4章125話 本能のままに吸いつくッ

「雪ー!どうした。何かあったのか?」


司は試合後、雪から門を開けたことについて聞くために雪に会いに控え室に向かっていたのだが―———————雪が控室から出てこない。


「おい、雪!いるか?いるなら返事しろ!」


司は雪が無理をして体調を崩したのではと思い控室の扉に向かって声をかける。部屋を開けないのは雪が女子に変化したため無意識的に遠慮していたからなのだが————―—————


「・・・・・・っゕ・さ?」


「!?」


雪の初めて聞くかもしれない弱弱しい声に司は動揺する。急いでドアノブに手をかけて中に入ろうとするが。


「ま、まって!大丈夫だから・・・はぁはぁ」


「大丈夫なのか…?本当に?」


「大丈夫だから先に戻ってて?ね?」


(こんな状態で司の近くに行っちゃ絶対にダメ……)


司は雪の今だ弱弱しい声に尾を引かれながら立ち去ろうと振り向いた瞬間控室から何かが倒れる音がする。


「雪!?大丈夫か!」


司はすぐに扉を開けて控室を見渡すと倒れている雪を発見した。すぐに傍によって雪の状態を観察すると異常なほど高くなった体温と動悸が明らかにしていた。


「雪これどうしたんだ!?さっきの試合の影響か!」


「あ?つか、さ?ダメ離れ、て。近くに来ちゃ、ダメっ。」


雪は司がそばにいることに気が付くと弱弱しい手で司を押す。だが、その異常な様子の幼馴染を放っておけない司は、更に雪に近づく。


「来ちゃダメって言ったのに……はぁっはぁっ!言ったのに近づいた司がいけないんだからね……」


私は溢れ出る飢餓感に負けて司の腕に嚙みつく。暖かくて体の芯まで温まるような味が口の中に広がる。すごくおいしぃ!


「いった!雪何をッ!ん?」


司は球に噛みついてきた雪に驚き振りほどこうとしたが雪の様子を見てやめる。


「もしかして綾の言っていた反動ってやつか?門を開けたからこうなったってことか。確か吸わせとけばいつか正気に戻るんだったな。おい雪、腕じゃなくてここだ。ここに噛みつけ。」


司は左肩を差し出してくる。


「ありがとぉ!イタダキマス!はむっ。」


司は私が嚙みついたことを確認しておんぶしながら移動する。


🔶

「あっ!やっと帰ってきた。司君、雪ちゃん知らない?まだ帰ってきてなくて……」


「それならほら、ここにいるぞ。」


司は後ろに振り向いて雪を綾たちに見せる。


「雪さん!?どうしたんですか!司さんこれは?」


「あー、一応大丈夫だ。ちょっと血を吸いたくなって正気失ってるだけっ、だから。な?」


司にも自分を見ている綾たちの視線も気にしないで遠慮なく血を吸いまくる雪。


「だけって、なんか顔色悪いですよ、司さん。」


「そ、そうだな。少しふらついてきた……おい雪。そろそろ離れてくれ。」


「え~もっとのませてよぉ!あっ!あや~!」


雪は綾を見た瞬間、司から飛びのいて綾に抱き着く。


「えへへ、あやだぁ。ねえねえ、ちのませて?」


「ふぐぅ!いいよぉ!!どんどん飲んで!」


綾は左腕を雪に差し出してぬいぐるみのように持つ。それを司に見せつけてどや顔する。


「あぁ前に見た雪の後遺症ね。————――—あの状態の雪見ると母性本能がやばいのよねぇ。」


千奈が信じられないものを見たという顔で怜と綾を交互に見る。そんなカオスな状態を気にせず澪は司の嚙み跡をうらやましそうに見つめる。


(いいなぁ。私も司君に噛みつきたいぃ。)


「えぇと私お邪魔だったかな……?」


この場で常識人枠は千奈と試合中に観戦しに来た京ちゃんだけだった。


🔶

司たちが帰ってきて十数分後


「あれ?ここは……観戦席?それになんか抱き着かれてる。って綾!?」


正気に戻った雪は抱きついている綾の顔を見て驚く。


「ちょっ、鼻血!というか起きてる!?おーい、おーい!」


「うぇへへへ、雪ちゃんもっと吸っていいよ?」


綾は顔を白くしながらも更に雪に腕を差し出す。


「私血吸ってたの!?あ、反動!っていうか止血!血が止まってないじゃん!」


雪はさすがにもう嚙むわけにはいかないと綾の左腕をなめる。それが綾にとどめを刺した。おもいっきり鼻血を噴き出して後ろに倒れる。


「とどめ刺したな。怜とかが変わろうとしたんだが綾が拒否してずっと吸わせるもんだからどうしたもんかと思っていたんだぞ。俺にも噛みつきやがって。」


「ごめん、司が近づいてきたところまでは記憶があるんだけど……」


「まぁ不用意に近づいた俺も悪かった。それはいいんだがもう大丈夫なのか?」


「うん、限界を超えて能力を使うとこうなっちゃうんだ。血を吸えばもう大丈夫だから。っと【受血】」


綾に血を送って貧血状態を治してあげる。すると綾が起き上がった。


「ありがとう、雪ちゃん。もう大丈夫?血吸う?」


「大丈夫。それにしてもごめん、また吸いすぎた。もう吸わないようにするから……」


(綾を貧血にするまで吸っちゃうなんてさすがに引かれたよな……)


私が落ち込んでいると顔に柔らかいものが当たる。


「大丈夫だからね。どんなに吸っても。私は雪ちゃんが私を頼ってくれるだけで嬉しいんだから!」


「綾……」


「ん”ん”っ少しいいかな?」


二人がいい雰囲気なところを怜が止める。私と綾はそれに気が付いて離れる。周りに人がいるのに恥ずかしいところを見せすぎた。顔が熱い。


「司さんとの試合で門を開けたと聞いたんだけど詳しく教えてくれないかしら。あまりこっちからだとわからなくて。」


「えっと気を失って気が付いたら門の中にいたんだよ。それで新しい力を手に入れて何とか司に勝ったんだ。正直、それがなかったら負けてた。」


「で、門を無理やり開けたからさっきのようになったと。私の時もそうだったんだ?」


「うん、あの時もピンチだったから……」


「雪は門が緩すぎない?毎回ピンチになると開けられるなんて誰かが門を開けてあげてるみたい……」


(やっぱり怜は勘が鋭い……!でも雪鬼だけはほかの人にも黙っといた方がいいよな?明らかにほかの能力と違うし。)


「まぁ雪の特殊性は今に始まったところではないからな……気にしても無駄だろ。それよりエキシビションマッチが始まるぞ。公開賭博だ!」



あとがき

はい、百合っぽくなりましたが必要な回でした(笑)

強すぎる前借には反動がないとね!


最近フォローやハートをくれる人が増えてきました!その勢いで星も押してくれると嬉しいです!

これからも投稿するモチベが上がるので!


pixivにてキャラのAIイラストを投稿してます

https://www.pixiv.net/artworks/104230660

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