5章146話 綾と巡る

 怜と別れた俺たちは緋翠を連れて廊下を歩く。数か月前までこんなことになるとは思いもしなかった。綾と同じ学校に通って、友達ができて、娘ができた。幸せすぎる。


「取り敢えず、一年のクラスから回ってみようか。緋翠はどんなところに行ってみたい?」


 全部回るつもりなので正直どこから回ってもいいい。聖火祭は5日間行われ、三日目から一般公開される。だから、緋翠に決めてもらうことにする。この子にとって初めてのお祭りだしな。楽しんでほしい。


「うーんとね、おなかすいたから何か食べたい!」

「それなら、3組が食べ物系の出し物だよ!行ってみよう。」


 俺は綾の勧めで3組の出し物に来ていた。外観は……古民家風か?


「見てみて!じゃがバターだって。それに、ホットドックもあるよ!レッドブルの肉詰めを使ってるんだって。」

「へぇ、良く魔物食材の供給を取り付けられたな。」


 魔物の食材は出回ってはいるが数が少ない。基本は養殖された魔物食材がほとんどなのだが。レッドブルは養殖が難しいことで有名なはずだ。


「うちのクラスにはレッドブルの養殖を日本で許されたとこの御曹司がおるからな。何とかってやつやでー。条件も破格で広告と売った金額の8割でいいと言ってくれたからな。はい!ブル3つにじゃが3つ。まいどー!!」


 ゴクッ!


 食べなくてもわかる……このじゃがバター絶対にうまいッ香ばしいバターのにおいが食欲を刺激してくる。だがその匂いに紛れて何か別のにおいがする……?


「「「いただきまーす!」」」


 すごいほくほくのジャガイモにバターの甘みがマッチしてる!それにこのバターとは違う甘味……シナモンか!!若干の塩身が加わった甘みがまたいいな。


「おいしー!これ緋翠すき!」

「うんおいしい。ホットドッグも食べてみよう……!」


 これまた凄いな……!肉のうま味もそうだが肉汁があふれてくる上にそれ自体が旨い。しかも、癖もなくほかの食材とも調和している。ペッパーなどの調味料はなしでケチャップと野菜、マスタードのみで肉との共存を実現するのは神業の一言だ!


「「「ごちそうさまでした。」」」


 俺たちは3組を出て歩き出す。一年は全5クラス、どこに行こうか。


「この、縁日総合所ってところ面白そうじゃない?4組だからとなりだよ?」

「確かに。食べたし運動がてらいいかも。」


 4組は外観が祭りのような装飾がされ、提灯や紅白のしめ縄後施されていた。


「うわ、本格的―!あ、見てみて射的があるよ!やっていこうよ。」

「確かに射的だけど……浮いて移動する射的なんてアリか!?」


 そこにはふわふわと移動する景品と手前に置かれた銃が置かれていた。


「そこの銃で計5発撃ってもらって当てた商品をもっていっていいですよ。落とす必要はないですからご安心を。それとスーパーレアとして見えますかね?あの奥の方。」


 射的担当の生徒が奥の方を指さす。そう、この会場空間拡張してあって相当広い。目を凝らしてみると15メートルくらい先に何やら浮かんでいる。


「アレに当てるとこちらの商品から好きなのを贈呈します!目玉商品は3日目から行われるミュージックライブの特等席券やら魔道具研作成の身代わりの魔道具(ヘアピン型)などですかね。」


 あのヘアピン綾に似合うかもな。お、色違いで緋翠に似合いそうなのもあるな……。


「よーし、私がやるぞー!緋翠ちゃんにいいとこ見せないと。」


 あれ、たぶん浮かせてるのは生徒の能力だとして、銃って魔道具では?最近綾も魔力を制御できてるけど嫌な予感がする。


「奥の狙うぞー!えい!」


 アッバカ!?そんなに魔力込めたら——————


 幸い銃は暴発こそしなかったが超極太弾によって奥の的は吹き飛んだ。本来のらりくらりと避けるはずだったんだろうなぁ。うちのバカがごめんなさいっ


「―—————あ、おめでとうございます!この中から好きなものをもっていってください。」

「じゃあこれ!はい、緋翠ちゃん。プレゼント。」


 綾はさっき俺が見ていたヘアピンを渡していた。なら俺もいいとこ見せないと。なんだかんだ綾には一番世話になってるからな。


「すぅ―—————今っ」


 俺は集中して手前の景品の間を狙い撃つ。狙うは奥のスーパーレア!発射された弾は狙い通り奥の的に命中した。


「よしっはい、綾いつもありがとう。受け取ってくれると……うれしいな。」

「嬉しい。ありがとう!どう?似合ってるかな。」

「うん、似合ってる。可愛いよ。」

「えへへ。」


「私もやる―!」


 おっと、二人だけの空間にしちゃだめだろう。緋翠がいるんだから。

「よーし、それなら好きなものに当ててみよっか。」

「うん、えい!」


 ドンっ


「は?」


 緋翠の放った弾は綾顔負けの大きさで飛んでいき、子供だからと容赦して空中でピタッと止めてくれた景品全てを吹き飛ばした。幸いなことにノックバック弾だったこともあり商品は無事だったが。


「さすがに全部もらえないのでヘアピンだけもらっていきます……すみません。」


 うん、まさかの魔力モンスターが綾以外にいるとは。予想外過ぎて俺も担当の生徒も言葉が出てこなかった。そのあと水風船すくいや輪投げなどの普通の縁日をやってクラスに戻ることにした。楽しかったな。能力がなかったら今頃何をしてたかな……綾や司の傍に居られなくて腐ってたかも。良くも悪くも二人の幼馴染であることが俺の居場所だったからなぁ。


「いつもありがとう、綾。」

「まだまだ始まったばかりなんだからこれからだよ!ほら行こう!」



あとがき


ここまで読んでくれてありがとうございます!

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日光浴したい私が吸血鬼!?〜レベルを上げるために私は今日もダンジョンに潜る〜


https://kakuyomu.jp/works/16817330651540224663


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