3章60話 信頼と
凍也さんが詳細を知りたがることは怜に家族にあって欲しいと言われた時からわかっていた。でも、自分のことを話すことは躊躇っていた。
だが、
「それを話すには私のことを話さないといけないです。本当は幼馴染と両親にしか知らないことなんですけど千奈ちゃんのことを教えてくれたので私も信頼します。」
「知らないこと・・・?それは君の能力のことか?それとも君自身のことか?」
この人たちは信頼に足る。そう信じたい。いや、そう信じる。
「両方です。1ヶ月ほど前デパートに魔物が現れた事件を覚えていますか?」
「ああ、俺も現場に向かったからな。それと何か関係があるのか?」
「はい、私はその事件に巻き込まれました。そして、その事件の時まで無能力者でした。」
「なんだって?それは本当か?通常中学に入学までの間に能力に目覚めない者はいない。そもそも魔力があるから能力者になる資格があるかどうかはすぐにわかる。君もその検査は受けたんだろう?」
「はい、それについてはあまり関係がないので簡単に説明しますが魔力ドレイン系の能力だと検査に引っかからないことがあると医師の方が言っていました。」
「なるほど、検査に使う魔力も吸い取ってしまうのか。能力覚醒前でも使い方のわからない形でなら発現することはあるからな。」
「それで凍也さんはどのくらい事件について知っていますか?」
「黒いローブを着た人物が主謀者として挙がっていてその人物はワイバーンに乗り去った。という報告がされている。君の事は今初めて知った。」
「私と母さんはそのワイバーンに襲われ母さんがワイバーンから毒を喰らって倒れたんです。それで私は毒を吸い出すつもりが飲み込んでしまい倒れました。その後病院に運び込まれそこで能力が、魔力があることを聞かされました。」
「毒のあるワイバーンについては報告があった。個体名【ポイズンワイバーン】例外的に上位の魔物として登録されたがそれと能力になんの関係がある?」
「私の能力は【血液操作】と【吸血】そして【鬼化】。母さんの魔力と毒の効果の相乗効果で覚醒したと考えられてるらしいです。」
「つまり、その吸血で毒を飲み治したのか?毒性はどうなったんだ?それに能力が三つもある人間なんて初めて聞いたぞ!」
「それは毒の魔力をドレインしたことで無効化したのかと思います。私もそう医師に言われました。ただ能力自体は両親の遺伝なので偶々だと思います。ここまでは私の話です。それから魔防学校に編入して怜さんに出会いました。その後呪いについて調べ呪いを解く方法が見つかったかもしれないと怜に伝えようとしたら部屋で倒れていたんです。」
「それで私を見つけてくれたんですね。改めてありがとう!あなたたちが協力してくれなかったら今頃部屋で死んでたわ。」
「助けたいと思っただけだから。それに妹を助けたいと思う気持ち私も分かるからね。」
「その後隣にある病院に運んで母さんの助けを求めたんです。」
「血桜 紅先生か。確かにあの人なら状態異常のエキスパートではあるが、、、」
「その母さんでも治す事はできないと思います。私は呪いの魔力を吸い出せば良いと考えたんです。でも大元をどうにかしないとどんどん魔力が溢れてきていて直接血を吸って魂を知覚すればもしかしたらと母さんから助言され実行したら魂の世界に入れたというわけです。」
「君の吸血は魂に干渉出来るということか?それこそ能力としておかしい気がするが。」
「自分でもよくわかりませんでした。もう一回やれと言われても出来る気がしません。それで魂の世界に来た時少し怜の昔の記憶も見えました。呪いを受けた時の記憶です。少し正確ではないですけど怜に呪いをかけた人物と母さんの受けた毒の魔力が似ている気がしました。効果も似ていましたし。」
「なんだと!?その毒の効果は!?君は黒いローブの人物の顔を見たのか!?」
「いえ、顔は見てません。毒の名前は【魔毒】解毒しようとすれば毒性が増し、魔力を使えばそれを阻害する。怜の呪いも似たような効果だったと聞きました。」
「ならば同一犯の仕業なのか?すまん、話を続けてくれ。」
「はい、その後怜の魂と見られる結晶に纏わりつくモヤのようなものから死神のような存在が出てきて攻撃してきました。呪いの核のような存在だと思います。そいつは怜の魔力を吸い取り未来予知を使ってきました。」
「そうか、千奈の模倣した力だな。その後はどうなった?」
「流石に無限の魔力というわけでもなく使い果たしたはずでした。しかし、怜からさらに魔力を吸い出したので結界で囲みました。魔力を吸う効果を付与した結界なのでこれで倒した。そう思いました。その時です。千奈ちゃんの魔力すら吸い出し外に出て復活したのは。」
「うん、確かに私はその死神を見てるわ。マナスはそいつも模倣して作ってあるからね。たまに私のところに来て魔力を吸いに来てたから。でも助けられる直前捕まっちゃって魔力を吸い取られまくったのよ。ただマナスが身代わりになってくれて私をじぶんの奥底に隠してくれたの。」
「多分そのおかげで魔力だけ死神は得ていたんだと思います。空想具現は使ってこなかったので。ありがとうマナス、本当に助かったよ。」
『ありがとうございます♪頑張った甲斐があったのですね!』
「その後君が死神を倒してくれたおかげで娘たちは助かったのだな。改めて礼を言う。ありがとう!」
「二人が助かってよかったです。」
「それにしても秋が家族が巻き込まれたのを隠したのは黒いローブの人物から隠すため、そして君を守るためにやったんだな。」
「何か処罰されるんですか!?」
「いや、それはない。ただ魔防隊も一枚岩ではないからな。俺も隠したほうがいいと思う。さて、話してくれてありがとう。話を聞いてさらに礼をしなければならないな。何か希望はあるかな。」
「ええ!?助けたいと思っただけですからいいですよ!」
「いえ、私も雪さんたちには礼をしたいと思ってるの。何かない?」
「うーん、あ、そうだ。何処か人の目がない場所で練習できる場所はないですか?吸血と血液操作はよく使っているんですけど鬼化は学校の方には伝えていないので練習出来ないんです。」
「それなら私がよく使っている場所があるわ。そこを自由に使ってもらって構わないわ!」
「他にはないのか?まだ感謝し足りないぞ!なんでも言うといい!」
「なら、もし私と私の周りにいる人が危険な目にあった時に味方してください。」
「分かった。いついかなる時でも君の味方をしよう。」
「私も雪さんたちの味方でいるわ。早速なんだけど私がよく使っている訓練場に行ってみない?」
「是非!」
そうして、雪たちは怜の案内のもと歩き出した。その足取りは怜の家に来た時より軽やかだった。
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