。ん!?手品かな。一瞬で真っ黒になった気がするんだが。
「えーーっと完成した……よ?」
ダメだ、怜にはお手伝いしてもらうしかないな。まさか何もしてないのにダークマターになるなんて思わなかったんだ。きっと今まで作ってきたダークマターの怨念に違いない。どことなく顔に見えてきた。
「取り敢えず、開いて中身も黒いのか確認するか……意外と中は綺麗なんだな。」
「血桜さん、どう?オムライスと肉巻きは出来た?お、美味しそうなオムレツだね。」
「あーこれ失敗作だから。」
「そんなの?じゃ俺食べても良いかな!いただきます!」
あっ見た目は普通だけどダークマターなんだっ!食べたら死ぬぞ!?
「うん、美味しいけどなぁ。まるで天国が見え……て…きた。」
食べた男子はスプーンを持ったまま気絶した。怜のオムレツを食べれたんだ、きっと本望だろう。南無。
あとがき
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