2章28話 呪いとは

 昨日話した通り俺と綾は資料室に来ていた。

 

 資料室というか大図書館だな。天井までぎっしり本が並んでる。というかあそこまでどうやって取りに行くんだ?それに図書館にはよくいる司書さんの姿も見えない。


「ここが資料室か。でも資料長みたいな管理する人がいないのか?」


「それはね、本一冊一冊に魔力で刻印されてるからそれで管理してるんだ。もし、貸出期限や持出厳禁の本を持ってると勝手にここに戻るようになってるの。最初は警告とかお知らせ。その次が勝手に飛んでここに戻ってくるの。持出禁止に関してはここを出ると元の場所に本が転移する仕掛けになってるの。」


「なるほどなぁーって本が飛んで戻るの!?」


「うん、たまにだけどね。だから本の交通事故もあるらしいよw」


 物騒だな!?うわっほんとに本が飛んでる。


「へぇーそれじゃ呪いについて調べようかな。どこから見ていこう?」


「あ、待ってこっちに本を検索できる端末があるからそれを使った方が早いよ!しかも読みたい本を選べば持ってきてくれるから!」


 とことん便利だな、魔力。


 俺は綾に教えてもらった端末を操作して呪について調べる。魔力で操作するのかと思ったら意外とタッチパネルだった。


「呪いについてっと。ほんとだこっちに本が来る。ってものすごい速度で向かってきてるけどどうするの!?」


 ミサイル並みの速さで飛んでくる本に驚愕していると徐々に速度が落ちて検索端末の上に浮かび上がる。


「焦ったー!取り敢えずこれで調べられる。綾はどうする?」


「私は課題があるから近くで片付けるよ。あそこに座ろう。」


 そうして机に向かい合う形で座った俺と綾はお互いのするべきことに集中する。


「なになに?呪いとは何か、それは魂を犯す毒である。魂と肉体は強固な結びついている為結果的に肉体にも影響が出る場合がある。

 また、呪いをかける存在として魔物があるが簡単な呪いしか掛けられないため複雑な呪いとなると上位の魔物か能力で呪術を扱える人間のみである。

 呪いに長期間かかっている場合に起こる副作用として呪いに反発することによって魔力が増大することが確認されている。これは魂を犯す呪いに対して魂の力である魔力が反応する為である。が、増大した魔力に体が耐えられず逆に肉体を傷つけることもあると。

 能力による呪いに違いがあるかは謎であるがどちらも魔力に反応することから魔力による魂への付与に近しいものと考えられている。かぁ。

 そうだ!吸血で魔力を吸ってみるのはどうだろう。もしかしたら呪いの魔力も吸えるかも!」


 綾にそのことを話して銀嶺さんの元まで向かう途中窓から見えた月を見て夜まで調べ物をしていたことに気づいた。銀嶺さんの部屋について呼び鈴を鳴らす。

 しかし、呼び鈴を鳴らしても銀嶺さんは出てこなかった。


「銀嶺さん。手がかり見つけたかもしれないのでお話ししに来ました!開けてください!」


 おかしい。今は夜だし寮の外に出られる時間は過ぎてる。他の人に聞いたけど風呂に行ったわけでもないらしい。


「鍵が開いてる!入りますよー!」


 申し訳ないと思いつつ部屋に入ると苦痛に耐える声が聞こえる。


「まさか!銀嶺さん!大丈夫ですか!?太もも失礼します!まずい、完成しかかってる。」


「なんで!?まだ3年くらいあるはずでしょ!?」


「わからない。けど何とかしなきゃ!綾、母さんの病院どっち!?」


「この窓の方角真っ直ぐ!でもどうするの?」


「綾には初めて見せるけど【鬼化】俺は銀嶺さん背負って行ってくる!京ちゃんに事情説明よろしく!呪いのことは伏せて!」


「間に合え!」


 俺は全力で銀嶺さんに負担がかからないようにしながら走る。すぐに緊急外来の窓口が見えた。


「血桜 紅の娘です!母さんを至急呼んでください!雪が助けてと言っていたと!」


 しばらくして母さんがやって来た。


「細かいことは歩きながら話す!だからこの人を助けて!」


 母さんは俺と銀嶺さんを見て「分かった」とだけ言って歩き出した。


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